テラーノベル
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注意書き⚠️ 此方は 『ブルロ家族のメイドになりました、』 と言う作品の設定を参考にしています。 パクリではないし、 声も一声かけてあります。 通報などはご遠慮願います。
冷たい城だ、と誰かが言っていた。 豪奢な装飾も、磨き上げられた廊下も、すべてが完璧で—— だからこそ、温度がない。 感情すら、ここでは無駄とされる。 王に仕える者は忠誠を。 王子に仕える者は従順を。 それ以外は、必要ない。 ——例えば、“余計な感情”や“過去”も。
凛
低い声が、静寂を裂いた。 足音の数、距離、呼吸の間。 振り返らずとも分かる。 背後にいるのが誰かなど、 確認する必要もない。
葵
淡々と、頭を下げる。 指先に残る、微かな違和感。 つい先程まで触れていた “それ” の感触は、もう消えている。 痕跡は残していない。 視線を向けられても、 気づかれることはない。
凛
葵
凛
凛
そうだろう。 誰にも、気づかれないのだから。
葵
それだけを告げる。 興味を持たれる理由も、 本来はない。 “そういう風に”しているから。
冴
凛
冴
その言葉に、 ほんの僅かだけ視線を上げた。
葵
冴
顎に触れる指先。 ——近い。 もしこの距離で刃を滑らせれば、 確実に届く。 そんな思考が、 当たり前のように浮かんで—— すぐに消える。 今は必要ない。
葵
即答。 空気が止まる。 けれど、それでも構わなかった。 どう思われようと、関係ない。 私はただのメイドで、 それ以上でも以下でもない。 ——そのはずだった。
冴
小さく笑う声
凛
低く落ちる声と同時に、 手首を掴まれる。 強い力。 けれど、外すこと自体は難しくない。 関節の向き、力の流れ—— 一瞬で、いくつも選択肢が浮かぶ。 そのすべてを、選ばないだけで。
葵
凛
葵
凛
視線がぶつかる。 熱を持ったそれと、 何も映さないそれ。
冴
凛
静かに火花が散る。 この城では珍しくもない光景。 ただ一つ違うのは—— その中心にいる人間が、 “従順ではない” ということ。
葵
二人の間を抜ける。 背後。 わずかに、空気が揺れる。 気づいている。 ——見られている。
凛
冴
足は止めない。 ただ、一度だけ。 振り返らずに、告げる。
葵
それが、役目だから。 そう、 “今の”。 廊下の角を曲がる。 その瞬間、指先に付着していた赤を、 静かに拭い取った。 誰にも見えない場所で。 誰にも気づかれないまま。 ——まだ、知られてはいけない。 この城の誰も。 王子でさえも。 “自分が何者か”を。
コメント
1件
伏線貼ったからよく見れば分かるかも?