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無駄だぜ、多分よ……

レッド

……は?

レッドは「何を言っているんだ」と目を見開く

その後、ブルーは静かにレッドと顔を向けた

微かに、寂しそうだ

レッド

……な、何が無駄なんだよ…

レッド

俺らがやってる事はお前が思い出すのに必要な事だろ……?

レッドはやっとの事で口を開く

口は電気を流されたみたいに震えていた

レッド

…なぁ…おい……

レッド

何か…言ってくれよ…!ブルー…!!

ブルー

……実はな

数分経った頃、ブルーはようやく口を開いた

その‪”‬数分‪”‬は、彼らにとって永遠にも思える長さだった。 ____時が止まっているかのように。

でも、彼らを荒々しく揺さぶる太陽の光が、上から現実を伝え続けていた

ブルー

ずーっと、レッドは協力してくれてるよな?

ブルー

……俺の、忘れた‪”‬記憶‪”‬探しに…

レッド

おう…だって、それはお前に必要不可欠な事だから…そうだろ?

レッドはブルーを覗き込んで答えた

心做しか、レッドはブルーの顔色を伺っているようにも見えた

今の状況を、ブルーの体調の変化か何かと勘違いしてるのだろうか?

____否、彼はとうの昔から分かっている

相手は『幽霊』という事を。

ブルー

レッド…覚えてくれているか?

ブルー

さっきから記憶を探す、とか思い出すとか…俺も言ってるけどよ……

ブルー

‪”‬何で‪”‬記憶を思い出さなきゃ…いや、‪思い出したいのか覚えててくれるか?

ブルーはいつもとは想像もつかない程か細い声でそう言った

アイスが欲しいと天真爛漫に話す姿は消えてしまっていた

ピッ。

謎に目が合った

いつもなら気にするはずがない。普段ならば。

レッド

……それはよ………

レッド

お前が成仏する為には、失ったものを取り戻さないといけない

レッド

それがお前の場合、死んだ時の記憶なんだろ?

レッド

明確には死因か……

レッド

お前は神社とかのお祓いとかであの世に行くのはごめんだから……そうだろ?

ブルーはコクリと頷く

でも、どこかぎこちない。

レッドはすぐに察し、まるで裏にスタンバイしてあったかのような速さで文を構築する

レッド

で、その記憶を取り戻したら成仏できるってことの期限は

レッド

なぜか知らねぇが理不尽なことにあと1ヶ月って事だろ?

レッド

その期間が過ぎたら…勝手にあの世送りって事……

レッド

しかも心地いい方法じゃないって…

レッド

はぁ、神ってこっちのことなんも考えてねぇんだな…早すぎんだろ

レッド

最低でも学校の提出期限よりかは長くしろよって話だよな

「な?」とレッドが冗談交じりに言う

その冗談はあまりにも脆く、まるで絞り切ったオレンジから無理矢理絞り出したジュースのよう

カスカスのジュースを、ブルーは汲み取ろうとする

が、するりと肌の上を跳ねて消えて行った

ブルー

…100点満点だぜ

ちょっと早口で彼は呟いた

とっくにアイスは原型も残さず滑り落ち、無念に溶けていた

レッド

…で、俺がずっと聞いてるのはこれなんだよ…

レッド

話を色々と逸らされ続けてるが…そろそろ答えを聞かせろ

レッド

さっきの一言…一体どういう意味だよ

レッド

なぁ…おい…頼むから……

心が滲む声で訴え続けるが、ブルーの口は‪”‬100点満点‪”‬と呟いてから一向に動く気配が無い

ここで石像にでもなってしまうのか、という程に

そんな妄想を加速させたのは、彼の目が天気雨のような色をしていたから

____ここは道路が鏡になる位に極熱なのに

これっぽっちの暑さも感じない

レッドは思わず自分が死んでしまっているかと錯覚、慌てて息を吐き出す

あ、生きてる。

息が自分の手のひらに触れ、ホッと胸を撫で下ろす

ブルー

………はははっ!なにしてんだよレッド!

ブルー

いきなりどうしたんだよ?奇行にも程がねぇか?

すると、ブルーが心底可笑しそうに笑い始めた

レッドのシリアスな顔つきが一転、突拍子もなく変な行動をしたのがどうも笑いの線を刺激したのであろう

ブルー

レッド…お前ってやっぱり天才だろ!!俺は間違ってなかったよな!

レッドの頭はポカンの1文字ばかり。

ブルーを笑かそうと故意にやった訳では無いのだが……

レッド

…へっ、当たり前だろ、俺を誰だと思ってんだ

とりあえずと、彼は前と変わらず笑ってみせる

ブルー

……はぁ、レッドに話を少しでも遠ざけようとした俺が無謀だったな

レッド

……と言うと?

食い気味に尋ねる

ブルーはうっすら微笑む

ブルー

…俺が言っちまったんだもんな、覚悟くらいできてる

眉を下げて困り顔を作ると、レッドは急かすように「なぁ、」と一言

レッド

焦れったくいつまでも待たせないで、さっさと話せよ

レッド

ってか、俺はずっと前から待たさせれるんだぜ?こっちの身考えろ

ブルー

分かってる分かってる、悪かったな

そしてまた微笑んだ

やけに微笑みを作るブルーに違和感は感じつつも、耳を傾けるレッド

ブルー

……実は

ブルー

記憶はもう、思い出せない

レッド

……は?

ちょっと待てよ、

ブルー

何でだよ、って顔してるな、もう蓋開けちまったし、さっさと話すか

ブルー

ずーっと…1ヶ月間、レッドと遊んでいれば記憶は戻る…そう思ってた

ブルー

信じきってたんだよな

なぁ、おい

ブルー

でもある日…本当に何の変哲もない時に、起こった事だ

ブルー

頭の奥の方に…ロックがかかったような感覚がしてさ

レッド

……

…は?

ブルー

その時は気にしなかったんだけど…しばらく経ってみたら

ブルー

死んだ時の記憶を思い出そうとしても、うんともすんともしなくなった

レッド

…それは集中力とかが関係してるんじゃないか?

レッド

そもそも、記憶にロックってそんな訳が………

ブルー

俺はずっと本気でやってた、この感覚は理解できねぇと思う

ブルー

だって意味わかんねぇし、な?

レッド

……待て、

待て____

レッド

それじゃあ……ってことは…

嘘、だよな?

ブルー

………遮っても余計だし、単刀直入に言うぜ

───待てって

ブルー

もうどれだけ思い出そうと努力したって……

ブルー

今までよりも数千倍、掘り起こそうとしたって…手伝ってくれても

ブルー

無駄だぜ、多分よ

ブルー

だって、記憶の根本に鍵がかかっちまったんだぞ?

ブルー

……もしかしたら、さ

ブルーはぽつりと呟く

聞くレッドの顔は下手すれば、幽霊のブルーよりも肌が白くなっていた

ブルー

この世に残れるのはあと1ヶ月だけど…

ブルー

記憶の消費期限は、それよりも早かったのかもしれねぇな

ブルー

…レッド、さっき‪”‬期限短ぇな‪”‬とか言ってくれたけどよ

ブルー

俺が死んだのって、話してなかったけど大体5年前なんだぜ

レッド

だから……相当居させてくれる方だと?

レッド

……ふざけんじゃねぇよ………

レッドは怒りや悲しみや驚きがぐちゃぐちゃと混ざり合った表情をブルーに突きつける

なんだか、苦しそうだ

レッド

もう…諦めるしかねぇってのか?お前の…望みを…

ブルー

……俺の望みならもう一つあるぜ

レッド

…ん?何だよ、俺の財布がチリしか出てこなくなるまでアイスを買えとかか?

ブルー

あっ、それでもいいけど

レッド

…俺今余計なこと言っちまったな

チッ、と軽く舌打ちをしてからブルーに視線を向けた

彼の目は訴えかけている

ブルー

レッドに頼みたい事があるんだ

レッド

言ってみろ、無茶なやつ以外は叶えるからよ

ブルー

えっと…この夏休みの間…

ブルー

俺と一緒に過ごしてくれねぇか?

ブルー

例えば…今みたいにさ

ブルーは大変言いにくそうに申し上げる

それにはレッドも少し目を丸くし____

レッド

___っはははは!!!

心の底から面白そうに、笑いだした

ブルー

…え?

今度はブルーがレッドの二の舞を演じ、目を丸くする

ブルー

な、何がおかしいんだ?俺何も変なこと言ってねぇぞ?

レッド

随分とおかしいこと言ってるじゃねぇかよ

レッド

過ごすに決まってんだろ?ぎゃくに何で見捨てるって初めから決めてんだよ

レッド

んな訳ねぇだろ

レッド

お前の………最後だもんな、本当の最期

レッド

俺も用事とかあるけど…今と同じだ、変わらねぇよ

と、レッドは笑い、空を見上げた

いつものような晴れの日だった

ブルー

…良い奴すぎるぜ…レッド……

ブルー

ありがとうな!!!

ブルーは虹のような笑みを浮かべた

レッド

おう!

レッドも微笑み返す

だが、確かに影のある顔が、ブルーの瞳に映っていた

それに彼が気づいたかは、こちらが知る由もない。

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