クラブ
第3フロアまでは少し時間が掛かるので、少し休憩していてください。
クラブがそう告げると、リフトには重苦しい空気が流れた。
ハル
…レイちゃん、大丈夫?
レイ
はい…だいぶ落ち着きました。ありがとうございます
ハル
気を使わなくていいのよ。少し休んでいたら?
レイ
…じゃあ、そうさせてもらいます。
ハルはレイをリフトの端に連れていき、眠り始めたのを見て稲荷の方に向き直った。
稲荷
……
ハル
ねぇ、稲荷さん。あのとき、わざわざ「助からない」と言う必要はなかったんじゃない?
稲荷
…現実を見させた方が、この世界では生きやすくなる。
ハル
それでも…それでも、まだあの子は幼いのよ…?
レイの首輪に書かれていた年齢は、2人よりはるかに低いものだった。
稲荷
幼いからなんだ。乳飲み子ではないのだ。これくらい良かろう。
ハル
っ…!
ハルが稲荷の首元に掴みかかる。
稲荷
…落ち着け。少し冷静になったらどうだ?
ハル
…冷静すぎても全て失うだけだわ。あの時も、他に言い方があった。
稲荷
…
ハル
…何か言ったらどうなの?!
稲荷
!っ…、
ハルが稲荷の頬を思い切り殴った。その様子を見て、クラブが止めに入った。
クラブ
はいはい、ストップ〜!そろそろ着くから落ち着いてください。
ハル
……。
稲荷
………
稲荷は頬を押さえながらハルを睨む。沈黙が流れ、リフトが第3フロアに着いた。






