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雪(みだいふく)
雪(みだいふく)
雪(みだいふく)
雪(みだいふく)
雪(みだいふく)
最近戦争続きだった我々軍にもようやく終戦の時が来た。
それがつい数日前の話。
勿論全て勝利で終わり、俺達は勝ち残ったわけだ。
それは俺たちがそれぞれ特異な力を持っていて、天使であることが理由だ。
実際は天使なのではなく、たまにそういう存在が生まれるのだ。羽を持って、特異な能力を持った子供。
気味が悪い俺達は居場所がなくなって、この軍を作り上げ、同じような人も、天使を蔑まない人も皆受け入れている。
そんなわけで実はこの軍は一般兵にも天使が数名混ざり込んでいる。
そしてうちには新人ながら、司令官という最重要任務を負っている”雨”がいる。本来なら幹部と総統だけの食事にも仕事上彼だけは呼ばれるのだ。
雨
ショッピ
そこで一番に反応したのはショッピだった。軍人なのに一般成人の食事よりもはるかに少ない彼の食事は、他の皆にもひかれるレベルだった。
さらに言うと自分は関係無い的な顔をしているシャオロンも、多分後程地獄を見ると思う。
ショッピ
弁解しようと必死なショッピの肩をつかんで
セチア
そう言うと、ショッピは絶望した顔で「ひゅっ。」といった。まぁ、これに関しては俺も前から心配しとったことやし、しゃーなしやな。
それにしてもあいつはいまだに謎が多い。正直我々も情報をつかめていないのだ。例えば出身、家族、好物などの簡単なことまで。
たった一つの手がかりといえば、アイツが俺を初めてみたときの嬉しそうな、悲しそうな、一瞬だけのその情報のみ。
しかし、俺はあいつと会った記憶なんてないし、この軍で仲良くなったほどだ。これが情報といえるかどうかすら怪しい。
しばらくすると、何故か雨が人数分の皿を台に乗せて持ってきたのだ。
それぞれの前に出されたさらには、よく見ると、それぞれの嫌いな食べ物が乗っていた。皆は苦い顔をして雨の方を見た。
雨
雨
ここが大事な判断だ。いくら同じ食事の場に呼ぼうと、俺たちの見ていないところでの調理とは話が違う。実際に毒を盛られたことだってあった。
そのときは確か、しんぺいさんが何とかしてくれたはずだ。だが、しんぺいさんにまで毒が入っていた場合俺達に対処は出来ない。
考え事をしていた時、横から何かを食べる音が聞こえて来た。そちらを見ると、なんとグルさんがそれを食べていたのだ。
セチア
グルッペン
セチア
そう言いあっているうちに、皆も食べ始め、もう駄目だと思ったため俺も雨に一言いい食べ始めた。
セチア
雨
仕方なく一口。そしてもう一口。入っているのは嫌いなもののはずなのに美味しくて口が止まらなくなっていた。皆も同じのようで、いつもと比べ静かに時が進んでいく。
食べ終わった後はただただ幸福感があった。料理がうまいとかそういう次元の話ではなかった。だがしかし、大切なのはこれからだ。
遅延性の毒であれば、まだまだこれから症状が出る可能性がある。だからといって安易に解毒剤を飲むのもさすがに悪いだろう。
これからしばらく時間を見て、もしでなければ雨には謝罪する必要がある。しかし毒で誰かが倒れたときは。
まぁ一旦今は様子を見るしかない。そう思い俺は沈黙を破り話を始めた。
セチア
そう切り出すと皆は頷いて口々に楽しみや、どんなんなんやろうかと話し始めた。そこでグルッペンが口を開いた。
グルッペン
雨
セチア
雨
遠慮している雨を押し切り、一緒にお風呂に入る事になった。微妙な顔をしていたがまぁいいだろう。
夜になり、集合して皆で一緒に風呂に入った。ゆったり入る風呂が久しぶりだからか皆は感動していた。そしてそのうち雨の事で話が盛り上がってきた。
ショッピ
雨
雨
グルッペン
なんて言いあっていると、たまたまその時に居合わせなかったシャオロンが興味津々に聞いてくる。
シャオロン
コネシマ
そして嫌そうにしている雨の意思もお構いなしにその時の話がされるのであった。
それは合否を出す最終面接のような時のことだった。
グルッペン
グルさんは少々鬼畜な質問をするがこれは戦争。忘れてはいけない、そう、戦争なのだ。
雨
グルッペン
雨
グルッペン
何ともおかしなことを言うものだ。そんな目をしている。こういう時のグルさんは大抵合を出す。
雨
そう言って少し笑って見せる。だが、先ほど俺を見たときの反応とは違く、今度は嘘っぽい造り笑顔に見える。
コネシマ
雨
シャオロン
皆が雨を笑っているとき、俺はふと雨に目をやった。
セチア
そこではっと我に帰る。聞いてはいけないことを聞いてしまったかもしれない。すかさず謝罪しようとすると、雨は立ち上がった。
そしてタオルを外して俺達に背中を見せた。思わず絶句する。そのには本来あったはずの美しい羽が、無惨にも切り落とされている光景が広がっていた。
雨
そう言って笑うと、切り替えていつものように
雨
そう言ってあがっていってしまった。
セチア
完全にやらかしたな、と。絶対に謝るべきだ。今あいつが起きているかはわからないが、でも絶対に部屋に行くべきだ。そう思い俺は立ち上がった。
雨のドアをノックするとあっさりと雨は出てきて、部屋の中へ通された。本来なら一般兵は大人数で一部屋を使うのだが、雨は監視役として、幹部と同じくらいの量の仕事をこなす。
そのため労ってやろうと、一般兵にしては豪華な部屋で過ごしているのだ。
御茶を入れ、お菓子まで用意してくれた雨と相対する。そして俺はまず一言、彼の名前を呼んだ。
セチア
雨
一瞬言葉に詰まる。いや、というよりかは何かがおかしい。彼は俺と話すとき、何故か口調が優しくなるのだ。本当に小さな差だが。
セチア
それでも声を出して謝罪をすると、全然いいですよと言われ、何故かそのまま話が盛り上がり、明日もまた一緒に風呂に入ろうという話になった。
そして時間を飛ばして現在である。勢いで決まったはずの風呂はなんだかんだそのままことが進んでしまった。
別に問題はないんやが。
セチア
どうして羽がないのか?彼の背中は隙だらけだった。そこにはきっと本来羽があったのだろうが失くなってしまっていた。代わりにあるのは大きな傷だけ。
どうして彼の翼の事がここまで気になってしまうのか。昨日後悔したばかりなのに口が動いてしまう。しかしやはりこの後の言葉に口が動かなくなる。
すると察してくれたのか雨は話し始めてくれた。
雨
その訳が聞きたい。でもそれ以上は声が出ずに結局「ああそうか。」で終わってしまった。そこからはまた世間話などをはじめ。しばらくするとお互いにおやすみといって各自の部屋へ帰っていった。
ショッピ
雨
そこで楽しそうに話している二人を眺めながら、俺は先日のことを思い返していた。
雨の背中には羽がない。代わりにあるのは痛々しい傷と大きな隙だけ。訳あって失くしたと少し前に聞いたばかりだ。
周りを見渡すと、天使がいくらかいて、みんなそれぞれの色がある。俺達幹部も、シャオロンは黄色だったり、ゾムは緑だったり様々で。
幾ら雨に質問しても、これだけは笑って答えることはなかった。
セチア
ほらまた。笑うだけで。
でももう雨の羽について聞くことはタブーではなくなって、皆も普通に弄っているほどだ。
ただ俺の羽は少し特殊で虹色をしていた。やろうと思えば一色にできるので一応赤にしているのだが、こんな羽を見たことはなかった。
グルさんも、オスマンも、チーノも、ショッピ君も、皆それぞれ自分の色を持っている。それなのに俺は虹色の羽をしている。それに少し気になる事があるのだ。
橙の羽のチーノはタイムリミット。決められた時間以内ならこの世界でかなり自由が利くというもの。
黄色のシャオロンは電気。そのまま電気系なら雷から、人間の中を走っている微力な電気まで操る事が可能。
緑のゾムは爆弾。材料がなくても、いつでもどこでも爆弾を作る事が可能。
青色の鬱先生は液体。もともとの物質が液体ならば状態変化をしていてもその物質を操る事が可能。例えば氷とか。
紫の兄さんは重力。名前の通り重力を操る事が可能。
その他の赤、藍はその色の羽の人が居ないからわからへんけど、俺の七色の羽は確実に、いや、というか同じ色の羽の人は同じ能力を持っている。
だから俺は、赤の炎、橙のタイムリミット、黄色の電気、緑色の爆弾、青色の液体、藍色の感情操作、紫色の重力。そして、虹色の譲渡を使う事が出来る。
これが何か未だに分からないが、1つわかる事があるとすればこれは本当に特殊な事例で、世界でも俺しかいないかもしれないということだけ。
この羽を探っていかへんと。そこで俺はある事に気が付いた。
そう言えば雨に羽はない、だが羽は斬ってもしばらくすると自然治癒するもので生えてくるはずなのだ。それなのに彼は長い事生えてきていない。
これは探る必要がありそうやな。
セチア
廊下ですれ違ったそいつに声をかける。雨が俺達に料理を作ってくれてからかれこれ2年は経っていた。だからそもそもそんなことがあったのかも、もううる覚えである。
さらに雨はもうとっくに幹部に昇格している。あんときでさえほぼ幹部みたいなものやったしな。
雨
セチア
雨
そのうち話が長引いてしまって、いったんどちらかの部屋に行こうと言う事になった。
セチア
雨
セチア
というか物一つも増えてなくないか?とは思いつつそれを口には出さず、俺は本題を口にした。
セチア
雨
いきなりの話題に驚いたのか、雨はその躑躅の目を少しだけ開き、きょとんとしていた。
セチア
セチア
未だに躑躅色の目は見開かれたままだ。きっとかなり驚いているのだろう。俺は何も考えることなく、話を続けた。
セチア
そういってお菓子にやっていた視線を雨に移すと雨は複雑な、今まで見たことのない様な顔をして
雨
そう言って、勢いよく立ち上がると、俺に背中を向け部屋の奥の方に消えて行ってしまった。
久しぶりに幹部、総統の全員で風呂に入る時間が取れた。しかしあれから雨と話すことは一切なくなった。
だから今日も他のメンバーと話しているが視線はいつだってそこを向いていた。
隙だらけの背中。羽の代わりに大きな傷が残ってしまった彼の背中。雨が自分で切り落としたんだと、少し前に知ったばかり。
俺達はどうして一人に一色の羽を与えられて生きているのか、そんなものがなければ天使同士の中でも差別はなかったはずなのに。
だから羽のある雨はどんなだったのか、もう2度と浮かべたりなんてしない。
その時だった。
セチア
頭に激痛が走った。痛くて痛くて何も考えられないほどの激痛。
その時、俺が呼んだ名前は、治療薬のしんぺいさんでも、総統のグルさんでもない。ロボロという名だった。
でもその名前は記憶にないもので、頭がパニクってしまった。
セチア
どうして、お前。そんな悲しそうな、顔してるんだ?
意識が途切れる直前、俺の頭の中を埋め尽くしたのは総統でも自分の事でもなく、何故か雨のことだった。
しかし呼んだ名前と彼の名前は合致しないもので。