獅白ぼたん♌️
木に寄りかかり、熱く痛む腹部を手で抑える もはやその痛みだけが、生きている証だった 湿っていく掌の感覚も少しずつ薄れていく 傷口から何かが流れ出るたび、指先が冷たくなっていく 死ぬことに対する恐れは無い そんなものはとうの昔に捨ててきた
獅白ぼたん♌️
誰にともなく言う いや、ほんの少し期待していた 誰かが答えてくれるのではないかと
雪花ラミィ☃️
響いたその人の声は優しく、少し寂しそうだった そんな事を考えている間に意識が遠くなり、何も、見えなくなった
獅白ぼたん♌️
目が覚め、最初に見えたものは見知らぬ天井だった 横を見るとベッドに突っ伏し、眠る少女がいた
雪花ラミィ☃️
眠って居たはずの少女が目を開け、呟く 意識がなくなる前に聞いた、あの声だった
雪花ラミィ☃️
獅白ぼたん♌️
冷たく言う少女に、大人しく従う 彼女に何をされてもいい、と思った もはや、死ぬも生きるも変わりはしないから 慣れた手つきで包帯を取り替える少女に 初めて自分の怪我に手当がされていることを知った 無言で手当てが進む
雪花ラミィ☃️
獅白ぼたん♌️
急に言われたその言葉を、心の中で否定する 綺麗なはずない 傷だらけのこんな体
雪花ラミィ☃️
雪花ラミィ☃️
体が少し強張る 私を捕まえようとしてきたアイツらと 私を売ろうとしてきたアイツらと 同じ言葉だ また傷つけられるかもしれない そんな恐怖で呼吸が浅くなる
雪花ラミィ☃️
心の中を覗かれたようで、驚く そして、彼女の目を見て気づく 彼女の言葉は、純粋な賞賛 悪意も何も無く、ただ思ったことを言っただけ そう考えると少しずつ呼吸が落ち着いていく
雪花ラミィ☃️
雪花ラミィ☃️
彼女の声は心地良くて 死んでもいい、と思ったはずなのに まだ生きたい、と思わせる
雪花ラミィ☃️
獅白ぼたん♌️
唐突にそう訊かれ、戸惑う 名前、という概念は知っている 様々な生物の個体を識別するためのもの 呪いの一種たるもの 誰かの想いがこもったもの 存在を固定するもの けれど、自分の名前なんて考えたことも無かった 名前を必要とする環境にいなかった
雪花ラミィ☃️
獅白ぼたん♌️
雪花ラミィ☃️
再度尋ねられ、つい望んでしまった 驚く彼女に、少し後悔をする 無茶なことを言った けれど、もし叶うのならば 私の名前を、私を救ってくれた彼女に付けて欲しかった
雪花ラミィ☃️
雪花ラミィ☃️
彼女の発言に驚き、同時にほんの少し口籠る 種族 私が忌み嫌うもの 私を私たらしめるもの 私が追われる原因となるもの
獅白ぼたん♌️
けれど、彼女を疑う気はとっくに失せていた 彼女が名前をくれると言っているのならば、何も心配する必要はない 目を閉じ、彼女の言葉を待った
雪花ラミィ☃️
獅白ぼたん♌️
少し時間が経ち少女が呟く その声に目を開け、問う
雪花ラミィ☃️
彼女の声が響く 今までと同じ声量、声の調子 けれど私の耳は、その言葉だけは明確に認識した
獅白ぼたん♌️
雪花ラミィ☃️
気づいたら、そんな言葉を彼女に投げかけていた 彼女は驚きながらももう一度 今度は一文字一文字をゆっくりと発音しながら呼んでくれる
獅白ぼたん♌️
自分でも言ってみる 確かめるように何度も、何度も 胸の中が温かくなる ベッドから立ち上がり、彼女の前に跪く
獅白ぼたん♌️
雪花ラミィ☃️
彼女の手を取り、感謝を伝える いきなりのことに戸惑う彼女
獅白ぼたん♌️
そこまで言った時に気づいた 私は彼女の名前を知らないことに 笑いながら、尋ねる
獅白ぼたん♌️
獅白ぼたん♌️
雪花ラミィ☃️
躊躇いながらも、彼女は教えてくれる 気づかれないように深呼吸をする
獅白ぼたん♌️
獅白ぼたん♌️
途中まで言って口籠る 口が動かない もう怖いものなど無いはずなのに この言葉を彼女に否定されたらと思うと どうしても、声が出ない
雪花ラミィ☃️
さっきよりもほんの少し優しい声音で訊かれる 続きを促されていることを、すぐに理解する それでも話せずにいると 彼女は手を伸ばし、私の頭を撫でてくれる 彼女に触れられたところが暖かくて 少しずつ声が出せるようになって ゆっくりと言葉を紡いだ
獅白ぼたん♌️
私の声が部屋に響く 彼女の様子を見る
雪花ラミィ☃️
雪花ラミィ☃️
獅白ぼたん♌️
微笑みながら言う彼女に、私も笑いながら応える 永遠に彼女の隣に居られることを願いながら
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!