逃げた男
はぁはぁ・・
逃げた男
助かった、
逃げ切れるとは思わなかった
ハァハァ・・
逃げ切れるとは思わなかった
ハァハァ・・
逃げた男
あのまま天国だか地獄だかわからん所にいってたまるかよ
逃げた男
さっきのドアは「地上行き」だって誰かが言ってたから
無理やり入って逃げてきたけど・・
無理やり入って逃げてきたけど・・
逃げた男
くぐったのはいいが
逃げた男
・・・何も無いじゃねぇか。
逃げた男
いや、ホントに
逃げた男
何も無い
逃げた男
暗くもないのに何も見えない
逃げた男
音もない。生きてる時にはあれほど気になった耳鳴りさえもしない
逃げた男
匂いも、感覚も
逃げた男
何も無い
担当者A
さっきの人どこ行ったんだ?
キミの担当だよね?
キミの担当だよね?
担当者B
あぁ、それが
担当者B
「俺は天国にも地獄にも行きたくない!」
って叫んで逃げてしまったんですよ。
って叫んで逃げてしまったんですよ。
担当者A
もしかして現世に?
担当者B
はい・・
担当者A
よく逃げきれたもんだね、
現世行きのドアはなかなかくぐれないハズなのに
現世行きのドアはなかなかくぐれないハズなのに
担当者B
ですね・・
急いで追いかけたのですが、間に合いませんでした。
急いで追いかけたのですが、間に合いませんでした。
担当者B
私の処分は仕方ないとしましても、逃げた方には可哀想なことをしました。
担当者A
んー、そうだなぁ。
例え今の状態で現世に行けたとしても
例え今の状態で現世に行けたとしても
担当者A
肉体はもう存在しないから
戻る体もないしなぁ。
戻る体もないしなぁ。
担当者B
肉体、ないですよねぇ。
担当者B
目も耳も鼻も皮膚もない
担当者B
全てのものが感じられない世界で気が狂いそうになっているでしょうね。
担当者A
せめてもの救いは、
そのうち霊体が崩れて心も無くなってしまうことだね。
そのうち霊体が崩れて心も無くなってしまうことだね。
担当者B
逃げる前に説明するはずだったのですが、可哀想なことをしました・・・。
現世
逃げた男
・・・ ・・ ・
逃げた男
・・ ・
逃げた男