日帝
目の前を染め上げる、紅色。
そこらじゅうに散らばるヒトガタ。
今は海軍がロシアに勝利し、陸軍も押している状態。
だが、そろそろ此方側の資源が足りなくなってきた。
この程度では降伏も怪しいだろう。
まぁ勝っているのは事実、だが。
…嗚呼、早く終わらせなきゃ。
早く、早く韓帝に......清に、会いたい。
会いたい。会いたい。
あれから段々おかしくなっているのは、俺自身、気がついていた。
脳裏に、ドブに捨てた"感情"が、湧き上がっていった。
最初こそ拒否した。
だって、それを理解して、再び感情を持てば、
俺は。
だが、数ヶ月もソレがあれば、理解をしてしまうのも時間の問題だった。
端的に言うと、俺は依存していた。
…韓帝にも、清にも。
あいつらがいないと俺はだめだと鮮明に思ったのは、ロシア帝国の兄弟との戦闘だった。
最初は、弟の方のロシアと。
背丈も体格もそこそこあったが、結局、そこまで持たなかった。
恐らく生まれたてだから、というのもあるのだろう。
俺はざっと2000年以上は存在している。
故に、戦闘経験の少ない彼との戦闘は、はっきり言って...楽だった。
そうして...例に習って首を落とそうとした、直後の話。
何者かが俺の背後に居た。
幸い、わかりやすく殺気を放っていたから、すぐに対処はした。
そいつは、ロシアの兄の...露帝だった。
接敵してわかったのは、彼らは喋り方も雰囲気も体格も顔も酷似しているが、
ロシアが割と感情を表に出しているのに対し、露帝はあくまで"国"として動くことを重視しているようだった。
感情はある。なかったらさっきのような殺気すら出せない。
殺してやる、という憎悪自体抱かないから。
そして...彼はあくまでも"国"として動くが、それ以上に兄弟を大切にしているらしい。
恐らく無自覚だろうが、そんな雰囲気があった。
それに感化でもされたのだろうか。
俺は、不意に韓帝と清に会いたい、と思った。
こいつらをさっさと片付けて、俺の、俺のものにして。
戦闘中だったから、すぐその考えを振り払ったが。
…我ながら、ゾッとした。
目の前の軍隊はとりあえず壊滅した。
他の兵たちは次なる敵へと向かっている。
日帝
感情を殺して、あいつらへの気持ちを殺して、
前に一歩、踏み出そうとしたときだった。
後ろから、誰かが崩れる音がする。
誰かが息を飲む音がする。
涙の音が、する。
敵かと思い、振り返る。
そこには、思いもよらず人物たちが、いた。
…そして、彼らを見た瞬間、
今まで押し殺していた"感情"が、どっと溢れた。
日帝
そこには。
日帝
彼らが。
二人が。
…韓帝と清が、いた。
清
戦場に自ら足を踏み入れ、
僕も清も、なんども銃で撃たれた。
幸い国だからか変な損傷はないが、流石に疲れてきたところだった。
清が前方を見て、声とは呼べぬ声を発する。
それに気がついて、まさかと思って、僕も見た。
韓帝
僕は思わず、その場で崩れた。
…日帝だ。
こちらに気がついたのか、急いでこちらを振り返ると、
見たこともないくらいぐちゃぐちゃした感情を、顔に出して固まった。
長年の付き合いだから、分かる。
_______日本が、戻った。
暫く僕らの間に沈黙が続いた。
それが再会ゆえの感動なのか、執着なのか、依存なのかはわからない。
はたまた、全部かもしれない。
長く続いた沈黙を破ったのは_____僕だった。
唇が、声帯が震える。
それでも僕は、言った。
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