テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
蘭side
恋醒と美琴に見送られ 私は3年2組の教室へと出発した。
静まり返った階段を一段登るたび 鼓動が速くなっていく。
ドアの前に辿り着いたときには 心臓が飛び出しそうなほど 脈打っていた。
桃瀬らん
ぎゅっとワイシャツを握ると あの夏の日の情景が蘇ってくる。
スカートから覗く足も 微かに震えていた。
桃瀬らん
初めて告白予行練習した時から 3ヶ月が経ち、冬の足音も 聞こえてきた。
そして私たちを取り巻く環境も 日々変わっていっている。
桃瀬らん
水泳の飛び込み台に立った時のように 私はゆっくりと深呼吸する。
頭の中で「位置について、よーい」 と掛け声を響かせ 次の瞬間に勢いよくドアを開く。
桃瀬らん
紫龍いるま
紫龍いるま
ぶはっと吹き出し 威榴真が弄っていたスマホを 机の上に置いた。
桃瀬らん
妙に納得しながらずんずんと窓際の 威榴真の席を目指した。
威榴真も席を立ち 私が来るのを待ってくれている。
こうして一対一で話すのが 久しぶりすぎて見られていると 意識するだけで顔が赤くなっていく。
紫龍いるま
残り3歩くらいまでになったところで 威榴真が揶揄うように聞いてきた。
私は立ち止まり、 真っ直ぐに威榴真の目を 見つめながら微笑む。
桃瀬らん
紫龍いるま
緊張で声がうわずってしまったし 上手く笑えなかった気がした。
それでも威榴真はいつも通り 頷いてみせてくれる。
私は鼓動がこれでもかと高鳴るのを 感じながら威榴真の瞳を捉える。
桃瀬らん
震える声で想いを伝える。
目を見ながら返事を待つが 威榴真はただ私を見つめてる だけだった。
桃瀬らん
威榴真の名前を呼ぼうとした瞬間 威榴真の方が僅かに先に言葉を発した
紫龍いるま
紫龍いるま
紫龍いるま
桃瀬らん
紫龍いるま
桃瀬らん
待ってよ、なんで ... ?
桃瀬らん
これも予行練習だって勘違いされた? 回らない頭でぐるぐると考えてる内に 威榴真は背を向けて歩き出してしまう
桃瀬らん
桃瀬らん
気がつくと私は咄嗟に 威榴真を追いかけ手首を掴んでいた。
何とか足を止めることはできたけど 振り返ってはもらえない。
それとなく引っ張ってはみるものの 私の力ではぴくりとも動かなかった。
桃瀬らん
振り絞った声で 微動だにしない背中に叫ぶ。
桃瀬らん
桃瀬らん
桃瀬らん
紫龍いるま
威榴真は弾かれたように振り返り 目を丸くしてこちらを見ている。
反射的に逃げたくなりながらも 私はぐっと唇を噛んで踏み止まった。
桃瀬らん
言いながらどんどん涙が溢れてくる。
悲しいから泣いてるのか それとも感情が昂って止まらないのか
はっきりしているのは威榴真に 嫌われたくないという想いだけだ。
だから、想いの限りを訴える。
桃瀬らん
激しく脈打つ鼓動に交じり 自分とは別の動揺した 息継ぎが聞こえてくる。
威榴真は何度か口を開いては 閉じてを繰り返し言葉を 探しているようだった。
1秒が永遠にも思えて 私は気が遠くなりそうになる。
全身から力が抜け掴んでいた 威榴真の手も離してしまった。
桃瀬らん
人がいい威榴真のことだから どうやったら傷付けずに断れるか 考えているのかもしれない。
いっそのことこれも 予行練習だったのだと 嘘をついた方が威榴真にも 負担にならないだろうか。
もう一度出直してまた作戦を 練ることも視野に入れるべきだ。
桃瀬らん
自分のためと言いながら 本当のところは自分が 傷付くのを避けたいだけだ。
自分の弱いところ、ずるいところを 私は嫌と言うほど思い知った。
だからもう自分を 誤魔化すことは出来ない。
何よりここで逃げてしまっては 今までの努力が全て水の泡になる。
桃瀬らん
ぐっと唇を噛み締め 私は逸らした視線を威榴真へと戻す。
威榴真も心が決まったのか そこにはもう動揺した様子はなかった
強い意志を宿らせたような眼差しで その瞳に私を捉えている。
紫龍いるま
顔をくしゃっとさせ 威榴真は泣き笑いのような 表情を浮かべていた。
桃瀬らん
呆然と見つめ返す私の頭に 威榴真の手がぽんと置かれた。
私が不安と期待に 揺れる瞳で見上げると そのままぐいっと腕を引っ張られる。
桃瀬らん
紫龍いるま
威榴真の震えた声が 頭上から降ってきた。
頭の後ろと背中には 暖かい手が触れていて 目の前には威榴真の肩がある。
桃瀬らん
ようやく抱きしめられていることに 気づき涙で濡れた頬がまた熱くなる。
桃瀬らん
私の耳に威榴真の鼓動が 聞こえているように威榴真にも 私の鼓動が伝わっているだろう。
こうして近くにいると 別々になっている音がだんだんと 混ざっていくような気がした。
紫龍いるま
これまでに聞いた中で 1番優しい声だった。
私が小さく頷くと ぎゅっと威榴真の腕の力が強くなる。
紫龍いるま
桃瀬らん
その日、私と威榴真は初めて 手を繋いで帰った。
幼馴染としてではなく 彼氏彼女として。
コメント
2件
良かった( ߹ㅁ߹) 付き合った( ߹ㅁ߹)