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彼岸花の咲く土手にある階段を のぼる。 上にあるのは、墓場だ。
夜だったら こんなところには来やしないが、 昼間の太陽が輝く今なら なにも怖くはない。
僕を溺愛した祖母の墓に向かって 歩いていると、 赤い彼岸花に混じって、 白いものが見えた。
それは、白い彼岸花だった。
風に揺れるさまが、 老婆の手招きのように思えた。 祖母の手も、 あのぐらい白かったことを 思い出して、 背中に嫌な汗が流れた。
手招きされた方は、 崖になっていた。
僕は気持ちを落ち着かせながら、 祖母の墓に花を添えて手を合わせた。
帰り際に崖の方を見た。
そこには、 首から抜け落ちた白い花が 地面に転がっていた。 僕を恨むかのように見ている。
そして、強い風が吹いて白い花が 崖の下へと運ばれていった。 ヒラヒラ舞い、 太陽の光を柔らかく反射して 落ちいく様は どこか儚げで、 強く死を思わせた。