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高校三年生の夏、僕は教室でぼんやりと窓の外を眺めていた。
陸人
海
美空
今話している男子三人はクラスカースト上位、つまり一軍の奴らだ。 僕はこのグループにひっそりと所属している。
陸人
和臣
陸人は僕を睨みつけた。
海
海は呆れ顔で僕を見つめている。
美空
美空の言葉で陸人は話し始めた。
陸人
丑三つ時、ラジオを特定のチャンネルに合わせると死者の声が聞こえてくる。 正確にはチャンネルに合わせた人に関係する死者の思い出が聞ける。
噂好きの陸人がネットで仕入れた情報らしい。
美空
美空が興味津々で質問する。
海
海はホラー系が苦手だ、なのに毎回付き合わされている。
陸人
陸人はやる気満々のようだ。 僕はもちろんやりたくない。 こんなことに首を突っ込むとろくなことにならないから。
陸人
陸人は僕が返事をするまで絶対に目を逸らさない、だから早く答えないと。
和臣
陸人
和臣
陸人の目が明らかに変わった。
陸人
和臣
陸人
陸人のこういうところはどうしても慣れない。
海
こういう時はいつも海が助けてくれる。 美空は黙って事が終わるのを待っていることが多い。
陸人
結局こうなる。まあ、望んでた結果なんだけど。
放課後になり僕は足早に学校を出た。
和臣
山の上にある墓地に墓参りに行くのだ。
和臣
母に近況報告をして、墓を掃除した。 本当は毎年父と来ていたけど、今日は仕事で一緒に来られなかった。 もう一人、墓参りをしなければならない人物がいる。
和臣
僕の幼馴染、島波朝日は一年前に自殺した。
和臣
僕の目の前で屋上から飛び降りたのを、今でも鮮明に覚えている。
朝日
和臣
朝日
和臣
朝日は靴を脱いで言った。
朝日
憎しみの言葉を笑顔で吐きながら、 朝日はゆっくりと後ろに倒れて落ちていった。
墓参りを終え、僕は家に帰った。
和臣
祖父
今僕は祖父と暮らしている。父は仕事の都合で単身赴任中だ。
和臣
祖父
祖父は口数が少なく、いつも怖い顔をしている。 だけどとても優しいのを僕は知っている。
和臣
祖父
和臣
祖父は少し不思議そうな顔をした。
祖父
和臣
祖父
祖父は書斎に行ってしまった。 夕飯を食べ、僕はラジオを持って自分の部屋に向かった。
丑三つ時と言われる午前二時。僕は特定のチャンネルに合わせた。
???
いきなり聞こえてきた声は知らない女の人だった。 僕の父の名前を呼んでいる。
父
父の声も聞こえてきた、呼んだのは母の名前だった。
これは間違いなく母の思い出だ。 会話の内容から察するに、僕を出産した時だろうか。
母
父
二人は笑いながら楽しそうに話していた。 しばらくすると音声が途切れ、砂嵐になってしまった。
時計を見ると午前二時半、思い出は三十分しか聞けないようだ。 きっと陸人たちもいい思い出を聞いているだろう。
翌日、学校に着いた僕はいつもと違う光景を目にした。 陸人たちが来ていない。 ホームルーム開始のチャイムが鳴っても、三人は来なかった。
先生
先生の第一声は僕の不安を増幅させた。
先生
僕の嫌な予感は見事的中して、絶望感が押し寄せてきた。 ラジオだ、あの噂を試したせいで三人はいなくなったんだ。 でもどうしてだろう、三人同時にいなくなるなんて、どう考えてもおかしい。
僕はこの日以来ラジオを聞かなかった。 何かが引っかかる。僕にはまだやらないといけないことがある気がする。
陸人たちがいなくなって一ヶ月が経った。 僕はもう、我慢できなくなった。
家に帰ってすぐにラジオを用意した。 午前二時、特定のチャンネルに合わせる。 聞き慣れた声が部屋に響き出した。
朝日
陸人
朝日と陸人の会話だ。 この時、陸人は朝日をマットに押し倒して、朝日の服を脱がそうとしていた。
美空
それに便乗して美空も朝日の身体を舐め回すように見ていた。
誰もいない体育倉庫で、男子三人が女子一人を襲っていた。 僕は見張り役としてただそこに立っていただけだった。
海
いつもクールな海でさえ、この状況を楽しんでいた。
朝日
朝日のか細い声が聞こえる。あの時の光景が目に浮かぶ。 朝日の、必死に抵抗する姿が、泣き顔が、僕を罪悪感で包んでいく。
和臣
あの時僕は見て見ぬ振りをした。 泣きながらラジオの声に耳をすませる。
午前二時半、ラジオはぷつりと切れ、砂嵐が流れ出した。 僕は朝日の最後の言葉を思い出す。
朝日
砂嵐が流れるラジオを目の前に、僕は泣くことしかできなかった。
???
声がして、僕はラジオのほうを向いた。 だけどラジオからは砂嵐しか聞こえない。
???
その言葉とともに、誰かに肩を掴まれた。
和臣
僕は振り返らず、声の主に話しかける。
朝日
その声は、間違いなく朝日の声だった。
和臣
僕たちは会話を続ける。
朝日
僕を引く力がどんどん強くなっていく。 多分、朝日の顔を見てしまったら連れていかれるのだろう。
和臣
朝日
僕の最後の抵抗、少しの沈黙が流れる。
和臣
そう言うと同時に僕は後ろを向いた。
朝日
そこには涙を流す朝日がいて、僕を抱きしめていた。