康平
壊したくない
正直な言葉が零れる
蓮音
……オレは
蓮音
……
蓮音
……もう,
壊れる前提で,
……ここにいます
壊れる前提で,
……ここにいます
その言葉に, 康平の胸が締めつけられる。
手首を掴む指が, ほんの少しだけ,袖の内側に滑った。
皮膚と皮膚が,はっきり触れる。
蓮音
……っ
康平
……ごめん
今度は,反射的な言葉じゃない。
それでも、離れない。
蓮音は,ゆっくりと目を閉じた。
蓮音
……今
声が,震える。
蓮音
……離れたら,オレ,多分
言葉が続かない。
康平は,初めて理解する。
── 距離を保つことが、 ── 一番残酷な場合もある。
康平は,そっと一歩,近づいた。
額が触れそうな距離。 それ以上は行かない。
康平
……ここまでで,止める
自分に言い聞かせるように。
蓮音は,目を閉じたまま頷いた。
蓮音
……はい
その返事は,拒否じゃない。 了承だった。
二人は触れたまま,動かない。
雨音と,呼吸だけが, 倉庫を満たす。
──逃げ場はない。 ──でも,まだ,引き返せる。
その境界線に,二人は立っていた。






