桃太郎
お爺さま、お婆さま
桃太郎
近頃、町で悪さをしている鬼どもを―
お爺さん
だめだ
桃太郎
え?
お婆さん
桃太郎
お婆さん
いま、鬼退治に行きたい
お婆さん
そう言おうとしたわね?
桃太郎
し、しました
桃太郎
だめなんですか?
お爺さん
だめだ
桃太郎
え?
桃太郎
そんなことあるんですか?
お婆さん
大切に育ててきた我が子のような存在なのよ
桃太郎
待ってください
桃太郎
でも僕は
桃太郎
桃太郎ですよ?
お爺さん
桃太郎だからだめなんだ
桃太郎
どういうことですか
お婆さん
お婆さんたちが若い頃
お婆さん
2人の間にも子供がいてね
お爺さん
うむ
お爺さん
あの子を忘れた日は一日とないよ
お爺さん
お前の名も私の息子から受け継がれたんだ
お爺さん
その名も
桃太郎
まさか桃太―
お爺さん
サンティアゴ
桃太郎
サ、サンティアゴ!?
お婆さん
サンティアゴちゃんも鬼退治に行ってから
お婆さん
それっきり帰ってきてないのよ…
桃太郎
僕の名前はサンティアゴから
桃太郎
受け継がれたって言ってましたけど
お爺さん
そうだ
桃太郎
どこをどうしたら桃太郎に…
お爺さん
と、まあ桃太郎
お爺さん
おまえを鬼退治に行かせることは出来ない
桃太郎
えーい、うるさーい
桃太郎
僕は桃太郎なんだ
桃太郎
鬼退治に行かないといけないんだ!
お爺さん
な、なんて強い意思なんだ
お爺さん
しょうがない…
お爺さん
婆さん、あれを渡してくれ
桃太郎
吉備団子を渡してくれるんですね
お婆さん
これを持っていきなさい
桃太郎
あたりめ!?
お爺さん
うむ
お爺さん
3つ渡しとくから
お爺さん
これで仲間を増やしなさい
桃太郎
これじゃ旅パが全員おじさんになっちゃうよ
お婆さん
あと桃太郎
お婆さん
本当に困った時はこれを使いなさい
桃太郎
なんですかこれ
お婆さん
きっと興奮状態になって
お婆さん
パワーがみなぎるわ
お婆さん
多分ちょっと中毒にはなるけど
お婆さん
妖精が見えるようにもなるのよ!
桃太郎
あ、危ないやつだ
お爺さん
気をつけるんだよ
お婆さん
行ってらっしゃい
お婆さん
ヤク太郎
こうして桃太郎は
あたりめ3つと
謎のヤクを手に
鬼退治に向かうのであった
桃太郎
2人の反対を押し切って
桃太郎
飛び出してきたのはいいものの
桃太郎
鬼ヶ島ってどこだ…
桃太郎
仲間も増やさないといけないし…
グー
桃太郎
そういえば
桃太郎
昼飯食ってなかったな
桃太郎
あたりめ
桃太郎
食うか…
桃太郎
どうせこんなので
桃太郎
仲間なんて増えるわけないしな
おい
茂みの中から声が聞こえる
桃太郎
だ、だれですか?
俺は犬だ
美味そうなもの食ってるじゃねえか
桃太郎
!
桃太郎
あたりめ食べますか…?
い、いいのかっ…!?
桃太郎
あの
桃太郎
良かったらでいいんですけど
桃太郎
あたりめあげる代わりに
桃太郎
一緒に鬼退治手伝ってくれたり…?
全然いいぞ!
桃太郎
ありがとうございます!
桃太郎
(これは想定外だ!)
桃太郎
(あたりめで犬が仲間になってくれた!)
じゃあ貰うぞ
桃太郎
え
桃太郎
犬さん、ですか?
ワンダー吾郎
俺ワンダー吾郎って言うんだ
ワンダー吾郎
だから吾郎でいいぞ
桃太郎
いや
桃太郎
そうじゃなくて
桃太郎
本当に犬ですか?
ワンダー吾郎
失礼なやつだな
ワンダー吾郎
どこをどう見ても犬だろうが
桃太郎
僕が知ってる犬じゃないというか…
桃太郎
さっきの鬼退治の話
桃太郎
やっぱり無かったことに
ワンダー吾郎
なんでだよ
ワンダー吾郎
おまえ、人を見た目で判断するタイプだな
桃太郎
いや
桃太郎
吾郎さんって
桃太郎
いわゆる人面犬ってのですよね
ワンダー吾郎
そうだが
桃太郎
顔が人だと
桃太郎
戦いに連れて行き辛いじゃないですか
ワンダー吾郎
なんでだよ
ワンダー吾郎
連れていけよ
桃太郎
吾郎さんの家族にも迷惑かかりますし
ワンダー吾郎
俺に家族はいない
桃太郎
す、すいませんなんか
ワンダー吾郎
だから連れていけ
ワンダー吾郎
俺もお前の役に立ちたいんだ
桃太郎
…
桃太郎
なんでそんな初対面の人の
桃太郎
力になろうとしてくれるんですか
ワンダー吾郎
お前だって俺に優しくしてくれたじゃないか
桃太郎
…
桃太郎
(僕はただ仲間欲しさに)
桃太郎
(吾郎さんに優しくしたのに)
ワンダー吾郎
だから力にならせてくれ
ワンダー吾郎
頑張ってる若者を見ていると
ワンダー吾郎
放っておけないんだ
桃太郎
…
桃太郎
やっぱりごめんなさい!
桃太郎
人面犬は生理的に無理です!
ワンダー吾郎
なんでだよ!
ワンダー吾郎
今のは仲間にする流れだろ!
ワンダー吾郎
おい!
ワンダー吾郎
待てって!
ワンダー吾郎
置いてくな!
ワンダー吾郎
俺ヘルニアなんだ!