佐久間 潤
黒髪をサラサラと
なびかせながら走って来る
幼馴染み.
矢代 胡々
矢代 胡々
ぎゅっと、離れないように
手を繋いで家へと帰る.
綺麗な夕日が私たちの帰り道を
指してくれている.
矢代 胡々
矢代 胡々
自然と握る力が強くなる.
佐久間 潤
握り返してくれた彼は
笑顔で言った.
___私が初めて
好きになった人…__
◇
" Sの中にある優しさ "
◇
矢代 胡々
もう朝なんだ…
もう少し夢の続き見たかったな.
潤のことが好きだって
初めて気づいた日.
てか、今何時だっけ?
布団に入ったまま手探りで
目覚まし時計を探す.
あ、あった!
見てみると時計の針は
7時30分を指していた.
矢代 胡々
あと10分で潤が来ちゃうよ!?
何で目覚まし鳴らないの!
転がり落ちるくらいの
勢いで階段をかけ降りる.
歯を磨いて、顔を洗って…
準備を10分で終わらせ
リビングに入る.
…と、わたしの朝食をモグモグ
食べている幼馴染みが
目に写った.
矢代 胡々
その声でわたしに気付き
目を向けた.
うっ……。
髪は茶髪で女のわたしよりも
綺麗、顔も整っていて
学校では一番のイケメンだ.
わたしはそんな潤に片思い中.
毎日その美形に
心を持っていかれる.
佐久間 潤
佐久間 潤
お母さんにお辞儀をして
私の手を引き、玄関に行く.
自分の手が熱く
なっていくのがわかる.
平常心、平常心、平常心…
矢代 胡々
矢代 胡々
その瞬間、数秒前までは
あった手の温もりが
一瞬にして溶けてしまった.
靴を履きながらちょっと
後悔している自分がいる.
矢代 胡々
通学路にはいつも私と潤の
二人しか歩いていない.
それだけでなんだか
嬉しくなる.
少しの間だけかもしれないけど
二人だけの世界が
作り上げられる.
グゥ〜
…たった今、幸せだった世界は
わたしのお腹の音によって
砕け散った.
クスクスと反対方向を向いて
笑っている朝食泥棒.
矢代 胡々
矢代 胡々
矢代 胡々
矢代 胡々
キッと睨んだけれど
今だに笑い続けている.
〜っ!もう
許してやんないんだから!!
歩くスピードを速め
潤を置いていく.
コンビニでパンでも
買おうかなぁ……
朝食を抜いちゃうと
授業中に恥かくし.
コンビニまでの道のりで
何がいいか決めておこう.
よし!チョコチップ
メロンパンにしよう!
私はコンビニで売っている
チョコチップメロンパンが
大好きで3日に1回は
食べている.
ここの角を曲がれば…
矢代 胡々
慌てて口を押さえる.
コンビニの駐車場にいた猫も
走って逃げて行った.
コンビニの入口の前に
お茶を飲みながら
座っている潤がいた.
佐久間 潤
佐久間 潤
佐久間 潤
ゆっくりと立って
近付いてくる.
佐久間 潤
佐久間 潤
つき出した手に持っていたのは
コンビニの袋.
…食べ終わったゴミを私に
捨てろという意味ですか!?
渋々コンビニの袋を受け取ると
少し重みがあった.
手を入れ、袋の中に入っている
ものを取り出してみる.
矢代 胡々
中に入っていたのは
私の大好きな
チョコチップメロンパン.
佐久間 潤
佐久間 潤
そっぽを向いて言う潤の頬は
少しだけ赤く染まっていた.
矢代 胡々
私が素直にお礼を言ったのが
そんなに珍しいのか
こっちを向いて目を見開いたと
思ったら笑顔で返してくれた.
佐久間 潤
真っ赤な顔で出す手を
静かに握った.
久しぶりに呼んでくれた
『胡々』の言葉が頭の中で
何度もリプレイされていった.
せっかくのイケメンなのに
いつも意地悪をしてくる
Sな幼馴染み.
でも意地悪しても
最後はその倍の幸せをくれる.
この思いを伝える日は
そう遠くはないのかも.
end.
読んでくれて📖 ありがとです!!☺︎ ぜひほかの作品も 見てみてください!!☃︎
コメント
6件
自分の幼馴染もドSなんですよ でも仲良くて、いじめてくるけど優しいです! この胡々の幼馴染に似てます! めっちゃキュンキュンしました笑
やば
最高でした!!!