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その日、いつもより少し長めのキスをしていた。 哲汰の手が、俺の服の裾に触れる。
哲汰.
優しく問う声に、胸がどくんと鳴った。 断りたい。
俺の体には、忘れたくても忘れられない傷が いくつも残っている。 あの人に……元彼に、つけられた傷。
永玖.
そんな不安がずっと胸にあった。 でも……断ったら、怪しまれる。
永玖.
自分でも驚くほど小さな声で頷いてしまった。
脱がされた瞬間 ――哲汰の手が止まった。
哲汰.
その視線の先には、俺の体に残る無数の痕。 白い肌にくっきりと浮かぶそれらを、 哲汰が驚いた顔で見つめていた。
哲汰.
永玖.
咄嗟に自分の体を隠そうと腕で抱きしめる。 でも、もう遅い。哲汰には全部見られてしまった。
沈黙が落ちる中で、心臓が壊れそうなくらい 鳴り響く。
永玖.
俺は震える声で口を開いた。
永玖.
言葉を吐き出すだけで、 吐き気がするほど胸が苦しい。 でも、このまま黙っていたら、 もっと誤解させてしまう。
永玖.
哲汰.
永玖.
哲汰.
永玖.
そこまで言った瞬間、哲汰が強く―― でも優しく俺を抱きしめた。
哲汰.
耳元に響く低い声が、泣きそうなくらい優しい。
哲汰.
永玖.
哲汰.
強く抱きしめてくれるその腕が、温かくて…… 俺の中の恐怖を溶かしていくみたいだった。
永玖.
思わず涙がこぼれてしまう。 哲汰はその涙を指で拭い、 もう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。
この温もりがあれば、過去の傷に怯えずにいられる――そう思えた。