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月見 晴翔

自殺だな

刑事

__は?

刑事

いや、おかしいだろう

刑事

凶器がないんだぞ、どうやって死んだ?!

出雲 治

まあまあ、落ち着いてください

出雲 治

今から晴翔さんが解説してくださいますから

月見 晴翔

……は、解説しなきゃダメかい

出雲 治

そりゃ、まあ

月見 晴翔

しょーーがないなあ

心底嫌そうな顔でそう言うが、しょうがないと割り切ることにした月見は、カメラの映像、つまり証拠を刑事からひったくる。

そして何を察したか、出雲は東向きの窓を開けた。

月見 晴翔

よく見たまえ、この窓は東向きだ

月見 晴翔

つまり、朝日が入ってくる

刑事

……あ?そんなの当たり前だろう、特別遮るものも無さそうだしな

出雲 治

だね。そこがミソだよ

刑事

はあ、東向き……

刑事は顎に手を当て、まじまじと考える。

東向きの窓に、朝日。

そんな些細な事から、何が導き出せるのかと、未だ疑った顔で。

刑事

……!んな、まさか、

その反応から、真実に気付いたのか素っ頓狂な声を上げてがばりと頭を上げた。

月見 晴翔

そ、君が考えてる事が真実だろうね

月見 晴翔

この映像を見たまえ、綺麗に朝日が入ってきているだろう

月見 晴翔

だのに、犯人の影は全く入っていない

出雲 治

冬ですから、この時刻はまだ太陽が顔を出してすぐの時刻でしょうね

出雲 治

影は長いはずですし、映っていないのはどうも不自然

淡々と出雲が述べる。

さほど驚いていない様子で。

刑事

じゃ、じゃあ加害者なんていなかったって事か?!

月見 晴翔

当たり前でしょそんなの

刑事

くっ……だ、だが!

刑事

凶器はなんだ!自殺だと尚更、凶器の行方が分からないではないか

刑事

このままだとお前達、まさか凶器なんてものもない、なんて言い出すんじゃないだろうな!

月見 晴翔

鋭いね、まさにその通りだよ

刑事

は?!んなわけあるか!

月見 晴翔

んなわけあっちゃうんだよねえ、これが

月見 晴翔

と言っても、正確には無くなった、が正解だけど

刑事

は、はあ?どういう事だ、分かりやすく言ってくれ…

出雲 治

うん、見えなかったのかもしれないけど

出雲 治

冷凍室にあったんだよねえ、不自然な大きさの氷

刑事

いや、それくらいは確認している

刑事

だがそれがどう関係するのかってところでな…

月見 晴翔

うん、刑事サンも見たろうけど、外には氷柱があったんだ

月見 晴翔

あの氷柱こそが凶器だ

刑事

……!

呆気に取られた表情で、出雲と月見を交互に見る。

月見 晴翔

昼に取っておいた尖った氷柱を、犯行まで冷凍室にしまっていた

月見 晴翔

その時に、死にやすいように氷を削ったり割ったりしたんだろう

出雲 治

氷柱ならとけてなくなる、元はもちろん水だからね

刑事

だから、この奇妙な暖かさの暖房が付いていたのか…

月見 晴翔

決定的瞬間はないものの、確実だね

月見 晴翔

いや、もう少し早めに調べていれば何かしらあったのだろうけど

月見 晴翔

…兎に角、納得してくれたかい?

刑事

嗚呼、ここまで言われればな

月見 晴翔

分かってくれたみたいで良かったよ

出雲 治

さて、これにて事件解決かな?

刑事

嗚呼、すまなかったな

出雲 治

うん?なんの事かな

刑事

いや、探偵の君達に突っかかって悪かったよ

出雲 治

ああ、ははっ

出雲 治

面白いね、君

月見 晴翔

そう正直に認めなくても良かったのに

月見 晴翔

こいつは、出雲は刑事サンに言わせるようにしてたんだよ

刑事

……はあ、それでも刑事の俺がカッカするもんじゃねえと思ってよ

出雲 治

わあ、君思ってたよりいい刑事だね?

出雲 治

名前、というか名刺交換がまだだったね?

刑事

……!これは失敬

スッと胸元から名刺を取りだし、出雲へ差し出す。 それに応じて出雲も取り出し、無事交換された。

朝霧 司

俺は朝霧司、また依頼するかもしれねえ、その時はよろしく頼む

出雲 治

嗚呼、もちろん、いつでも連絡してね

出雲 治

君達が解けない程の難事件の捜査をする時はさ

くつくつ、と機嫌良さそうに笑う出雲。 そんな出雲を横目に、さっさと帰り支度を済ませている月見。

月見 晴翔

さーてと、じゃあ僕らは帰ろうかな

朝霧 司

嗚呼、今回は本当に助かった

出雲 治

あはは、じゃあまたね、司刑事

朝霧 司

気を付けて帰ってくれ

楽しげな出雲と、それに続く月見。 朝霧刑事は、結局彼らの背中が見えなくなるまで後ろから見守っていたようだった。

二人並んで歩く暗い道。

もうすっかり日は暮れて、三日月が見えている。

山と言っても麓の方で、少し歩けばすぐ街に出るものだから、それといった危険は少ない。

二人ならば、尚更。

静かな中、先に口を開いたのは出雲の方であった。

出雲 治

晴翔さん、どうします?

出雲 治

このまま歩きで事務所まで戻りますか

月見 晴翔

嗚呼、そうだね……

月見 晴翔

どうせなら、夕食を食べて帰ろう

月見 晴翔

タクシーを呼ぶのも、それから考えればいい

出雲 治

そうしましょうか

出雲 治

それじゃ、どこにしましょうか

月見 晴翔

居酒屋でいいんじゃ?

出雲 治

えー、もっとご褒美的に、イタリアンとか!

月見 晴翔

じゃあファミレス

出雲 治

んー、まあいいですよぅ

出雲 治

晴翔さんてばほんと、贅沢が苦手ですね?

月見 晴翔

しょうがないだろう、そもそも食事の場に特段こだわりなんて…

出雲 治

ふうん、そうですかー

出雲 治

…でもまた、私と食事を楽しむために出掛けましょうね

月見 晴翔

んー、忙しくなくなればな

そんな他愛もない話をしながら街へ出た。

ちょうど夕食時でもあるからか混み始めているファミレスだが、難なく席を取れた。

二人でメニューを見て悩み、数分して店員を呼び、注文を済ます。

出雲 治

おや、パスタですか?

出雲 治

珍しいですねえ、晴翔さんは和食派だと思っていたのですが

月見 晴翔

んー

月見 晴翔

そんな日もあるだろう

月見 晴翔

しかも、僕は別に和食派じゃないよ

出雲 治

ふうん、貴方についてまだまだ知らない事ばかりです

出雲 治

もっと沢山教えてください、貴方のこと

月見 晴翔

……はあ、そういうのは女の子にでも言ってあげなよ

やれやれ、と困った様子で項垂れる月見。

そんな月見を見て、ニコニコする出雲。

そして、その二人を懸念して何も言わずに料理を置いていく店員。

出雲 治

嗚呼、料理が来てますよ

月見 晴翔

……うん、そうだね

月見 晴翔

パスタは早めに食べないと

どこか上の空の月見に、出雲は怪しげに口角を歪めて声を発する。

出雲 治

_もしかして、私が貴方に言ったこと気にしてます?

貴方に言ったこと、とはおそらく「貴方のことをもっと知りたい」という相手が相手なら告白まがいな発言であろう。

月見はそんな馬鹿げたことを言う出雲に心底呆れた、という顔で反論する。

月見 晴翔

そんな訳ないでしょ

月見 晴翔

うん、ただね、今日の事件だよ

出雲 治

へえ?会社のことですか?

月見 晴翔

嗚呼、女性が何故自殺まで追い込まれたのか

月見 晴翔

それに、彼女が勤めていた会社は所謂__

出雲 治

ブラック企業、てやつですか

ゆっくりと縦に首を振る。

事件の内容はただの自殺。

それでも、それまでの経緯に問題があるのは無視できない。

出雲 治

成程、不思議ですね

月見 晴翔

そうかな、大方上司の無茶な要求に耐えられなくなったんだろうけど

出雲 治

それでも自殺までいきます?

出雲 治

それこそ、誰かが彼女に対して「自殺の方がマシだ」

出雲 治

なんて思わせる程の悪行を行ったかもしれませんよ

月見 晴翔

んまあ、それはそうかもしれない

月見 晴翔

だから、後は労基に投げよう

出雲 治

……ははっ、賢明な判断です

出雲 治

流石、晴翔さん

探偵事務所の二人は、国のためではなく、人のために活動する。

正義のヒーロー、とはいえずとも、受けた依頼はやり遂げるし、解決してみせるという信念がある。

その信念が、出身も年齢も違う二人を結び付け、動かす。

出雲 治

あ、デザート食べましょ、デザート!

月見 晴翔

うん?いいけど…お前甘いものそんな好きじゃなかったろう

出雲 治

そんな日もありますよぅ

出雲 治

今日を頑張ったご褒美です!

相も変わらず人に好かれる笑顔でハキハキとものを言う。

ファミレスにしては洒落ている季節のデザートを頼むために、フロアにいる店員に声をかけた。

__to be continued

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