誠泰
紬と出会ったのは
誠泰
今から随分前のことでした
誠泰
私が今1700を過ぎた辺りなので
誠泰
800年程前ですかね
芽衣
えっ!?
芽衣
1700!?
翔
そんな驚くな
翔
俺らはこれが普通だ
芽衣
普通って......
芽衣
芽衣
次元が違いすぎて
芽衣
なんと言っていいのやら
誠泰
ふふ
誠泰
しかし
誠泰
長生きもそんなにいいものではありませんよ
誠泰
別れの方が多いですし
芽衣
あ......
芽衣
(そうだよね)
芽衣
(人より永く生きるって)
芽衣
(辛いことの方が多いよね)
誠泰
気にしないでください
誠泰
翔の言った通り
誠泰
昔の話ですから
誠泰
誠泰
紬は
誠泰
病気にかかる体質を差し引いても
誠泰
とても活発な方でした
誠泰
世間ではお転婆というのでしょうか
誠泰
彼女が木から落ちてきた日のこと
誠泰
今でもよく覚えています
翔
翔
は?
翔
木から?
誠泰
ええ
誠泰
桜の木に登って
誠泰
高いところから景色を見ていたようなのですが
誠泰
手が滑ってしまったらしく
誠泰
真下にいた私に向かって落ちてきたのです
芽衣
なんで木の下にいたんですか?
誠泰
桜が綺麗だったので
誠泰
花見でもしようと思ったのです
誠泰
まさか人がいるなんて思いもしませんでしたけどね
翔
想像以上だな
翔
俺たちの知る母さんは
翔
もっと落ち着いていた気がするが
誠泰
子供を持ってからですよ
誠泰
それまでは本当にお転婆だったんですから
芽衣
芽衣
どうして仲良くなったんですか?
誠泰
彼女の目と髪色で
誠泰
一目で特異体質だと分かりました
誠泰
それでも元気な彼女に
誠泰
段々と興味が湧いてきたんです
芽衣
特異体質って
芽衣
目が紅いんだよね?
芽衣
翔みたいに
翔
ああ
翔
それに母さんは
翔
白い髪に黒髪がメッシュみたいになってたんだよ
翔
俺とは違ってな
誠泰
そうなんです
誠泰
彼女はどんな特徴があって
誠泰
どんな方なんだろうと思い
誠泰
沢山話を聞くようになりました
翔
つまり
翔
父さんの方から押していったと
誠泰
そうとも言えますね
誠泰
しかし
誠泰
紬もなかなか押しの強い方でして
誠泰
どちらが夫婦関係までを築いたかと聞かれると
誠泰
なんとも言えませんね
芽衣
いいですね
芽衣
愛って
誠泰
ええ
誠泰
誠泰
その後
誠泰
折悪く流行病にかかってしまった紬は
誠泰
段々病状が悪化する中でも私たちを気遣ってくれました
誠泰
体が弱っているにも関わらず
誠泰
血をくれるとも言ってくれました
芽衣
っ.....
芽衣
(自分のことより人を気遣えるって)
芽衣
(病人なら尚更できることじゃない)
芽衣
(やっぱりすごい)
誠泰
断りましたけどね
誠泰
流石の吸血鬼でも
誠泰
病人から血を貰うほど飢えていませんので
誠泰
誠泰
彼女の最期に立ち会い
誠泰
見送ったのは私です
誠泰
誠泰
不死の存在である私たちにはあまりない経験でしたので
誠泰
胸を締め付けられるような
誠泰
何かが無くなってしまったような
誠泰
この感情がなんなのか分かりません
誠泰
誠泰
ですが私はこれでいいと思っています
芽衣
え...?
誠泰
紬を愛していた証拠だと思っているので
誠泰
この感情が大事なものだとは分かっています
誠泰
誠泰
これでいいのです
芽衣
あ.....
芽衣
(そんなに大きな感情を抱えて)
芽衣
(800年も......)
芽衣
(本当に愛してたんだ)
誠泰
誠泰
あまり人に話したことがない話なので
誠泰
伝え方が拙くなってしまいましたね
翔
翔
すごいな
芽衣
うん
翔
俺も初めて聞いたが
翔
そんな話だったとは
誠泰
驚きですか?
翔
ああ
誠泰
誠泰
実は
誠泰
彼女を見送る時
誠泰
私以外にもう1人いたのです
翔
え?
誠泰
本人は陰ながらのつもりでしょうけど
パタ...パタ...パタ...
誠泰
誠泰
おや
誠泰
いいところに帰って来たようです
芽衣
え
芽衣
誰ですか?
誠泰
紬を看取った
誠泰
本人です
ガラッ







