こんな夢を見た。
お父さん
六つになる子供を負おぶってる。
お父さん
たしかに自分の子である。
お父さん
ただ不思議な事には、
お父さん
いつの間にか眼が潰れて、青坊主になっている。
お父さん
御前の眼はいつ潰れたのかい?
子ども
なに、昔からさ。
お父さん
声は子供の声に相違ないが、
お父さん
言葉つきはまるで大人である。
お父さん
しかも対等だ。
お父さん
左右は青田である。
お父さん
路は細い。
お父さん
鷺の影が時々闇に差す。
子ども
田圃へかかったね
お父さん
どうして解る?
子ども
だって鷺が鳴くじゃないか
お父さん
すると鷺がはたして二声ほど鳴いた。
お父さん
自分は我子ながら少し怖くなった。
お父さん
こんなものを背負っていては、この先どうなるか分らない。
お父さん
どこか打遣ゃる所はなかろうかと向うを見ると、
お父さん
闇の中に大きな森が見えた。
お父さん
あすこならばと考え出す途端に、
子ども
ふふん
お父さん
何を笑うんだ
子ども
…………
子ども
御父さん、重いかい?
お父さん
重かあない
子ども
今に重くなるよ
お父さん
…………
続く