テラーノベル
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緑 。
そう言われたのは、昼休み。
隣の席の緑が、唐突にそう切り出した。
桃 。
咄嗟に笑ってごまかす。
心配されるのは困る。
だって、もしその理由を聞かれたら、答えられないから。
緑 。
緑 。
桃 。
桃 。
むしろ、悪いのは全部私の方だ。
勝手に好きになって、勝手に期待して、勝手に落ち込んでる。
緑 。
緑 。
緑はそう言って、私の頭をぽん、と軽く叩いた。
昔から変わらないその癖。
褒める時も、励ます時も、彼はそうしてきた。
だけど_その手が、今はたまらなく遠く感じる。
緑に触れられるだけで、嬉しかったはずなのに。
今はその温もりすら、胸を刺す。
桃 。
精一杯の声でそう返して、私はそっと目を伏せた。
たった一言で、救われるのに。
「好きだよ」って、その言葉を君がくれたなら、全部が報われるのに。
そんなこと、ありえないってわかってる。
緑の気持ちはもう、私じゃない。
放課後、教室を出たあと、私は一人で屋上に向かった。
普段は鍵が閉まってる場所だけど、今日はたまたま開いていた。
桃 。
声に出すと、少しだけ楽になる。
誰にも届かないこの場所なら、素直になれる。
それでも、心の痛みは消えない。
笑う度、話しかけられる度、名前を呼ばれる度、心臓が痛い。
だけど、それでも君が好き_この気持ちは、もう止められない。
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