リビング
菜々美
ただいまー
美沙
おかえりなさい
菜々美
美沙さんだけですか?
美沙
みんなまだ帰ってきてないの
菜々美
そうなんですね
美沙
、、菜々美ちゃん、栞里ちゃんのことなんだけど
菜々美
、栞里から聞きました
美沙
私栞里ちゃんの気持ち知らなくて。嫌われちゃったわよね
菜々美
それはないです!
美沙
?
菜々美
栞里はそんなことで人を嫌うような子じゃありません。確かにビックリしたかもしれないけど
美沙
、、直人に出会ったのは高校2年生の時なの
菜々美
、、
美沙
直人は今のように誰からも好かれるような人気者で。私も今みたいにそんなに明るい性格じゃないから友達も少なくて、よく音楽室に引きこもってフルートを吹いてたの。
美沙
そしたらある日、直人が音楽室に入ってきて
4年前 音楽室
ガラ
美沙
!
滝沢
あれ?中川だけ?
美沙
、(うなずく)
滝沢
1人でやらないで吹奏楽部入ればいいのに
美沙
私、みんなから避けられてるから、
滝沢
え?
美沙
だからいいの、気にしないで
滝沢
もったいないよなー
美沙
え?
滝沢
音楽とか俺にはイマイチよくわかんないけど、中川のその音色、人を感動させる力があるのに、こんなところに1人で引きこもって吹いてるなんてもったいない
美沙
聞いてたの?
滝沢
俺、いつも隣の空いてる教室で寝てるんだ
美沙
、、
滝沢
毎日聴いてた、中川のフルート
美沙
、、
滝沢
テストで点数が上がらなくて悩んでた時、友達とちょっと言い合いして凹んでた時、好きな子に振られて立ち直れなかった時、ここで中川のフルート聴くと穏やかな気持ちになれた。悩んでたことなんて無かったかのように。すごいよな!中川って
美沙
私は別に
滝沢
中川はわからないかもしれないけど、中川の音楽は人を元気にする力がある。それを独り占めしてるなんてもったいない
現在
美沙
それから私は吹奏楽部に入って少しずつだけど友達も増えていった。直人も時間がある時はよく聴きに来てくれて。そんな彼に次第に惹かれていった
菜々美
想いを伝えたり、しなかったんですか?
美沙
高校の時に一回告白したの。でも気持ちには応えられないって。私それでも諦められなくて、同じ大学に入って強引にここにも住ませてもらった
菜々美
そうだったんですね
美沙
ストーカーみたいよね。ずっと付きまとってるなんて
黒岩
(帰ってくる)?
菜々美
そんなことないです。私も美沙さんの気持ちわかるから
美沙
え?
菜々美
私も6年間ずっと好きな人がいるんです
黒岩
!、、
菜々美
中学生の時の家庭教師の人なんですけど、会えなくてもずっと好きで
美沙
想いを伝えなかったの?
菜々美
伝える前に先生を辞めていました
美沙
そう、、もしかしてそのネックレス、先生にもらったもの?
菜々美
はい。受験に合格するようにお守り代わりにくれました
美沙
だから大事につけてたのね
菜々美
なんども捨てようって考えたんですけど、なかなか出来なくて
美沙
無理に捨てなくていいと思う
菜々美
、、
美沙
時間が経てば辛いこともきっと思い出に変わっていくから。捨てるのはその時でいいんじゃない?
菜々美
美沙さん
美沙
私もそろそろ忘れなくちゃいけない時が近づいているのかも、
菜々美
、、
黒岩
、、
夜 ベランダ
菜々美
(ネックレス見てる)
黒岩
、、そんなところにいると風邪引くぞ
菜々美
黒岩くん
黒岩
お前って喜怒哀楽が激しいよな
菜々美
え?
黒岩
ここで落ち込んでると思いきや、次の日にはケロっとしてたり、みんなではしゃいだと思いきや、ここで静まったり。面白くて見飽きないよ
菜々美
それって褒めてるの?貶してるの?
黒岩
どっちも(上着かける)
菜々美
!い、いいよ
黒岩
風邪引かれたら困る
菜々美
あ、ありがと
黒岩
羨ましいよ、そうやっていろんな感情を出せるお前が
菜々美
え?
黒岩
、、
菜々美
黒岩くん
黒岩
ん?
菜々美
(つねる)
黒岩
おい!
菜々美
むすっとしてるより、こうやって口角が上がってる顔の方がいいよ!
黒岩
、、
菜々美
笑ってる顔の方がいい
黒岩
、、ごめん
菜々美
え?
黒岩
(抱きしめる)
菜々美
?!黒岩くん?!ちょっと
黒岩
少しだけ
菜々美
?!
黒岩
ちょっと寒くなった
菜々美
!、、
黒岩
、、(離れる)
菜々美
、、
黒岩
油断してんなよ
菜々美
え?
黒岩
そうやって油断してると誰にでも抱きしめられんぞ
菜々美
ちょっと、からかったの?!
黒岩
じゃあな
菜々美
もう!、、
黒岩
、、