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雨の降る宵の口に君は現れた

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雨の降る宵の口に君は現れた

3 - 雨の降る宵の口に君は現れた

2020年10月22日

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…………

雨宮 誠

予定ってなんだ

私のお気に入りの場所に連れて行ってあげる!

雨宮 誠

別に行かなくていいよ

もう良いから!行くよ!

俺は強引に引っ張られ連れていかれた

どこか篠崎と似ているような気がした

…………

すこし移動しただろうか

小さな丘を越えると美しい景色が目の前に広がった

そこは海だった

でも、ただの海じゃない

透き通っているんだ、ものすごく

人間界では見れない美しさ

俺はこの海を一生忘れることは出来ないだろう

雨宮 誠

この海…

綺麗でしょ?

雨宮 誠

うん、凄い綺麗

やっぱり誠は海が好きなんだ!

雨宮 誠

多分

ね、ここで話そうよ

凪は砂浜に横たわっている木を指さした

雨宮 誠

話すって何を

良いから!良いから!

雨宮 誠

…まぁ良いけど

俺は凪の隣に座った

ねぇ、誠

雨宮 誠

なに

誠は今の生活、楽しい?

雨宮 誠

楽しくない

雨宮 誠

凄く退屈

そっか…

そうだと思った

雨宮 誠

なんで

だって、目に輝きがない

それに、返事も単語だけだし

雨宮 誠

だってまともに話した所で意味無い

何でそう思うの?

雨宮 誠

人間なんて所詮、いつかは見捨てるんだよ

そうとは限らないよ?

雨宮 誠

嘘だ

雨宮 誠

だって母さんも俺を見捨てて出ていった

雨宮 誠

小学生の頃の友達だって最後は見捨てた

雨宮 誠

先生もだ

雨宮 誠

俺がいじめられていても無視し続けた

雨宮 誠

人間なんてそんなもん───

違うよ!!

雨宮 誠

……?!

凪が突然、大きな声で叫んだ

雨宮 誠

何だよ、驚かせるな

さっきから誠は見当違いなこと言ってる!

雨宮 誠

どこが

人間は悪い人ばかりじゃない!

雨宮 誠

全員、悪いやつだ

違うよ!それは誠が周りを見てないだけ!

雨宮 誠

俺の周りは悪い奴らばかりだった

それは過去のことでしょ?

さっき隣にいた、篠崎さんは?佐藤さんは?

悪い人なの?

雨宮 誠

知るか、そんなの

ほら、誠が見てないだけなのよ!

雨宮 誠

うるさい!

俺は久しぶりに声を荒らげた

っ……

凪は驚いたような、悲しいような表情をしていた

雨宮 誠

ちょっと…黙って

…………

2人の間に沈黙が流れる

その時間は数時間にも数日にも感じられた

…誠はさ

凪が小さな声で話し始める

自分から周りを遠ざけてるんだよ

雨宮 誠

…………

雨宮 誠

(自分から…?)

雨宮 誠

それ、どういうこと

誠はあの時から心を閉ざしてる

自分から周りを閉め出してるの

もっとちゃんと周りを見なきゃ

雨宮 誠

…………

分かってくれた?私は誠に幸せになって欲しいの…

雨宮 誠

…………

雨宮 誠

凪の言うことも…分かる

雨宮 誠

でも、また裏切られそうで…

雨宮 誠

俺は…怖いんだ

雨宮 誠

自分がっ…信用した人に…捨てられるのが…

俺はいつの間にか泣いていた

心の中で何かの糸が切れたように

涙が溢れ出てくる

今までの悲しみ、ストレス、不満…

全ての感情が爆発した

誠…

そうだよね、怖かったよね

凪はそれ以上何も言わず

俺を強く抱きしめた

凪は俺より小さかったが

背中に回された手は俺を包み込んでくれるような

そんな手だった

…………

もう、大丈夫?

雨宮 誠

うん

誠が泣くのなんて初めてだね

雨宮 誠

恥ずかしいから言うな…

あはは(笑)

誠も可愛いとこあるじゃん!

雨宮 誠

うるさい

その時だった

凪の身体が光を発し始めた

わっ…!

雨宮 誠

なに…?

あぁ、そういう事か…

雨宮 誠

何が?

私が鳥に戻る時間が来たみたい

雨宮 誠

そっか

雨宮 誠

でも、また人間になれるでしょ

それが無理なの…

師匠はもう老鳥だから、無理はさせられない

雨宮 誠

もう…話せないの

うん、残念だけど…

でも!誠は大丈夫だよ!

雨宮 誠

無理だ、俺は…

ネガティブにならない!

大丈夫!これからも、私は鳥として傍にいるから

雨宮 誠

…分かった

はい、じゃあこれ

凪の小さな手にはブレスレットが握られていた

白い綺麗な羽がついているブレスレットを

雨宮 誠

これは?

私の羽を使って作ったブレスレット

これをもってたら幸せが訪れるよ!

雨宮 誠

ありがとう

俺は自然と微笑んでいた

やっと笑ってくれたね

頑張ってね!誠!

凪がそういった直後…

俺は元の場所に戻っていた

雨宮 誠

あれ…

雨宮 誠

さっき俺はどこに…

腕に何かが触れた

雨宮 誠

ん?

雨宮 誠

あ、これ

それは凪がさっきくれたブレスレットだった

雨宮 誠

(じゃあ、夢ではなかったんだ)

雨宮 誠

(明日からやっていけるかな)

翌日

写真部、部室

女子たちがきゃあきゃあと楽しそうに雑談している

雨宮 誠

(凪に言われたんだ)

雨宮 誠

(自分から周りを遠ざけるなって)

雨宮 誠

(頑張れ、俺)

篠崎 美優

あ、雨宮!あのさ!

篠崎 美優

って…

篠崎 美優

何そのブレスレット!可愛い!

雨宮 誠

これは別に…

雨宮 誠

(いや、凪ならこう言うかな)

雨宮 誠

だろ…?ありがとう

俺は不器用に口角を釣り上げる

佐藤 桜

誠くんが笑った…!

篠崎 美優

雨宮…!

篠崎が抱きついてくる

雨宮 誠

わ…引っ付くな…!

篠崎 美優

だって、雨宮が笑ったんだよ!?

雨宮 誠

俺だって人間だぞ

篠崎 美優

でも嬉しい!

佐藤 桜

やっと私たちに心開いてくれたね!

雨宮 誠

まぁ、ちょっと…

篠崎 美優

じゃあさ!今度遊びに行こうよ!

篠崎 美優

もっと仲を深めるために!

佐藤 桜

賛成!

篠崎 美優

雨宮は?

雨宮 誠

…まぁ行ってやっても良いけど

篠崎 美優

素直じゃないんだから!

佐藤 桜

でも、そこが誠くんらしいよね!

雨宮 誠

何だよ、それ…(笑)

篠崎 美優

あ~!また笑った!

雨宮 誠

いちいち反応するな

篠崎 美優

え~、だってぇ~

これが幸せなんだ

そう思った

凪の言う通りだ

自分から周りを遠ざけてただけだった

いざ目を向けたら俺の周りは暖かい人ばかりだった

この幸せに気づけたのも

凪から貰ったプレゼントのお陰だ

雨宮 誠

(ありがとう、凪)

そう心の中で呟いた

その頃、凪は…

誠、いい感じでやってた!

私があげたブレスレットのおかげかな

…って言っても

あのブレスレットには何の魔法も

幸福のおまじないも無いんだけどね

全部、誠自身の力だよ!

と、笑っていたのだった

「雨の降る宵の口に君は現れた」

[完]

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