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康平
正直な言葉が零れる
蓮音
蓮音
蓮音
その言葉に, 康平の胸が締めつけられる。
手首を掴む指が, ほんの少しだけ,袖の内側に滑った。
皮膚と皮膚が,はっきり触れる。
蓮音
康平
今度は,反射的な言葉じゃない。
それでも、離れない。
蓮音は,ゆっくりと目を閉じた。
蓮音
声が,震える。
蓮音
言葉が続かない。
康平は,初めて理解する。
── 距離を保つことが、 ── 一番残酷な場合もある。
康平は,そっと一歩,近づいた。
額が触れそうな距離。 それ以上は行かない。
康平
自分に言い聞かせるように。
蓮音は,目を閉じたまま頷いた。
蓮音
その返事は,拒否じゃない。 了承だった。
二人は触れたまま,動かない。
雨音と,呼吸だけが, 倉庫を満たす。
──逃げ場はない。 ──でも,まだ,引き返せる。
その境界線に,二人は立っていた。