テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE1399

第1話 - あ

2023年12月11日

#スカッと

タナカトシキ

キヨシ

姉さん、久しぶり

カズコ

夫の転勤について行ったから

カズコ

あなたにはここ10年は会えなかったけど

カズコ

元気にしてた？

キヨシ

元気だよ

キヨシ

僕さ、結婚することになったんだ

キヨシ

父と母は亡くなってるから、姉さんが親代わりで

キヨシ

結婚式に出席してくれない？

カズコ

もちろん。出席させてもらうわよ

キヨシ

お義兄さんも、参加してもらえるかな？

カズコ

大丈夫。伝えておくわ

キヨシ

なんか、緊張するな

キヨシ

お義兄さんとはこれまで面識ないからね

カズコ

そうね。結婚式は結局しなかったし

カズコ

親戚との顔合わせとかもしてなかったしね

キヨシ

そうだよ。姉さん

キヨシ

地味婚が当時流行ってたけど

キヨシ

お義兄さんは紹介して欲しかったな

カズコ

あなたの結婚式前に顔合わせをするようにするわ

カズコ

その時に紹介するつもりだから

カズコ

前もって希望日を教えといてくれる？

キヨシ

分かったよ

～3日後～

キヨシ

10年ぶりに姉さんに会ったけど

キヨシ

随分、優しそうな印象に変わってたよ

シズカ

そうなの？

シズカ

お義姉さんは以前はどんな人だったの？

キヨシ

一言で言ったら、おっかない人だったよ

キヨシ

高校の時はバイクを乗り回してたから、近所の人は怯えてたよ

キヨシ

ちょっと、突っ張ってる印象でさ

キヨシ

けど、両親の代わりに、僕を養ってくれていたんだ

シズカ

そうだったの。あなたにとっては、いいお義姉さんなのね

キヨシ

僕は昔、いたずらっ子だったから、姉さんに怒られてばかりだったよ

キヨシ

でも、理由もなく理不尽な仕打ちも結構あってさ

キヨシ

いつも体中傷だらけたったよ

シズカ

えっ？それって、お義姉さんに叩かれていたの？

キヨシ

そうさ･･･

キヨシ

姉が怒ったら飯抜きでさ

キヨシ

二日～三日抜かれたときがあって、それが一番辛かったよ

シズカ

えー、それって虐待じゃないの？

キヨシ

昔は今みたいに、虐待だって言って

キヨシ

騒ぎ立てる人はいなかったんだよ

キヨシ

だから子供の頃は、ずっと、早く大人になりたいって

キヨシ

そのことばかり、考えていたよ

キヨシ

でも、姉さんがいなかったら、きっと施設に送られていたよ

シズカ

それも、辛いわね･･･

キヨシ

そうなんだよ

キヨシ

姉さんに叩かれたり、食事を抜かれたりで

キヨシ

精神的に参っていたら、祖父母が心配して

キヨシ

僕を引き取ってくれたんだ

シズカ

そうだったの。それを聞けて安心したわ

キヨシ

姉さんはもう会社で働いていたから、一人暮らしになったんだけどね

キヨシ

僕にとっては怖い姉だったけど

キヨシ

姉さんには、感謝しているんだ

キヨシ

ところで

キヨシ

まだ、時間大丈夫？お昼の休憩中にごめん

シズカ

気にしないで、大丈夫よ

キヨシ

よかった。それで、この間のことなんだけどさ

キヨシ

姉さんのマンションに一緒に訪ねて行ったときなんだけど

キヨシ

お義兄さんの様子、ちょっとおかしくなかった？

シズカ

どんな風に？私は気づかなかったけど･･･

キヨシ

僕たちに会っても、挨拶もなく、スッと部屋に入って行っただろ？

シズカ

そういえば、そうだったわね･･･

キヨシ

ガリガリに痩せて、なんだかふらついていたよ

シズカ

そうだったかしら？

キヨシ

何だか、気になるな･･･

キヨシ

今度、仕事帰りに、姉さんの家に行ってくるよ

シズカ

分かったわ

～一週間後～

キヨシ

昨日、姉さんの家に行って来たんだけど･･･

シズカ

どうだった？

キヨシ

ちょうど姉さんが外出していて、お義兄さんと少し話をしたんだ

キヨシ

でも、僕と話したことを妻には内緒にして欲しいって言ってたよ

キヨシ

お義兄さんの話を聞くまでは、どうしてかなって思ってたんだけど･･･

キヨシ

なんだか、姉を気にして、ビクビクしている様子だったしね

キヨシ

でも、聞いてみて、本当にびっくりしたんだ

シズカ

そんなに驚くことって何なの？

キヨシ

お義兄さんは姉さんから暴行を受けていたんだ

キヨシ

見せてもらったら、身体じゅうが痣だらけでさ

キヨシ

日常的に暴力を受けているとしか思えなかったんだ

キヨシ

話を聞いていたら、お義兄さんは涙ぐんでいたよ

シズカ

そうなんだ。何だかかわいそうね･･･

キヨシ

赤ん坊の世話をして、仕事をして疲れて、帰宅して

キヨシ

毎日がその繰り返しで、精神がすり減ってきたんだって

シズカ

あれ？赤ん坊の世話はお義姉さんがやってるんじゃないの？

キヨシ

それが、そうじゃないんだって

キヨシ

お義兄さんが一人でやってるそうなんだよ

キヨシ

姉さんが全部一人でやってたというのは、嘘だったんだよ！

シズカ

えー？そんな、噓でしょ？

キヨシ

姉さんは仕事を辞めて、遊び回ってるそうだ

キヨシ

趣味で空手をやってるもんだから

キヨシ

お義兄さんは勝てなくて、姉の言いなりになってるみたいなんだ

シズカ

そんな･･･

シズカ

お義兄さんは、泣寝入りしてるってことね･･･

キヨシ

そうなんだよ。僕は唖然としてしまったよ

シズカ

お義兄さん、可哀そうね･･･

キヨシ

でも、おかしいとは思ってたんだ

キヨシ

姉さんが仕事と家庭を、器用に両立できるなんて

キヨシ

考えられなかったから、お義兄さんの話を聞いて

キヨシ

妙に納得してしまったよ

シズカ

お義姉さんは、どうしてそんな嘘をついていたのかしら？

キヨシ

さぁ、僕には分からないよ

～翌日～

キヨシ

姉さん、ちょっと時間とれる？

カズコ

大丈夫よ。どうしたの？

キヨシ

お義兄さんのことで、気になってたんだけど･･･

カズコ

何が？

キヨシ

昔、姉さんは僕のことを虐待してたけど

キヨシ

お義兄さんにも、同じようなことをしてるの？

カズコ

急に、何？

カズコ

そんなこと、するわけないじゃない

カズコ

それに、キヨシにだって、無茶なことはしなかったじゃない

カズコ

あれは愛の鞭よ

キヨシ

呆れたよ。何が愛の鞭だよ

キヨシ

僕は祖父母に面倒みてもらったけど

キヨシ

お義兄さんは、そうはいかないじゃないか？

カズコ

何が言いたいのよ？昔のように扱って欲しいの？

キヨシ

久しぶりに会って、姉さんは変わったんだと思ったけど

キヨシ

まったく、変りがなかったようだね？

カズコ

何よ？いちゃもんをつけたくて連絡してきたの？

キヨシ

そんな訳ないだろ？

キヨシ

お義兄さんから、話を聞いたんだ

カズコ

弱いもの同士で、仲良くなったというの？

キヨシ

姉さんのものを考える基準って何なの？

キヨシ

まさか、何でも拳で解決できるって、思ってないよね？

カズコ

そうね。拳は嘘をつかないわね

キヨシ

その話は、もういいよ！

キヨシ

ところで、姉さんは家事や赤ん坊の世話

キヨシ

仕事までしてるって言ってたけど、まったくの嘘みたいだね

キヨシ

どうして、そんな嘘をついてたの？

キヨシ

嘘をついて得することってあるの？

カズコ

そうねー。近所のママ友からは、尊敬するって言われたわ

カズコ

それに、一気に私の株が上がったの

キヨシ

それで？それの何が得になるの？

カズコ

赤ん坊の世話から仕事まで、何でも一人でしてるって

カズコ

ネット上で公表したら、一気にフォロワー数が増えたの

カズコ

尊敬してるって言ってもらえるし、気分がいいわ

カズコ

その上、炎上でもしてくれたら、いい収入源になりそうだわ

カズコ

笑いが止まらないって、このことね！

キヨシ

姉さん、ひどいよ！

キヨシ

そんなことでお義兄さんを犠牲にするだなんて！

キヨシ

可哀想だろ？

キヨシ

そんなの、姉さんが見栄を張りたいだけじゃないか！

カズコ

それの何が悪いの？

キヨシ

姉さんがやってることは、悪質だよ！

キヨシ

赤ん坊をお義兄さんに押し付けて

キヨシ

自分は遊び回ってるんだって？

キヨシ

その遊びのお金だって、お義兄さんが働いたお金じゃないか？

カズコ

それの何が悪いの？

カズコ

ママ友たちだって、専業主婦が多いけど

カズコ

みんな旦那のお金で旅行したり、買い物だったりしてるわ

キヨシ

姉さんのママ友は、みんな家のことをちゃんとして

キヨシ

子供の世話だったりしてるだろ？

カズコ

そうかもしれないけど、旦那のお金で遊ぶって言うのは

カズコ

同じ話じゃない。私は何も悪くはないわ

キヨシ

姉さんは、悪びれたところがまるでないようだね？

カズコ

へ？

キヨシ

救いようがないって言いたっかったのさ

キヨシ

お義兄さんに話を聞いてみなよ

キヨシ

いつ離婚されてもおかしくない状況だね

キヨシ

具体的に離婚したいとは言ってなかったけど

キヨシ

ずっと、同じような生活が続いたら嫌になるよね？

カズコ

それって、私のことを心配してくれてるのね？

カズコ

私たちは離婚はしないわよ

キヨシ

お義兄さんに確認してみたら？

カズコ

分かったわ。心配性ね

～翌日～

カズコ

ねぇ、よくも弟にあることないこと言ってくれたわね！

サクヤ

あることないこと？

サクヤ

本当のことを言ったまでだよ

サクヤ

弟さんには、隠し立てなんてできないよ

サクヤ

僕は普段君にいいようにあしらわれていて、不満に感じてるんだ

カズコ

今日は何よ！随分私に逆らうじゃない？

サクヤ

僕のこと、何も文句を言わない

サクヤ

サンドバックか何かと勘違いしてるんじゃない？

カズコ

何言ってるの？

サクヤ

僕は君の弟さんに、何も言うつもりはなかったんだ

サクヤ

結婚するっていうから、祝ってあげなきゃとは思ったさ

サクヤ

でも、会ってみて随分話しやすい人で

サクヤ

僕の辛い現状も、解決してもらえそうな感じだったんだ

カズコ

何よ！辛い現状って！赤ん坊は育つんだから

カズコ

大変なのは今だけじゃない！おおげさなんだから

サクヤ

君が赤ん坊の世話から仕事まで、自分が言っている通りに

サクヤ

一度でいいからやってみなよ！

カズコ

何よ！本当に、今日はやけに反抗的なんだから！

カズコ

私が帰ったら、痛い目をみるよ！

サクヤ

もう、こんな生活たくさんなんだから！

サクヤ

それだけなら、まだ何とか我慢できたかもしれないけど

サクヤ

僕は知ってるんだよ

カズコ

何のことよ？

サクヤ

君、会社の上司と不倫してるだろ？

サクヤ

僕が疲れてくたくたになるまで頑張ってるというのに･･･

カズコ

不倫なんかしてないわよ

サクヤ

君の友達が教えてくれたよ

サクヤ

わざわざ、証拠写真まで撮ってくれたよ

カズコ

嘘よ！私の友達がそんなことするわけないわよ！

サクヤ

君がネットで公開してるようなことが

サクヤ

現実とは違ってるから、間違いは正さないとって

サクヤ

正義感溢れる友人が、教えてくれたよ

カズコ

いったい誰よ！そんなことするの！

サクヤ

近所のママ友だよ。君が遊び回ってるのを知って

サクヤ

おかしいと思って、尾行までしたそうだよ

カズコ

そんなの、ストーカーじゃない！

カズコ

ストーカーの話を信じるの？

サクヤ

信じるも何も、証拠が揃ってるんだから

サクヤ

信じないわけにもいかないじゃないか？

サクヤ

とにかく、君が不倫してるのは明白になったんだ

サクヤ

離婚してもらうよ

カズコ

なんですって？

カズコ

赤ん坊だっているのに、離婚ですって？

サクヤ

そのことは心配しなくても、僕が面倒をみるよ

カズコ

私は仕事を辞めたし、貯金もないのよ

サクヤ

それでも、裏切ったのは君だから

サクヤ

ちゃんと慰謝料を払ってもらうよ

サクヤ

君の弟さんが弁護士を紹介してくれるそうだよ

カズコ

あいつ、裏切り者なんだから！

サクヤ

とにかく、別れてもらうよ

カズコ

嫌よ！不倫相手とは別れるから！

サクヤ

僕の気持ちは変わらないよ

サクヤ

これからは弁護士を通しての話だから

サクヤ

僕には連絡してこないでよ

サクヤ

ごめんってば。慰謝料は払えないから･･･

～後日談～

キヨシ

僕たちの結婚式には、お義兄さんが出席してくれました

キヨシ

姉さんは僕が裏切ったと思って、お祝いする気にはなれないとか･･･

キヨシ

お義兄さんは身寄りがないということだったので

キヨシ

僕たちの家の近所のアパートに住むことになりました

キヨシ

姉さんは、お義兄さんに慰謝料を払うために

キヨシ

会社に就職し、夜のお店で働くという

キヨシ

ダブルワークをしています

キヨシ

僕たちは育児の先輩であるお義兄さんが近所に住んでいるので

キヨシ

いつ子供ができても、安心です

キヨシ

姉さんには悪いけど、感謝しています

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