001×456でアイドルﾊﾟﾛ

コンビニでチョンベと別れたあと、泥酔したギフンは覚束無い足取りで帰路に着いていた

おもむろにスマホを取り出し、自撮りをする

カシャッ

その写真をSNSに投稿し、スマホをしまって歩みを進める

ブーッ

スマホが振動した

ギフンがアイドルアカで自撮りを投稿するのは日常茶飯事なのだ

投稿についている好意的なコメントを読む度に「自分以外にこんな写真を見せないで欲しい」と思ったり。

思わず笑みが浮かぶ

いちファンであるイノを突き動かしているのは純粋な好意だった

車内で先の控え室での会話の真意も聞けばいい。

嬉々として車の鍵を手に取って家を出た

実のところアイドルを始める前は貧困に苦しめられていたが、現在はそうでもない

移動手段にタクシーが選択肢として挙げられるほどに財布は潤っている

タクシーを呼ぼうとスマホの電源を押すと、さっき起動させたままだったカメラが顔を映した

ギフンの顔と、その後ろ＿＿＿ギフンの液晶画面の光に照らされた顔との2つを。

驚きで声も出なかった

暗くてよく表情は見えないが、どうやら顔見知りのようだ

酔いのせいか先程の驚きのせいか心臓がいまだに早鐘を打っている

発汗しているのは酔いのせいではない

ちゃんと笑えているだろうか。恐怖で顔が引き攣っているような感覚がした

とりあえず後をつけてきたわけではないことが発覚し、安堵する

千鳥足でイノと距離をとる

手首を掴まれる

強い力で掴まれている。ビクともしない

イノの手に力が篭もり、手首がギリギリと締め上げられていく

完全に酔いが冷めた脳はこれが緊急事態だと警鐘を鳴らしている

イノのギラギラとした剣呑な瞳でいやでも分かる

恐怖で詰まる喉でやっと絞り出した声は鼻声だった

力任せに腕を振ると、先程の拘束が嘘のように簡単に解けた

ただただ真顔で突っ立っているイノに侮蔑の視線を向け、背を向ける

先の恐怖が怒りや情けなさに変わり、歩きつつタバコを取り出す

タバコを口にくわえたままポケットをまさぐる

刹那

背中に強い衝撃が走った

両手をポケットに入れていたため受身が取れずそのまま地面に直撃した

体を起こそうとしたところに蹴りが入れられる

イノが乗りかかり、両手を押さえつけられた

本心を言い当てられ思わず硬直する

そう言い放たれた途端目前が闇に包まれた

一瞬何が起こったか分からなかったが、顔が酷く痛むことから顔を殴られたのだと察する

イノの拳と顔とが赤い糸で繋がれているのが見えた

再度拳が振り下ろされる

唯一自由な右手で顔を守ろうとするも無駄だった

何度も殴打を受ける度に意識が遠のいていく

そうして完全に意識を手放していった