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無線のノイズが、まるで氷を削るように、部屋の静寂を削いでいた。
焚き火の火はもう弱く、ロシアはただじっと、古い無線機の前に座っていた。
かすかに、イギリスとアメリカの声が聞こえる...
何かを話し合っているようだった。
ロシア
ふと、ノイズ越しにアメリカの声が耳に入った。
こちらは、赦されることなんて、きっとないというのに。
ちょっとした嫉妬が渦巻いた。
『赦してほしい』等、彼は言えない。
それ相応の行動をすでに起こしてしまっているからだ。
彼にも、兄弟がいるし、"いた"。
彼らはソ連を長男とする家族だった。
_______34年前、兄であったソビエトは、他界した。
そのせいで、こんな事になったのかもしれない。
ロシアを含めた兄弟たち______
ベラルーシとウクライナ、特にロシアとベラルーシはおかしくなってしまった。
それは、兄への強い憧憬のせいであった。
また、偉大なる"ソビエト連邦"を造らねばならない。
…たとえ偽物であったとしても。
それに強く反対したのはウクライナであった。
彼は、彼だけは、常に前を見ていた。
ソ連の他界前も、後も。
…それが、戦争の火種となっていた。
意見の不一致。
それこそが、彼らが決別した理由であった。
中国
中国
無線越しにいる韓国には聞こえないくらい、小さく呟く。
ただ韓国も似たようなことは思ったようで、ノイズ越しに彼のため息が聞こえてきた。
韓国
中国
不意に、韓国の声が聞こえる。
ノイズはまだまだ残ったままだった。
韓国
韓国
ロシア
現に、自分のところがそうかもしれない。
仮に、自分と、自分たちの兄弟が和解できたとしても
...結局。
対立は、避けられない。
仲良くなることなんて...不可能かもしれない。
実際、『仲直り』が出来ても『仲良く』するのは難しく、ずっと、本当の意味で『仲直り』できていない者というのもいるのだ。
…"アイツ"と、俺のように。
ふと、中国が口にする。
今度は、無線越しでもわかるように。
中国
中国
韓国
どこかで、誰かが封を閉じる音がした。
韓国
中国の湯を飲む手が止まった。
…氷を解かすのは、怖い。
その後、本当になにも残らないかもしれないから。
________でも、もしかしたら、融かした後に、足跡ができるかもしれない。
彼はそんな機会を逃してはならないと思った。
例え、雪が解けた後、なにも残らなくとも。
中国
韓国
ノイズは幾分かマシになっていた。
治りきったわけではないけれど。
そして、ロシアは_________どうかこの関係が、報われますようにと願った。
彼らも、自分たちも。