見上げれば誰しもが深呼吸をしたくなるような、気持ちのいい空が横浜の上空に
広がっていた。静かに晴れた空の下、三人の子供が路地を歩いていた。
不機嫌な顔で言葉も交わさず距離は五米程空いていた。
太宰が前、中也が後ろに歩いている。その間に雫が挟まっている状態である
雫
(綺麗な青空だなぁ、、、、、、)
少年二人は不機嫌なのに対して雫はのほほ~んと空を見ていた。
ただ顔はいつもと変わらず無表情だ。
中原中也
・・・・・・おい
中原中也
・・・・・・なァ、おい
どこ行くかくらい教えやがれ!!
太宰治
いやぁあ
いー天気だなあーいい天気すぎて妖精さんの声が聞こえるなぁー
雫
いい天気すぎて・・・?
中原中也
巫山戯んな。俺の声だ
太宰治
あぁ 君いたの
小さいから気付かなかった
中原中也
気付かねぇうちに殺してやろうか手前
太宰治
悪いけど話しかけないでくれる?
今雫さんと逢引で忙しいからーーー
雫
違いますけど。
中原中也
何が逢引だ 包帯野郎。
そうじゃなくて、どこに向かってるか答えろっつってんだよっ!
太宰治
判った、答える。答えるから、近くに寄らないでくれる?
連れだって歩いてると思われたくない
中原中也
心配すんな。俺も思われたくねえから
太宰治
うふふ、気が合うねぇ。そんな君が大好きだよ!
中原中也
うわ、やめろ!気色悪くて死ぬ!
雫
違和感ありまくりですね。
太宰治
・・・・・・うん、僕も気持ち悪くて死ぬかと思った
太宰は後悔の表情をして呻いてから相手を見ずに云った
太宰治
何だっけ?ああそう、今向かってる場所だったね。
これから向かうのは調査だよ。爆発を一番間近で目撃した人間に聞き込みに行く
雫
調査・・・
中原中也
聞き込みだと?面倒だな・・・・・・敵を締め上げて吐かせて終わり、
って話しにゃなんねえのか?
太宰治
なるわけないでしょ(同時)
雫
なりません。(同時)
中原中也
第一、何で爆発なんか調べるんだよ。調べるなら先代の目撃情報だろ?
太宰治
追うべきは先代の噂じゃなく、《荒覇吐》本体の噂だからだよ。
蘇った先代が異能による偽装だとしたら、異能者本人が《荒覇吐》の役回りを演じてることになる。どんなに完璧な人間でも、呼吸し生活するのは避けられない。そっちを追うんだ。
雫
・・・《荒覇吐》の噂なら、《羊》さん達がさんざん調べてるんじゃないですか?
雫が視線を向けると、中也がこくりと頷いた。
そして太宰はにやりと笑った。
太宰治
いくら《羊》の噂好きさん達でも、話を聞けない相手ってのは
いるものだよ
太宰治
一週間前、僕達が経験したのと同じ爆発が起きていた。場所も同じ、擂鉢街でだ。先代そのものの姿は目撃されてなかったから気づくのが遅れたけど、おそらく僕達が追ってる事件と同じものが原因だろう。その爆発の生存者に話を訊きに行く
中原中也
生存者・・・・・・ってことは、死人が出たのか
太宰治
ああ。マフィアの一団だ。生き残った人は異能者でね、君達もすでに会っている人物だよ。この先に自宅があって、そこで話を聞く約束をーーー
太宰が路地の先を指差した時ーーー呼応するように、その方角から轟音が鳴り響いた。
中原中也
はあ!?
雫
・・・わあ、派手にいきましたね。
太宰治
・・・あー 今のは爆発音だね
中原中也
おいおい。あそこに話を聞きに行くんじゃねえのかよ?
太宰治
犯人に先を越されたかなぁ
中原中也
おっとっと、そりゃマジかよ。ヤベエなそりゃ、大事だ。
雫
・・・え
中原中也
つまりこういう事だろ?めんどくせえ聞き込みから、口封じしに来た犯人シメて口割らせる作戦に変更って事だろ?
太宰治
はあ・・・・・・?
雫
(どこも合ってないんですけど!?)
中原中也
最高じゃねえか。行くぞオラ早く来い!
台詞の終わりと同時に風のように疾走していく中也を、太宰は無表情で眺めた。
太宰治
・・・・・・子供だ・・・・・・
雫
なんかひとりで盛り上がってますね。