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第1話 - あ

2023年08月14日

#恋愛

結城真矢

アユミ

■不在着信■

アユミ

ケンタロウ！まだ帰らないの？もうこんな時間だよ

アユミ

今日は私とお腹の子の為にも早く帰ってくれるって約束だったよね！？何かあったの！？

ケンタロウ

悪い！今日仕事終わりに、チカがどうしても聞いてほしい悩みがあるって連絡してきてさ

ケンタロウ

それでずっとチカの家で相談に乗ってたんだ

アユミ

またチカさん！？前から言ってたけど、幼馴染だからって距離感考えてよ！

アユミ

妊娠中の私よりチカさん優先なの！？

ケンタロウ

しょうがないだろ。チカの奴、深刻な悩みがあったんだから

ケンタロウ

悩んでる友達を放っては置けないよ

アユミ

他の人に聞いてもらえばいいじゃない！

ケンタロウ

チカは実家とも離れてるし、婚約者とも遠距離恋愛なんだ

ケンタロウ

俺と結婚してて、実家も近くにあるお前と違って、他に頼れる奴がいないんだよ

ケンタロウ

それに、幼馴染で気心知れた俺にしか話せないことがあるんだってさ

アユミ

だからって、あなたわかってるの！？

アユミ

妻がいるのに、他の女性の家に上がるとかありえないから！不快でしかないから！

ケンタロウ

あのなぁ、それって偏見だし古い考えなんだぞ

アユミ

は？

ケンタロウ

チカとは幼馴染で、男女の境なんて超えた厚い友情があるんだ

ケンタロウ

お互い相手がいることだってわかってるし、性別なんて意識してない。男友達と同じだよ

ケンタロウ

チカは男勝りでサバサバ系だから、まったく女として見れないしな

ケンタロウ

嫉妬してくれるのは嬉しいけど、そうやって男と女がいればすぐそういう仲を勘繰るの、

ケンタロウ

お前の頭の中がエロいだけなんじゃないのか？

アユミ

はぁ！？そういう問題じゃない！常識的な話をしてるんだけど！

ケンタロウ

だから、常識とかいう曖昧なもんで俺達の関係を縛るなっていうの！

ケンタロウ

チカが男友達だったらここまで文句は言わないんだろ

アユミ

それでも妊娠中の私より優先してほしくはないんだけど

ケンタロウ

でも、「ほかの女性の家に～って言ってた辺り、性別は意識してるんだろ」

ケンタロウ

世の中には同性間の恋愛があるように、異性間の友情だってあるんだ

ケンタロウ

今は多様性の時代。そうやって性別に縛られた古い考えは良くないぞ～

アユミ

あぁもう、話にならないわ…とにかく早く帰ってきてよ！

ケンタロウ

あーごめん。もう終電間に合いそうにないし、このままチカの家泊まっていくわ

アユミ

は！？冗談じゃない！せめてホテルかどっか泊まってよ！

ケンタロウ

なんでだよ。ホテル代がもったいねぇだろ

アユミ

妻がいるのに他の女性の家に泊まるなんて、益々あり得ない！何考えてんのよ！

ケンタロウ

だから何も起きないって。下種の勘繰りはやめろっての。じゃーな

アユミ

ちょっと待ちなさい！

～翌日～

チカ

おはようございまーす。アユミさん、ケンタロウもう帰ってきた？

アユミ

えぇ。呆れて口利いてないけどね。昨夜はどーもお世話になりました

チカ

ごめんねぇ。アユミさん妊娠中なのに

チカ

ケンタロウったら、私がちょーっと愚痴ったら放っとけないって言って来てくれるんだもん

チカ

私は何回も、奥さんの元に帰りなよーって言ったんだけどね

チカ

でも許してあげて。ケンタロウは優しすぎるだけなの

チカ

アユミさんも、あいつのそういうところが好きになったんでしょ

アユミ

あなた達が幼馴染で仲いいのは結構ですけど、もう家に泊めるようなことは無しにしてください

アユミ

チカさんだって、婚約者がいる身なんでしょ

チカ

だから、やましいことは何も起きてないから！

チカ

私達、小さい頃は一緒にお風呂にも入ってたんだよｗ

チカ

お互いの裸見ても何も思わないからｗｗ

アユミ

そういうこと言われるの余計不愉快です！

アユミ

いずれにしろもうやめてください。婚約者の方にだって誤解されたくないでしょう

チカ

大丈夫だってー。遠距離だしｗ

チカ

でもそうだねー。これからは、もっと奥さん優先するように叱っておくねｗ

チカ

あ、ケンタロウの扱い方に困ったら私に何でも聞いてｗ

チカ

小さい頃から一緒だったケンタロウのこと、よく知ってるからｗ

アユミ

結構です！私も一緒に暮らしてる夫のことはよく知ってますので！

チカ

本当かな～ｗだって、大人になってから知り合ったんじゃないｗ

チカ

幼馴染にしかわからないことって、やっぱりあると思うんだｗ

アユミ

なんですかさっきから草生やして。マウントのつもりですか？

チカ

別にそんなつもりじゃないよぉ

チカ

ケンタロウの奥さんはアユミさんなんだから、そうカリカリすることないじゃない

チカ

束縛みたいなことしてたら嫌われちゃうよｗ

チカ

私が奥さんなら、もっとどっしり構えるけどな～ｗ

～数日後～

アユミ

ケンタロウ、大事な話があるの

アユミ

さっき、チカさんもこのLINEに追加したわ。三人で話しましょう

チカ

え、何があったの？

ケンタロウ

なんだよアユミ。今日は早く帰ってやるって

アユミ

ううん、もう帰ってこなくていい

アユミ

離婚しましょう

ケンタロウ

は！？

アユミ

もうあなた達の関係性には耐えられない

ケンタロウ

ちょっと待てよ！俺達の間にはやましいことはないって言っただろ！

チカ

そうだよ！私達はただの友情！

チカ

こーんなヘタレを異性として見たことなんかないってｗ

ケンタロウ

俺だって、こんな男勝りなゴリラ女を異性としてなんか見てないってのｗ

アユミ

もうそういうのはいいから

アユミ

あなた達が何してるか、全部知ってるから

ケンタロウ

へ？

アユミ

私の元に写真が送られてきたの

アユミ

チカさんの家で、ケンタロウが下半身丸出しで、チカさんが…

アユミ

…これ以上は言わなくていいわよね。あなた達、よーく知ってるはずだもの

チカ

ちょっと待ってよ。一体誰から送られてきたの、その写真！？

アユミ

その話はあと！何がやましいことはないよ！何よあれ！

ケンタロウ

誤解だ！お前が妊娠中でそういうことできないからどうにも溜まって、

ケンタロウ

チカに処理してもらってただけだ！

ケンタロウ

それに、一線は超えてない！口でしてもらっただけだ！

チカ

そうよ！私達にそういう、恋愛とか性的な感情はないの！

チカ

一種のスポーツみたいなものだから！

チカ

むしろ、アユミさんのためでもあるんだよ！

チカ

妊娠中で出来ない時、私がケンタロウの相手をしてあげるんだから

チカ

アユミさんも無理する必要なくて、いいと思わない？

ケンタロウ

そうだ！子供が生まれた後いっそ、三人でしてみないか！？

チカ

それいいね！楽しいよ！何でも教えてあげるから！

アユミ

もういい。あなた達の言い分に頭痛がするわ。気持ち悪い

アユミ

ケンタロウ、あなたチカさんは男友達と同じだって言ってたわよね

アユミ

だったら、男友達ともこういうことするの？

ケンタロウ

それは…

アユミ

溜まってるんなら、まず私に相談してほしかったわ

アユミ

それとチカさん、ケンタロウとの間に性的な感情はない、

アユミ

やましいことはないって言ってたわよね

アユミ

だったら、婚約者に知られても大丈夫なはずよね

チカ

待って！まさか、婚約者に知らせるつもり！？

アユミ

まぁ、私が浮気を知る前から「彼は遠距離だし大丈夫って言ってた辺り、」

アユミ

婚約者にケンタロウを家に連れ込んでることがバレたら不味いとは思ってたのよね

アユミ

あなた達、散々私に古い考えだの束縛だの言ってたけど、それが答えじゃない

アユミ

しかしまぁ、チカさんの婚約者さんと違って、随分と舐められたものねぇ私も

チカ

だって、アユミさんは最初仲良くしましょうって言ってくれたから、

チカ

わかってくれるかなって思って…

チカ

ねぇ、それよりお願い！婚約者にだけは知らせないで！

アユミ

残念。もう遅いわ

チカ

へ？

アユミ

だって私に写真送ってくれたの、その婚約者さんだもの

チカ

はぁああああああ！？

チカ

なんで！？なんで彼が私の家の中の写真なんか！

チカ

遠くに住んでるはずなのに！

アユミ

それが仕事の関係で近くに来て、サプライズでチカさんの家を訪れたらしいわよ

アユミ

そしたら窓の外からあんた達が丸見えで…

チカ

嘘…

アユミ

チカさんの家に泊めてもらうつもりだった婚約者さん、

アユミ

結局失意のままホテルに泊まったらしいわよ

アユミ

本来ならケンタロウこそがホテルに泊まるべきなのに、気の毒よね～

ケンタロウ

そんなことより、なんでチカの婚約者がお前の連絡先なんか知ってるんだ！

アユミ

実はね、チカさんの婚約者と私、幼馴染だったんだよね

チカ

は！？幼馴染！？

アユミ

といっても、あんた達と違ってたまにＬＩＮＥのやり取りをする程度だったんだけど、

アユミ

それでも結婚式には出席してくれたから、ケンタロウの顔も知ってたのよ

アユミ

だからピンと来て、私に連絡してくれたってわけ

ケンタロウ

そういえばそんな奴いたような…

チカ

私は二人の結婚式の後、彼と仕事関係で知り合ったけど、初めて会った気がしなかったわけだ…

アユミ

本当、世界って狭いわね～

チカ

だから彼、ＬＩＮＥ返してくれなくなったんだ…

チカ

私、婚約破棄されちゃうの…？

アユミ

彼も随分悩んだらしいけど、婚約破棄を決めたそうよ

アユミ

そして、あんた達二人に慰謝料請求するんだって

ケンタロウ

は！？俺まで！？

アユミ

当たり前でしょ！

チカ

そんな、私はまだ結婚してないんだよ！慰謝料なんて大袈裟だよ！

アユミ

婚約中の浮気は慰謝料が発生するのよ

チカ

なんで処理してあげたくらいで！愛してるのは彼だけなのに！

アユミ

それは彼に言って

アユミ

それと私も、あんた達二人に慰謝料請求するから

チカ

嘘…私、婚約破棄された上に二人に慰謝料払わなきゃいけないの！？

チカ

酷い！そんなの耐えられないよ！

ケンタロウ

おいやめろよ！悪いのは全部俺なんだ！チカをそんなにいじめるなよ！

アユミ

うるさい！あんたには離婚届用意したから！弁護士にも相談してる

ケンタロウ

おい、離婚なんて冗談だよな…俺の子を妊娠してるんだろ？

ケンタロウ

それなのに一人で育てるっていうのか？どれだけ大変かわかってるのか！？

アユミ

何を言われてももう無理。あんたなんかと一緒にいた方がこの子には悪影響よ

アユミ

あ、でも養育費は払ってもらうわね

アユミ

大丈夫。あなた達の厚ーい友情があれば、どんな困難だって乗り越えられるわよ！

ケンタロウ

待ってくれ！わかった、チカにはもう会わない！

ケンタロウ

元々この女にはうんざりしてたんだよ！何かと俺に頼りやがって！

チカ

ちょっと、何掌返して私のせいにしてるのよ！？私はちょっと控えようって言ったのに！

チカ

だいたい、あんたが性処理なんて頼んできたのが悪いんじゃない！

チカ

本当はあんなことしたくなかったのよ！

ケンタロウ

お前だって、彼氏より大きいとか言ってノリノリだったじゃねぇか！

アユミ

はいはい、喧嘩は余所でやってください

アユミ

せっかくこれからは、誰にもはばからず堂々と『友情』を大事にできるのにねぇ

～後日談～

アユミ

その後、ケンタロウとチカさんは、私と元婚約者からそれぞれ慰謝料請求されました

アユミ

ケンタロウは随分ごねましたが、無事私とは離婚が成立

アユミ

ケンタロウのご両親は、私に何度も頭を下げてくださいました

アユミ

二人は激怒したそれぞれの両親から勘当され、

アユミ

そのことをお互いのせいにし合って大喧嘩

アユミ

二人の『友情』は結局決裂してしまったそうです

アユミ

私は実家に帰り、無事に元気な赤ちゃんを産みました

アユミ

不安はありますが、両親も義両親も子育てに関して手厚いサポートをしてくれています

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結城真矢

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