━━━━1年前━━━━
???
誰もいない教室で
彼女の声が響く
初夏の爽風に、彼女の髪が揺れた
???
彼女は僕の返事を待っているようだ
一ノ瀬 彼方
???
彼女は涙目になりながら 聞いてくる
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
???
???
一ノ瀬 彼方
???
一ノ瀬 彼方
そんな爆弾発言を残し 彼女は足早に教室を出ていった
????
バタンッ....と、音がし見てみると
一ノ瀬 彼方
そこには白髪の男の子がいた
????
そういじける彼は「相川真冬」 通称まふ。僕の大親友だ
一ノ瀬 彼方
まふは掃除用具が入っている ロッカーから出てきた
相川真冬
相川真冬
まふは一生懸命ロッカーから 這い出てくる
相川真冬
一ノ瀬 彼方
相川真冬
相川真冬
やっと出てきたまふは 僕の目の前にやってきた
相川真冬
一ノ瀬 彼方
僕はあまりその名前にピンと 来なかった
相川真冬
一ノ瀬 彼方
相川真冬
まふは頭を抱える
相川真冬
一ノ瀬 彼方
こんな昨日のように覚えている
君との出会い
パチンッ...パチンッ...
ホッチキスの音が響く
放課後の空き教室で資料を まとめている
松本佐倉
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
唐突の告白。
だがこれは初めてじゃない
松本佐倉
彼女は僕の後輩
やたらと告白してくるので
もう、日常茶飯事だ。
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
松本さんは笑いながら言う
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
ガタッっと音を立てて松本さんが 椅子から立ち上がる
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
彼女は不貞腐れたように言う
一ノ瀬 彼方
僕は呆れたように松本さんに聞く
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
自分でも顔が赤くなるのが分かった
松本佐倉
彼女は少しびっくりながら
松本佐倉
と繰り返し何度も叫ぶ
一ノ瀬 彼方
今が放課後で助かった
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
僕は急いで口を塞ぐ
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
松本さんは少し怯えて 情けない返事をする
一ノ瀬 彼方
ドサッと資料を追加してやる
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
胸に手を当てて考えるがいい。
松本佐倉
嫌々言いながら しっかり やるところ。
僕はいいと思う。
パチンッ...
また、ホッチキスの音が響く
一ノ瀬 彼方
資料まとめを終え、家に帰る 途中、やっぱり彼女は
松本佐倉
松本佐倉
また告白をしてくる。
一ノ瀬 彼方
僕はやっぱり断る
一ノ瀬 彼方
僕なんかより、いっぱい 色んな人がいるのに
松本佐倉
そう言って微笑む松本さん
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
キラキラした目で聞いてくる
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
くっそ〜と言いながら頭を搔く 松本さんはすぐ元気になって
松本佐倉
松本さんはヒラヒラ手を振り
反対方向を歩いていく。
そんな松本さんの背中を見ながら
「先輩がいいんです。」
という言葉がずっと頭の中を 飽和していた
「僕」がいい
一ノ瀬 彼方
その言葉は不思議と嬉しかった
相川真冬
一ノ瀬 彼方
後ろからズイッ..とまふが 顔を出す
一ノ瀬 彼方
僕がまだ少し驚きながら聞くと
相川真冬
まふは スウッと息を吸うと
相川真冬
まふは横目で僕を見ながら言う
一ノ瀬 彼方
僕がうなだれながら聞くと
相川真冬
と簡単に答える
相川真冬
一ノ瀬 彼方
相川真冬
一ノ瀬 彼方
まふからの質問を適当に返しながら
僕は家に向かった
相川真冬
一ノ瀬 彼方
まふは元気よくブンブン手を振る
よくそんな元気が出てくるな
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
相川真冬
鼻で笑う まふをよそに 自分の席に座った
教科書を机にしまおうとすると
カサッ...と音がした
一ノ瀬 彼方
出してみると、それは
一ノ瀬 彼方
手紙だった
相川真冬
少し興奮気味にまふが聞く
でも
一ノ瀬 彼方
裏表を見ても何にも書いていない
相川真冬
一ノ瀬 彼方
相川真冬
まふが後ろを向いたのを確認すると
中身を取り出す
一ノ瀬先輩へ 放課後、屋上で待ってます。
と、だけ書かれている
一ノ瀬 彼方
相川真冬
まふが後ろを向いたまま 聞いてくる
一ノ瀬 彼方
相川真冬
先生
相川真冬
自分の席に戻りながらまふは 僕の耳元でそう呟いた
別にケチでいいもん。
ただ、もしかしたら松本さん かと思うと
口をついで出た
ガチャッ....
一ノ瀬 彼方
僕が屋上の扉を開けると
肩ぐらいまでの髪を風に なびかせる女の子がいた
一ノ瀬 彼方
でもそれは松本さんではなかった
???
彼女は僕に気づくと
???
???
と、頭を下げた
一ノ瀬 彼方
突然のことに頭が追いつかないが
一ノ瀬 彼方
と一言だけ言えた
一ノ瀬 彼方
僕がそう言うと彼女は
???
涙目になりながら言った
一ノ瀬 彼方
昨日聞いた松本さんと同じ言葉なのに
なぜかあまり嬉しくない
一ノ瀬 彼方
僕は少し走って屋上を出た
松本佐倉
松本佐倉
僕が教室に入ると、もうすでに 資料をまとめていた。
一ノ瀬 彼方
軽く謝りながら席に着く
松本佐倉
松本さんは資料から目を離さず に聞いてくる
一ノ瀬 彼方
「松本さんに誤解されたくない」
そんなことが頭をよぎった
なんだか、変、だ。
一ノ瀬 彼方
思わず口をついで出た
松本佐倉
松本さんは僕をジロジロ見る
一ノ瀬 彼方
僕がそう聞くと松本さんは 資料に目を戻し
松本佐倉
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
僕が思わず大声を出すと
松本さんは目を見開き
松本佐倉
と、澄ました顔で答えた
一ノ瀬 彼方
僕は机を思いっきり叩く
松本佐倉
松本佐倉
松本さんの顔は心配でもなく
「哀れみ」だった
一ノ瀬 彼方
僕は落ち着き、資料をまとめる
松本佐倉
いつもより、震えた声だった
一ノ瀬 彼方
なるべく優しく聞いてやる
松本佐倉
なにか、様子がおかしかったけど
僕はその時 気づいてやれなかった
松本佐倉
松本佐倉
いつもより真剣な目で僕を見る
でも、僕は
一ノ瀬 彼方
いつものように返事をした。
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
松本さんは俯いて
松本佐倉
松本佐倉
松本佐倉
消えそうな声で訴えるように言う 松本さんは泣いているようだった
一ノ瀬 彼方
やっぱり、松本さんに言われた方が 嬉しかった。
僕がへらへらしてるのをよそに
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
松本さんは帰ってしまった
松本佐倉
こちらを振り向くことなく そう言った松本さんの背中は
悲しそうだった
パチッ......パチンッ...
1人になると余計に
ホッチキスの音が響いた
相川真冬
まふが扉からひょこっと顔を出す
一ノ瀬 彼方
まふと目を合わせずに答える
相川真冬
目を合わせようとまふが 飛び跳ねる
一ノ瀬 彼方
僕は無言でかわし続ける
松本佐倉
ついに諦めたまふは 頬をポリポリかく
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
僕はその場の感情に任せて 叫んだ
相川真冬
まふはオドオドしながら椅子に座る
相川真冬
相川真冬
相川真冬
まふはニタニタしながら聞いてきた
一ノ瀬 彼方
相川真冬
相川真冬
まふが頭を抱える
相川真冬
相川真冬
まふは僕の背中をバンバン叩く
相川真冬
まふは上を見ながらそう言う
「好き」
なのかなぁ。
一ノ瀬 彼方
相川真冬
明日、してみよう。
でも、松本さんが
学校に来ることは
なくなった
まふまふ様 視点
一ノ瀬 彼方
久しぶりの2人の帰り道
なのに、
そらるさんは俯きながら ため息混じりにそう言う
一ノ瀬 彼方
いやいやな訳ないよ。
なんて、自問自答を繰り返す 彼を他所に
僕は考え事でいっぱいだった
一ノ瀬 彼方
いきなり止まって僕を見る。
そんなそらるさんに気づかず 僕はそのまま歩く
一ノ瀬 彼方
君のために悩んでいるのに その言葉は僕の頭にきた
相川真冬
相川真冬
思わずそんな言葉が 口から出る
相川真冬
気づいた時にはもう、遅かった
一ノ瀬 彼方
そらるさんはやっぱり 食いついてきた
相川真冬
僕は口を紡ぐが
一ノ瀬 彼方
そらるさんの真剣な目に 諦める
相川真冬
そらる様 視点
相川真冬
僕はまふの目をじっと見る
相川真冬
まふは少し躊躇うが また口を開ける
相川真冬
相川真冬
一ノ瀬 彼方
まふから出たのは
予想外の言葉だった
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
相川真冬
まふはただ頷くだけだった。
相川真冬
一ノ瀬 彼方
相川真冬
相川真冬
まふの言葉はどうでも良かった
僕の足は近くの病院へ 走っていった
一ノ瀬 彼方
看護師
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
僕は息を整えながらそう言うと 看護師さんは一瞬、躊躇うが
看護師
と、にっこり笑う
看護師
一ノ瀬 彼方
看護師
看護師さんは質問をしながら 松本さんの病室まで案内してくれた
ガラッ....
看護師
扉を開けると看護師さんは 簡潔に説明し、去っていった
???
窓側にいた女の子がゆっくり 振り向いた
???
肩ぐらいまでの髪を 風になびかせ、僕を見た彼女は
いつもの笑顔になった
松本佐倉
優しく微笑んだ松本さんは ベット近くの椅子をポンポン叩く
「座れ」って意味だろう
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
まぁ、気になるのも当然だろう
一ノ瀬 彼方
僕が説明しようとすると
松本佐倉
松本さんは布団に顔をうずめた
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
松本さんを布団と引っペがし ながら言う
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
やっと作業が完了し、一息つく
でも、僕には伝えなきゃいけない ことがあるのだ。
一ノ瀬 彼方
一ノ瀬 彼方
俯きながら話す
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
僕の話を遮り松本さんが 話し始める
その目はどこか悲しそうだった
松本佐倉
一ノ瀬 彼方
震えた声で話す彼女に 僕は頷きながら聞く
松本佐倉
彼女は目に涙を浮かべる
松本佐倉
手の甲に雫が1滴、落ちる
一ノ瀬 彼方
松本佐倉
ボタボタと涙が落ちる
看護師
看護師さんの声が聞こえた
松本佐倉
ベットから立ち上がりながら 彼女はそう囁いた。
バタン....
一ノ瀬 彼方
1人になった病室。
僕は走ってあそこへ向かう
ガラッ........
いつもの場所に僕は座る
分かってたけど人はいない。
一ノ瀬 彼方
君と放課後、資料をまとめた 変な思い出。
今更、そんなのが頭をよぎる
一ノ瀬 彼方
僕の目からは大量の涙が 零れ落ちた。
僕はその涙を思いっきり 腕で擦った
彼女が来た時に笑えるように。
4時間後
???
懐かしい声が聞こえた
何度も聞いた声。
僕の大好きな、君の声が。
終わり。
初の短編です。 好評だったら、またやりたいです
コメント
5件
これめっちゃ良かったです! 自分これ超好きです! 続き出るならめっちゃ楽しみにしてますね! コメント遅くてすみません
幸咲さん ありがとぉぉぉ! ありがとぉぉぉ!
佐倉ちゃん 手術成功と彼氏出来たの おめでとう🎊 おむれつさんへ 短編初めてで この完成度凄いです! また見に来ます! これからも頑張って下さい!