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第1話 - あ

2023年10月29日

#恋愛

結城　真矢

アイ

ヤスシ、今日は帰りは何時くらいになりそうなの？

ヤスシ

今日は21時過ぎると思うから、先に夜ご飯食べてていいよ

アイ

そう？分かった

アイ

最近、仕事忙しいの？

アイ

先週は連続で3日残業だったし、今週は2日連続じゃない？

ヤスシ

今繁忙期だし、仕事が立て込んで忙しいんだよ

ヤスシ

後輩のミスもカバーしなきゃで、大変なんだ

アイ

そうなんだね

アイ

でも、ヤスシもそこまで無理しなくてもいいんじゃない？

アイ

他の人もフォローしてくれるんでしょ？

ヤスシ

他の同期の奴らも自分のことで手一杯なんだから、

ヤスシ

そんな頼めるわけないだろ

ヤスシ

せっかくアイのために頑張ってんのに、そんなこと言われるとモチベ下がるんだけど

アイ

ごめん...

アイ

心配してるの

アイ

働きすぎて、そのうち体壊しちゃわないかなって

ヤスシ

だったら、家庭のことしっかりやってくれればいいよ

ヤスシ

今まで通り、ご飯とか弁当とか、洗濯ものとか...

ヤスシ

俺が仕事で忙しい時はほとんど任せてる状態で、それで十分助かってるから

ヤスシ

だから、今のままでいいよ

アイ

そっか...寂しいけど、まあヤスシが頑張れるように、私も頑張るね

アイ

じゃあ、気を付けて帰ってきてね

～翌日～

アイ

ねえ、前にも話したと思うんだけど、今日は早く帰ってこれる？

ヤスシ

え？何で？

ヤスシ

前になんか約束したっけ？

アイ

したよ

アイ

今日、ヤスシ誕生日でしょ？

アイ

一緒に家でお祝いしよう、って話したじゃん

ヤスシ

あ～そういえばそんな話、してたっけ

ヤスシ

でも、ごめん

ヤスシ

今日も残業で会社残んないといけないっぽいんだ

アイ

え？約束したのに？

ヤスシ

あのな、アイのことも大事だけど、今は仕事を優先したいの

ヤスシ

まだ入社して4年目だし、経験としてはまだまだ浅い方なんだよ

ヤスシ

ベテランじゃないうちは、量をこなして信頼を取っていきたいんだ

アイ

1日くらい、残業しなくてもいいでしょ？

アイ

誕生日くらいは、当日にお祝いさせてよ

アイ

せっかくご馳走も用意して待ってようと思って、材料も買っておいたんだから

ヤスシ

じゃあ、週末にやろうよ

ヤスシ

日曜なら、空いてるからさ

アイ

日曜日は、私が友達とご飯に行く予定があるもん

アイ

私はそのことは事前に伝えておいたでしょ

ヤスシ

それじゃあ、そこをずらしてくれたらいいだろ

アイ

この日は、友達の誕生日をお祝いする日なの

アイ

友達のことも大事にしてあげたいんだから、この日はキャンセルできないよ

アイ

大事な日だから、前もってヤスシに教えておいたんじゃん

ヤスシ

俺の方が、大事なんじゃないの？

ヤスシ

言ってること矛盾してると思うんだけど

アイ

ヤスシのことは大切にしてあげたいけど、友達のことも同じくらい大事なの

アイ

別に、どっちが大切か、なんていってないじゃん

アイ

私には束縛みたいな面倒なことするな、とか言うくせに、自分はあまり気にしないんだね

ヤスシ

あっそうかよ

ヤスシ

なんか、せっかくの誕生日なのにそんあそっけない返事されて萎えたわ

アイ

萎えた、って...

アイ

何それ、意味わかんない

アイ

今日と、今週の日曜日以外でヤスシが日にちを空けれないなら、

アイ

もう今年はお祝いするのやめよう

ヤスシ

は！？なんでそうなるんだよ

ヤスシ

いつも仕事頑張ってる俺のために、何かしてあげようとか思わねーの！？

アイ

ゆっくりお祝いしてあげたい、って思ったから日にち空けて約束したでしょ！？

アイ

私だって、ヤスシのことを常に一番に考えて動くなんてできないよ

アイ

便利屋みたいに思わないでよ

ヤスシ

そんなこと言ってないだろ

ヤスシ

変なこと言うんじゃねーよ

ヤスシ

あーあ...もう、気分最悪なんだけど

ヤスシ

これから仕事だってのに

アイ

そっちからケンカ吹っ掛けてきたくせに、何言ってんの？

ヤスシ

自分のことしか考えてないんだ、って思って呆れたよ

アイ

もう、私だって知らない

~翌日の夜～

ヤスシ

なあ、今日ってどこか出かけてんの？

ヤスシ

今家帰ってきたけど、何もつくってないじゃん

アイ

友達の家に、泊りに来てる

ヤスシ

友達って、マヤコのとこ？

ヤスシ

お前、自分が困ったらすぐにマヤコに頼るのやめろよ

ヤスシ

マヤコ、絶対に困ってるだろ

アイ

マヤコのところじゃないよ

アイ

自分が好きな人がそんなに心配なの？

ヤスシ

は？何言ってんの？

アイ

私、知ってるの

アイ

マヤコがヤスシと不倫してる、ってこと

ヤスシ

は？そんなことするわけないだろ

ヤスシ

いきなり何言うんだよ

アイ

実は昨日ね、見ちゃったんだよ

アイ

夜、スーパーに買い出しに行ったら、近くのコンビニの駐車場でヤスシとマヤコがキスしてるとこ

ヤスシ

え...

アイ

驚いた？私がいつも行かないスーパーだから

アイ

たまにね、行くんだよ

アイ

少し高いスーパーだけど、1人で少し贅沢したいときは、

アイ

ちょっと良いお惣菜とか買うんだ

ヤスシ

いや、でも昨日俺は会社で残業してたし、

ヤスシ

何かの見間違いかなんかじゃない？

アイ

しらばっくれる気？

アイ

私、そのあと２人がどこかいくところまでついて行ったの

アイ

そしたら、ヤスシ、マヤコの家に行ったみたいじゃん

アイ

だから、朝は朝帰りだったんだね

ヤスシ

いや、確かに家に着いたのは４時とかだったけど...

ヤスシ

会社でそのまま寝ちゃってさ

アイ

ここまで言っても、まだしらばっくれるんだね

アイ

じゃあ、言わせてもらうけど、マヤコも白状したの

ヤスシ

へ！？

アイ

ヤスシと不倫してること、認めたんだよ

ヤスシ

いや...嘘だろ...

アイ

裏切られてびっくりしてる？

アイ

ちなみに、マヤコがヤスシとメールでやりとりしてる画面も見せてもらった

アイ

ハートマークとか...ただの友達だったら送らないよね？

ヤスシ

そうだよ...ただの友達じゃなくて、好きだから送ったんだよ

アイ

やっと認めたね

ヤスシ

俺、もうアイとは一緒にいられない

ヤスシ

もう、かなり前から冷めてたんだ

アイ

まずは、他の女と浮気したことを謝るべきなんじゃないの？

ヤスシ

そっちが悪いんだろ！

ヤスシ

俺が子供ほしい、って言ってんのに、夜は忙しいから無理だ、って言うばっかりだし...

アイ

は！？子供が欲しいからそんなこと言ってたの！？

ヤスシ

そうだよ

ヤスシ

何か悪いかよ

ヤスシ

子供作れない女とは、俺付き合いたくないんだ

アイ

最低...そんな目で見てたんだ

ヤスシ

アイは、そんなに料理も上手じゃないし...

ヤスシ

このまま一緒にいても、絶対に幸せになれないな、って思ったんだよ

アイ

あっそ...じゃあ、もう好きにすればいいんじゃない

アイ

そんな子供欲しさで付き合う選ぶ相手も変える奴とは、私も一緒にいたくわないから

アイ

じゃあ、お互いに合意だね

アイ

さよなら

～翌日～

マヤコ

アイ

マヤコ

私ね、ヤス君と結婚することにした

マヤコ

最初は迷ってたんだけど...

アイ

そんなこと、いちいち報告いらないから

アイ

もう分かってるよ

マヤコ

そっか

アイ

私、もう祝福もしないし、２人と連絡も取る気ないから

アイ

だから、もう私に連絡してこないでくれる？

マヤコ

でも、アイはすごく友達思い出頼りがいあるし、友達のままでいさせてもらえない？

マヤコ

信頼できる友達には、頼りにされると嬉しいよ

アイ

でも、マヤコはもう友達じゃないもん

アイ

だから、もう一切連絡はしてこないで

～７か月後～

ヤスシ

久しぶり、アイ

アイ

何？いきなり

アイ

もう連絡しないで、って言ったじゃん

ヤスシ

いや、そうなんだけど、ちょっと緊急でさ

アイ

何？

ヤスシ

実は、マヤコが入院することになったんだ

アイ

え？

ヤスシ

少し前に妊娠が発覚したんだけど、ちょっとお腹の子の体調が悪いみたいで、

ヤスシ

検査入院するらしい

ヤスシ

俺、入院費払えなくて困っててさ

ヤスシ

少しでもいいから、貸してほしいんだ

アイ

マヤコに、お腹の子のこと、なんか聞いてないの？

ヤスシ

え？だから、検査だって...

アイ

違うよ

アイ

言いにくいけど...

アイ

流産した、ってマヤコのお母さんから聞いたの

ヤスシ

え...そうなの？

アイ

私も、聞いた時はビックリしてさ

アイ

っていうか、そんな重要なこと聞かされてないって...

アイ

マヤコから相当信頼されてないんだね

ヤスシ

そんなことねーよ

ヤスシ

言いにくかっただけだろ...

ヤスシ

なあ、そしたら俺たちさ

ヤスシ

もう一回やり直さないか？

アイ

は？何言ってんの？

アイ

バカなこと言わないでよ

アイ

っていうか、これではっきり分かったよ

アイ

ヤスシは子供が産めか、産めないかで付き合う人を選んでるんだね

アイ

自分はたいして家事はできないくせに

アイ

ほんと最低

ヤスシ

いや...違うんだよ

ヤスシ

そういうわけじゃなくて、マヤコって甘えてばっかりで家事もそんなにできなくてさ

ヤスシ

ちょっと苦労してたところなんだよ

ヤスシ

しっかり家のこともやってくれてたアイと離れて、ありがたみが分かった、っていうかさ

アイ

そんな言い分、通用すると思ってる？

アイ

私はもう、ヤスシと一切付き合うことはないから

アイ

もう連絡してこないでよ

アイ

それにね、私新しく付き合う人できたの

ヤスシ

え？そうだったの...？

アイ

うん、同じ職場の人なんだけど

アイ

ヤスシと別れて、落ち込んでたら相談にのってくれてさ

アイ

話す機会が増えて、好きになっちゃってたんだ

ヤスシ

それは、おめでとう...よかったな

アイ

私ね、ヤスシと離れてみて、なんか変わったのかな、って思ったんだけど

アイ

何も寂しくなかったし、スッキリ吹っ切れられたんだ

アイ

落ち込んではいたけど、友達と彼に同時に騙されたことから来た悔しさ、って感じ

アイ

だから、全くヤスシに未練はないから安心して

ヤスシ

本当に、アイと付き合ってた頃はほぼ全部、アイに頼りっぱなしで...

ヤスシ

すまなかった、って思ってるよ

アイ

本当に思ってるんだ？

アイ

なんか、全然そんな感じはしないんだけど？

ヤスシ

いや、本当だよ

ヤスシ

あのさ、もうこれっきりにするから、親友を助けるつもりだと思って、

ヤスシ

お金貸してくれないか？

ヤスシ

アイと、アイの新しい彼氏の関係は絶対に邪魔しないからさ

アイ

邪魔なんてされたくないし、そんなこと絶対にしないでよ

アイ

あとさ、マヤコのお母さんが言ってたんだけど、

アイ

「アイはもっと収入の安定した人と付き合うべきよねって言ってたよ」

アイ

もう隠す必要ないか、と思ったから私がヤスシと結婚してた時のこと、全部話しちゃった

ヤスシ

え？全部って...？

ヤスシ

家事は人任せにするところとか、あとただでさえ収入が少ないのに、

ヤスシ

自分の買いたいものに使う割合が多い、とか...

アイ

そしたら、マヤコのお母さん、「じゃあヤスシ君にマヤコのこと諦めてもらおうかしらね」

アイ

って言ってたよ

ヤスシ

え？そんな今更...

ヤスシ

もう、マヤコに内緒で婚約指輪まで買ったのに...

アイ

それも、渡す前にマヤコから話が来そうだね

アイ

私から言わない方がよかったかな、って思ったけど...

アイ

まあ、伝えておいた方が心の準備ができるかな、って思ってさ

アイ

つい言っちゃった

アイ

まあ、そういうことだから、なんとか頑張って１人でこれから生きていきなよ

～後日談～

アイ

ヤスシはそれから１週間も経たないうちに、マヤコから別れを切り出されたようです

アイ

また、マヤコもヤスシの怠惰な態度に呆れていたらしく、お互いにすぐに冷めていたようです

アイ

一方で、私は私の仕事のことも応援してくれる素敵なパートナーと出会うことができました

アイ

彼が家のことも率先してやってくれるおかげで、私も仕事に専念することができています

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結城　真矢

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