テラーノベル
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翌日、橙は学校に来なかった。
緑 。
そう口にした俺に、クラスメイトの誰も反応しなかった。
誰も"橙"という存在に、興味を持っていないように見えた。
いや、最初から「関わらない方がいい」という空気が、橙を孤立させていたんだ。
昼休み、窓際の席から外をぼんやり眺める。
昨日、カフェで手を握ったときの橙の温もりが、まだ指に残っていた。
それだけに、何も言わずに来ないことが、余計に気がかりだった。
放課後、意を決して彼女の家の近くまで行ってみた。
橙から住所を聞いたことはなかったけど、以前ポロッと話していた「駅から10分くらいの古いアパート」が手がかりだった。
宛もなく歩いていると、ふと、猫カフェで見たことのある白猫が路地の奥で座っているのが見えた。
その猫が向かった先に、ぽつんと建つ、古びた二階建てのアパートがあった。
インターホンを押すか、迷った。
けど、ここで引き返したら、きっと後悔する。
_ピンポーン
少しして、扉がゆっくり開いた。
そこにいたのは、すっぴんで、髪もぼさぼさで、普段の橙からは想像できないほど弱った表情の彼女だった。
橙 。
緑 。
橙 。
そう言って、彼女はその場に座り込んだ。
橙 。
橙 。
緑 。
橙 。
緑 。
俺は彼女の隣にしゃがみこんで、ゆっくりと語りかけた。
緑 。
緑 。
橙は何も言わずに、ただうつむいていた。
風が吹いて、どこからか甘い匂いが漂っていた。
それは、カフェでよく感じた焼き菓子の匂いと、少し似ていた。
橙 。
緑 。
橙 。
橙 。
彼女は恥ずかしそうにキッチンを指さした。
そこには、少し焦げたクッキーが並んでいた。
俺は思わず笑った。
緑 。
緑 。
橙は、ほんの少しだけ照れたように笑った。
その笑顔は、昨日よりもっと、あたたかかった。
コメント
1件
橙さんが作ったクッキーだと!? ずるいぞ緑さん!!