鬱病

⚠︎ 鬱表現、有 カナアメ要素多分、有 暴力、有

そう俺に問いかける兄弟のカナダ。

大丈夫なのにちゃんと喋れない。

こんな鬱病の俺に優しく接してくれる奴なんてカナダくらいしかいない。

他の奴らには見向きもされない。

そう言って俺に薬と水を差し出す。そうすぐには受け取れない。俺は薬が苦手だから。

カナダも俺が薬嫌いなのを知っているから、あっちから無理矢理飲ませようとはしてこない。

じっとして待っている。

でも、飲まなければ。俺は勇気を振り絞り、一気に薬を口の中に入れて水で流し込んだ。

粉薬だから味がしてすごく不味い。

薬を飲んだ俺を見てカナダは、偉いねと言うかのように俺の頭に手をぽんと置き、俺にキャンディーを渡した。

コーラ味のキャンディーなんて珍しい。そんな事を思いながら、袋からキャンディーを取り出し口の中へ放り入れた。

口の中に入った瞬間、コーラの風味で口がいっぱいになった。

カナダがどう？と聞いてくる。

ふんわりとした笑顔を浮かべて「あ、ちょっとリビング行ってくるね」と言い部屋を出た。

俺が喋らない限り部屋はしんと、したまま。独り言なんて言わないから、エアコンの音くらいしか聞こえない。

そういえば、今何時なんだろう。

俺は時計に目を向ける。

にしては暗いな….あ、夜か。

鬱病の所為なのか夜と昼の区別もつかなくなってきている。

まあ、ずっと引きこもっているし。

引きこもっているから、筋肉もついていない。それどころか、飯も食べなさ過ぎて若干痩せ細っている。

そんな事考えていると腹がぐうと、なった。

今日はさっきカナダから貰った飴以外に何も食べていない。当然、腹が減るわけだ。

自分の胃袋が飯を欲しがっている。本当なら何か腹が溜まるものが食いたいが、そんな余裕なんかない。

だっていつも飯を作ってくれるのはカナダだから。カナダは俺の為に毎日頑張ってくれている。

俺だって料理くらいは作れる。だけど…

なんでこんな事になってしまったのだろう…

…そうだ、全てはアイツの所為だ

こんな事になったのも全て…

親父の所為だ

ベチンッ！

なんで、ぼくのほっぺ引っ叩くの…？

酷いよ…お父さん。

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パリン！

えっ…？

お父さん何して…？

お父さん、怖いよ…

また話してる。どんな奴がタイプか。

このくだり、何回も繰り返し見てるから分かる。

そう、俺だ

日本の言葉を聞いた二人はやっぱり、と言いながらげらげら笑っている。

胸がぎゅうと、縮まる。すごく苦しい。初恋の人にも嫌われて。

もう生きたくない。辛い。

もう、死にたい。

俺は高校生くらいから鬱病になりかけていたのか。

そうだ、思い出した。

親父から虐待を受けて、同級生や、学校にいる奴らからも虐められて。もう耐えられなくなって鬱になってしまったのだ。

でも、そんな俺の事を小さな頃から支えてくれたのが

カナダだ。

カナダは、いつどんな時も俺に付き添ってくれて、辛い時は慰めてくれて…いつも俺に優しくしてくれた。

同級生からつけられた傷も気持ち悪いなんか言わないで、心配しながら手当てをしてくれた。

親父とも違って、カナダが作る料理はすごくおいしいし、俺の為を思ってたくさんの飯を作ってくれる。

俺に暴力を振るわないし、暴言も言わないし。俺の為を思って色々してくれる。毎日、毎日忙しいのに色々な事をしてくれる。

カナダは俺の命の恩人かもな。

なんだか、泣きたくなってきた。昔の事思い返すと、すごく辛い。自分の事なのに心が痛い。

忘れたい。今まであった事全て記憶から消したい。あんな事思い出しても自分が辛いだけ。他に何にも起こらない。

そうだ寝ればいい。寝れば何もかも忘れる。腹が空いた事も、今思い返した全ても、寝れば忘れる。

俺は目を閉じて、無理矢理眠りについた。

いい材料、何かあるかな。僕は冷蔵庫や引き出しの中を探る。

ホットケーキミックスがあって牛乳もあるし、パンケーキ作れそう。パンケーキならぼぼ毎日作っているから上手に作れる。それに、兄さんもパンケーキは好きなはずだ。

僕の手作りした蜂蜜とバターを一緒に乗せたら絶対に美味しい。それは確信している。父さん達に焼いてあげたら蜂蜜との相性がいいって言ってたし。

そうなればパンケーキを作るしかない！

僕は、兄さんがパンケーキを食べて美味しいって笑顔で言っているのを想像しながらパンケーキを作り始めた。

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僕は出来立てのパンケーキを兄さんのところに持って行く。出来立てだから絶対に美味しい。

楽しみだなぁ。

ガチャ

あ…兄さん寝てるのか。残念、出来立て食べてもらえないなんて。

まあ、流石にこの時間で起きてるわけないよね。9時過ぎてるし。

蜂蜜とバター乗っけちゃったし冷凍保存できないから僕が食べよ。

お、起こしちゃった…？リビングに戻れば良かったかも。

起きてたんだ。そういえば兄さん、今日ご飯食べてないじゃん。お腹空いて寝れないよね。ごめんね、ご飯用意できなくて。

でも、今持ってきたから。いっぱい焼いてきたしお腹、溜まるはず。

確かに毎日忙しい。僕と兄さん二人分のご飯を作っていると学校にも間に合わない。だけど、兄さんの為なら遅刻しても別に構わない。

だって、一番辛い思いしているのは兄さんだから。

吹き出しながら兄さんが言う。

そうだ、兄さんは料理凄く上手なんだ。父さん達と会いたくないからリビングには行かないんだ。

兄さん昔、虐待受けてたからね。今もだけど…

パンケーキ…そうだ忘れていた。冷めてしまったかもしれない。

すると兄さんは、パンケーキを一口サイズにして口に入れた。

感想は？感想は？と胸騒ぎが止まらない。

深呼吸して心を落ち着かせ感想を聞いた。

にこっと笑顔を浮かべ兄さんはそう答えた。良かった、美味しいって言ってくれた。こっちまで笑顔をなってしまう。

兄さんの笑顔なんていつぶりだろうか。久しぶりに見たなぁ。僕が小学生の頃はずっとにこにこしていたのに。

いつからから、急に部屋にこもって部屋から泣き声が漏れて聞こえていた。それで父さんに泣くなって怒鳴られてた。

あの時は本当にできる事が何もなくて、ただ隣にいて慰める事しかできなかった。

兄さんの笑顔を見ると昔に戻ったような気がして、少し嬉しくなる。

兄さん、昔は一口が大きかったのに今ではこんなに小さい。兄さんじゃないみたいだ。

今の兄さん一口は小さいけれど、食べるスピード早いのは昔と一緒。

そういえば、明日は学校。もうすぐで9時半だ。もう寝よう。

あ…洗い物。

パンケーキが乗っていた皿はもうテーブルにはなかった。カナダが持っていったのだろう。洗い物ぐらい俺がするのに。

明日、カナダは学校か。確か弁当だよな。

いつも飯を作ってくれているんだ、俺だって恩返ししないといけない。

よし…

今から弁当作るか