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それは突然だった

予兆もなく

その時が現れた

もうこんな時間…

ロボロ

そうっすね

ロボロ

もう暗くなるんで送っていきますよ

チーノ

何言うてんねん

チーノ

俺が送ったるて

ロボロ

いや先輩は明日も学校あるんで早く帰った方がいいすよ

チーノ

お前もやろうがあほんだれ

はあ

私一人で帰るから

病院を出て、今から帰ると母に連絡した

いつもならすぐに既読がついて

可愛いウサギのスタンプと共に

「気を付けて帰ってきてね」

と返ってくるのだが

一向に既読にならない

兄さんに電話をかけたが出ない

家に誰もいないかも

チーノ

危なくねーか?

珍しい事だけど、心配することじゃない

チーノ

そっか

ピーポーピーポー

救急隊員

救急車が通ります!

救急隊員

通行人の人は道を塞がないでください!

1台の救急車が病院の前に停車した

チーノ

なんやろ…

私たち邪魔になるよね

あっちに行こう

そう言ってこの場を後にしようとした時

どこからか聞き覚えのある声がした

…さ…!

…さん

か…さ…

母さん…!

…!

兄さん…?

ロボロ

え?

救急車の中から兄さんの声が…

医者

すみません、離れてください!

あっ

病院からお医者さんが慌ただしく出てきて、私の肩にぶつかった

そんな痛みなんて気にせず、私は救急隊の人の話に聞き入った

医者

患者の情報は?

救急隊員

――――さん、46歳

救急隊員

自宅で首を吊っているところを息子さんが発見されたそうです

救急隊員

意識不明の心肺停止です

医者

すぐにCPUに移動を!

救急隊員

はい!

医者

ご家族の方は?

救急隊員

発見された息子さんと、あと娘さんと旦那さんがおられるそうです

医者

待て

医者

見たことがある…

医者

名前をもう一度教えてくれ

救急隊員

え?あぁ…

救急隊員

桐山理子(りこ)さんです

医者

桐山…

医者

医者

桐山医院の夫人の方だ!

救急隊員

そんな…

救急隊員

今すぐ桐山医院に連絡を!

医者

頼む

……

…え?

桐山、理子

いつも私の味方をしてくれて

見守ってくれて

……

お母さん

お母さんだ…

この中にいるのは

私の、お母さんだ…

違う

絶対違う

そんなわけない

そんなわけ…

チーノ

茜…?

立ち尽くしていると

担架を持った救急隊員と

シャオロン

母さん…!!

兄さんが、出てきた

にい、さ…

兄さんは私に目もくれず

病院の中に入って行った

頭が動かない

あれは本当にお母さんなの?

違う

兄さんはバカだから

自分の母親と他人を間違えてるのね

きっとそう

私がしっかりしなきゃ

本当に

本当にお母さんなのか

確かめなきゃ

私は兄さんのあとを追った

チーノ

あ、茜!

先に帰ってて

ロボロ

でも…

ロボロ

今のって…

違う!!!

ロボロ

チーノ

違う

私は、あとを追うから

みんなは

もう

帰って

そう言い残して再び病院の中に入った

兄さん…!

シャオロン

……

シャオロン

兄さ…ん

シャオロン

……

……

ほんと…に

シャオロン

母さんが

シャオロン

……

シャオロン

なんで…

待って

ちゃんと説明して

何があったの

兄さん…!

シャオロン

……

黙ってちゃ分かんないよ!

シャオロン

言ったんや

シャオロン

"あいつ"が言ったんや

シャオロン

全部

兄さんは目を虚ろにしながら淡々と話し始めた

兄さんとお母さんは私の試合に来ようとしていたこと

途中で父さんと出会って

私の高校の棄権による相手校が不戦勝したことも

兄さんも高校時代に私と同じやり方をされたことも

母さんはひどく落ち込んでいた

自分は母親なのに

私たちを守れなかったと

心の中では父さんは子供達のことを何とも思っていないんだと分かってた

けど

認めたくなかったと

帰ると言って母さんだけ家に帰ったらしい

兄さんは試合会場に行って私を探したらしいが

母さんのことが心配になって家に帰ると

……

シャオロン

母さんな

シャオロン

遺書書いとった

シャオロン

「ごめんなさい」

シャオロン

「私を許して」

シャオロン

そう書いてあった

……

シャオロン

なあ茜

シャオロン

俺、今この気持ちを抑えられんねん

シャオロン

父親が許せない

シャオロン

…顔を合わせようものなら

シャオロン

殺意がわく

もう

どうにかなってしまいそう

思考回路が働かない

私は何も言えず、その場に立ちつくした

医者が母の死を伝えに来るまでは

紗結

桐山さん

紗結

どうぞ、こちらに

…はい

七瀬さんに呼ばれ

社長室に入ることになった

母が亡くなってすぐだったため

最初断ったが

兄さんが「あとは俺がやる」と行かせてくれた

紗結

桐山さ…

すみません七瀬さん

苗字で呼ぶのはやめてください

私はもう

桐山の性を名乗るつもりはないです

紗結

…そう、よね

紗結

それじゃあ茜さんと呼んでいいかな?

お好きなように

紗結

すっかり戻ってしまったね

紗結

いいえ、何も

紗結

……

紗結

今回の件、茜さんはどうしたい?

どうしたいとは?

紗結

私はあなたがしようとすることに全力で協力したい

そうですか

では、私と兄の戸籍を桐山家から消してください

そして

父がいるこの町から

私たちを遠い場所に引越しをさせてください

父が私たちを探せない、遠い遠い場所へ

もう戻れない

紗結

……

紗結

いいの?

紗結

あなたにとってこの町は

いいんです

今はもう

何も考えられません

兄のために、私のために

七瀬さんの力を貸してください

紗結

…そう

紗結

分かった

紗結

茜さんとあのパーティーで出会えたのは何かの縁よ

紗結

精一杯協力させてもらうよ

ありがとうございます

紗結

書類はこちらで作成しておきます

紗結

茜さん、今日はどうする?

紗結

ホテルか何か2部屋取りましょうか?

あ…

そうだ、泊まる場所

私と兄にはもう帰る場所がない

帰るはずだった場所は

母の死に場所になってしまった

かと言って、七瀬さんに頼りきりは申し訳ない

兄の一人暮らしの家に泊まります

紗結

でも遠いんじゃない?

いえ、大丈夫です

紗結

分かった

紗結

気をつけて

はい

心配そうな顔をする七瀬さんに

ぺこっとお辞儀をして

社長室を出た

紗結

……

紗結

…はあ

キィィ…

大丈夫か?

紗結

大丈夫じゃない

せやろうな

紗結

桐山さん、一体何をしてしまったの…

あの桐山医院の先生やろ?

あいつ、元からいけ好かなかったんよなー

紗結

こら

紗結

誰が聞いてるか分からないでしょ

紗結

あなた

ゾム

へいへい

ゾム

大輝(だいき)と紡(つむぎ)は保育園で寝てるよ

紗結

ありがとう

紗結

…ふぅ

ゾム

疲れとるやろ

紗結

まあね

紗結

でも、これからまだやらなきゃ

紗結

桐山医院のことと、桐山夫妻の関係について調べて

紗結

警察にも動いてもらわなきゃ

ゾム

あの子、大丈夫やろか

紗結

そうね

ゾム

目に希望もなかった

ゾム

パーティーの時より表情暗くなってないか?

紗結

……きっと、茜さんとシャオロンくんは殺されたのよ

紗結

最愛の母親を

紗結

父親という血の繋がった家族に

紗結

お父さんとパパは、こんな時どう行動するのかな

ゾム

…紗結と同じことすると思う

紗結

そうよね…

紗結

茜さん

紗結

…大丈夫かしら

{wrwrd}ばいばい恋心

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