君の背中を追いかけて.
第1話
過去
─6年前
まだ私たちは幼かった
啓吾くんは小学6年生で
私は1年生だった
本当は啓吾くんは友達と 遊びたいはずなのに
習い事のある水曜日以外は
毎日私と暗くなるまで 遊んでくれた
多分私は1年生の時から 啓吾くんのことが
好きだったんだと思う
美香
啓吾お兄ちゃん!
啓吾
どうしたの?
啓吾
美香ちゃん
歳が結構離れているから
身長も全然違ったけど
啓吾くんは私が話しかけると いつも目線を合わせてくれた
美香
啓吾お兄ちゃんは
美香
大きくなったら
何になりたいのっ?
何になりたいのっ?
当時、私は確かそう聞いた
啓吾
俺はねー?
啓吾
大きくなったら
啓吾
俳優さんになりたいんだ
美香
はいゆうさん?
啓吾
うん
啓吾
テレビに出てる
かっこいい人のことだよ
かっこいい人のことだよ
美香
美香
啓吾お兄ちゃんは
美香
かっこいいから何にでも
なれるよ!
なれるよ!
啓吾
そうかなー?
美香
うん!
啓吾
ありがとう
今思うとなんで啓吾くんは私に
こんな優しかったんだろうね
今は見向きもしないのにさ
啓吾
美香ちゃんは大きくなったら
啓吾
何になりたいの?
美香
美香はねー...
美香
なんだろーなぁ
美香
美香
あっ!
美香
美香はねー?
美香
啓吾お兄ちゃんの
お嫁さんになりたいっ
啓吾
うんっ
啓吾
じゃあ僕は美香ちゃんの
旦那さんだね
旦那さんだね
美香
うんっ!
「おおきくなったら」
「けっこんしようねっ」
まだ幼い私たちは
お互いの小指を絡めて
約束していたよね
多分この時は啓吾くんが
幼い私のことを思って
約束してくれたんだと思う
そんな願いごと
叶うわけないもの
だってこの出来事の
6年後(今)は
啓吾くんには"彼女"が
居るんだから