廼子
…。

警察署に着き、ひとまずこの部屋に通された。
青髪の人は「すぐ戻ってくる」と言って
どこかへ行ってしまった。
廼子
(捕まるのかな…?)

もうお昼だ。
お腹がすいてきた。能力を使ったこともあり、
体もだいぶ疲れている。
廼子
…!

すまん。待たせたな。

廼子
いえ、大丈夫です。

青髪の男性が部屋に入ってきた。
手には紙の束がある。
廼子
あの…私、捕まるんですか?

…お前、その力で人を殺したことあるか?

廼子
え?ないですよ。

なら捕まらへんよ。

俺はただ今回の事の
取り調べをしたいだけや。

廼子
…そうですか。

少しほっとした。
お母さんが言うほど悪い人っていうわけではないようだ。
というわけで…

名前は一花廼子であっとるな?

廼子
はい。

お前には今から取り調べ_____

おらぁぁぁあーー!

青髪の男性が口を開いた瞬間に
水色髪の人がドアを開け放ち、部屋に飛び込んできた。
手にはトレーに乗ったご飯を持っていた。
あ、ご飯だよ!食べな!
おいしいよ~!

廼子
えっ?!

急にご飯が乗ったトレーを差し出され、
少し慌てていると青髪の人が
水色髪の人の頭を軽く叩いて止めてくれた。
おいっ!

いだっ!何すんのさっ?!

これから取り調べするって言ってんやろ?!

まずはご飯食べなきゃでしょー?!

廼子
えぇ…

二人が言い争った後、
水色髪の人が話を切り出してくれた。
というかまず、僕たち
名乗ってないよね?

あぁ…せやったな。

威風
俺は青砥 威風(あおと いふ)。
りうらと同じ部隊や。

仏
僕は神志名 仏(かしな ほとけ)!
よろしくね!

廼子
よろしくお願いします…

自己紹介の後、威風さんは事情聴取をはじめた。
仏さんは威風さんの後ろで、
カットされたリンゴを食べはじめた。
威風
飯、食べながら聞いてくれ。

廼子
はい…いただきます。

威風
…俺らが所属している部隊は、
「特別能力部隊」。

威風
お前はこの部隊を知っているか?

廼子
…!

廼子
…はい。

威風さんは少し驚いたような顔をしたが、
すぐにまた口を開いた。
威風
お前、能力を制御することができとったよな。
能力を使えるようになったのはいつからや?

廼子
使えるようになったのは、4歳の時です。
初詣で行った神社で使えるようになりました。

廼子
私の能力は狛犬の能力です。

威風
制御できたのはもとからか?

廼子
いえ…母も能力者だったので、
母と訓練しました。

廼子
ちゃんと制御できるようになったのは
6歳の時です。

威風さんは持っていた紙の束を
閲覧しながらじっと考えていた。
威風
なるほどなー…

威風
道理で能力者名簿にのっ取らんかったんか。

廼子
能力者名簿?

威風
そうや。能力者は全員、
名前が登録されとる。

そう言いながら私に紙の束を見せた。
そこにはズラッと人の名前が書いてあった。
威風
能力者の存在は普通の国民は知らへん。

威風
知れ渡れば能力者絡みの事件も増えるし、
世間はパニック状態にもなりうる。

威風
能力のことは、能力者本人と
能力者の親族しか教えない規則や。

威風
それに未登録の能力者を発見した時は、
すぐに警察に問い合わせなければならない。

廼子
…。

威風
そして俺達、特別能力部隊。
警察官の特殊部隊という形になっとる。

威風
国民と普通の警察官は
俺らの存在を、噂程度でしか知らない。

威風さんは警察手帳を見せた。
警察手帳には紅葉さんの警察手帳と同じように
「特別部隊」と記されていた。
威風
俺らは今回のように暴走した能力を止めたり、
能力者の保護をするためにある。

威風
隊員の警察官は全員、能力所持者。

威風
保護した能力者は、
能力を抑える効果がある薬を処方してもらうか、
能力を完全に使えなくする手術をするか。

廼子
え、そんな薬とか手術とかあるんですか?!

威風
せや。すごいやろ。

威風
それか能力を使って
警察官になるかどれかの道を選ばないとあかん。

そんな薬や手術があることは、
初耳だったので本当に驚いた。
威風
だが、お前は能力者名簿に
登録されていないにも関わらず、俺らの存在を知っていた。

威風
お前の母親が何か知っていそうだが…
ひとまずなぜお前は俺らの存在を知っている?

少し言葉に詰まってしまった。
今、本当のことを言っても私に害はないだろう。
でも心の奥でお母さんが泣いている気がする。
廼子
…っ

でもお母さんとの約束を破った。
今さら、戻ることはできないから。
廼子
私の祖母も…能力者だったんです…。

廼子
でも祖母は…
警察に処刑されたそうです…。

威風
…!

仏
…!

廼子
私は当時、生まれたばかりで
祖母がどんな人だったかも覚えてなくて…

廼子
母に聞いた話だと祖母は能力の暴走を起こし、
警察に連れていかれて死刑になったそうです。

ぎゅっと胸が締め付けられる。
昔、お母さんが泣きながらこの事を
話してくれた。思い出すだけで苦しかっただろうに。
廼子
その後、母は祖母を殺された怒りで
能力を発動できるようになったそうです。

廼子
母の能力は、能力を無効化するものでした。

私はポケットから腕輪を取り出し、
威風さんが見えるように机に置いた。
廼子
この腕輪は母の能力からつくられたものです。
つけると能力を使えなくなります。

廼子
もしかしたら私に何かあって
能力が誤作動しないようにと、いつもずっとつけてました。

廼子
母は…祖母のことで
特別能力部隊の存在を知っていましたが、

廼子
ちゃんとしたことは知らなかったみたいで、
能力を使えば殺されると思ってたみたいです。

だからお母さんは絶対に人前で
能力を使ったら駄目だと言っていたのだ。
威風
…なるほどなー…。

威風
大体のことはわかった。
一応、取り調べは終わりや。

威風
ありがとな。

廼子
はい…。

そう言うと威風さんと仏さんは
椅子から立ち上がった。
威風
んじゃ、りうらのところ行くか。

廼子
紅葉さん…?

威風
…りうら、途中で気絶してもうたから
お前が怪我してないか心配してたんやで。

仏
じゃ、行こっか!

取り調べ室を出ると、威風さんと仏さんと
共に紅葉さんのところへと向かった。