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朝焼けに目を瞑り

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朝焼けに目を瞑り

1 - 朝焼けに目を瞑り

2018年09月19日

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それは、小さな小さな光だった。

きっとまだ誰も、その存在に気づく事すら しない。

それほど迄に、小さな光。

不在着信

不在着信

すっかり閑静になったこの街は、私を置いて 空っぽになって仕舞った。

何時からだろうか。 こんなにも寒がりになったのは。

不在着信

不在着信

貴方

大丈夫だよ。

貴方は、またそう笑ってくれるのでしょうか。

貴方は、まだ此処に居てくれるのでしょうか。

時折、怖くて怖くて堪らない時がある。

もう貴方に会うことは出来ないのかと。

それはもう、とてもやりきれない悲しみで。

不在着信

不在着信

不在着信

不在着信

こうして何度も何度も繋がらない電話を かけるのも、いつの間にか慣れてしまった。

貴方が遠い国へいってから、随分と長い歳月が経った。

私は歳をとった筈なのに、 思考は幼くなるばかりで。

貴方に会えずに今日も今日とて、こうやって駄々をこねている。

不在着信

不在着信

味のしない煙草を咥えながら、一人、暗がりな煉瓦道を歩いた。

パン屋のショーウィンドウには埃が積もっている。

はて、彼処の娘は店を継ぐことはしなかったのだろうか。

不在着信

不在着信

………

変わったものだ。

不在着信

不在着信

不在着信

不在着信

貴方

もう、大丈夫だって

そんな声すら聞こえる気がした。

分かりきっているさ。

分かりきっている、つもりさ。

小さな墓石に、花を添えた。

もうすぐ此処を出るんだ。

此処は任せたよ。

朝4時、誰も居ない閑静なこの街に、 金木犀の香りがした。

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