テラーノベル
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次の日の朝も、ピンポンは鳴った。
いつもと同じ音、同じ間隔、同じ時間。
(…いつも通り。昨日の変な空気、気のせいだったのかな)
玄関を開けると、なおきりはそこにいた。
制服、バッグ、落ち着いた顔。全部いつも通り。
…だけど、"いつも通り" の中に、ほんの少しだけ違うものがある気がした。
(なんだろ。言葉じゃない…雰囲気?)
なおきり
のあ
なおきり
のあ
なおきり
のあ
私は慌てて留める。
なおきりは何も言わずに、歩き出した。
(…ほら。なおきりはいつも通り。なのに、私が勝手に気にしてるだけ)
学校では、いつも通り授業があって、いつも通り友達が騒いで、
いつも通り私は恋バナを遠くから眺めてた。
えと
のあ
るな
のあ
(恋愛って、なんでそんなにみんな好きなんだろ)
私は、恋って言葉に触れるたびに、なぜか肩がこわばる。
自分には関係ないって思いたいのに、
どこかで "関係ないって言い切れない自分" がいるのが分かるから。
放課後。
帰り支度をして、教室を出る。
廊下でなおきりを見つけるのも当たり前。
("一緒に帰る" が、呼ばなくても成立するのって、すごいよね)
校門を出て、いつもの帰り道。
夕日で道路が少し赤く見える。
風邪が冷たくて、制服の袖口に指を引っかけた。
のあ
なおきり
のあ
なおきり
のあ
なおきり
(こういう軽い会話、落ち着く)
…なのに。
なおきりが、急に言葉を止めた。
前を向いたまま、足だけは進めてるのに、
声が出る準備をしてるみたいに、息を吸う。
なおきり
のあ
なおきり
("話していい?" って、改まって言うの珍しい)
のあ
なおきり
一秒。二秒。
なおきりが言葉を探してる沈黙が、やけに長く感じた。
(やめて。こういう沈黙、心臓に悪い)
なおきり
世界が、一瞬だけ止まった。
(え)
耳に入った言葉が、頭に届くまで時間がかかる。
胸の奥が、きゅっとつかまれる。
(好きな人…?なおきりに?)
なのに、私の顔は勝手に "普通" を作ろうとする。
口が先に動いてしまいそうになるのが怖くて、私は息を吸った。
のあ
それだけで終わりそうで、慌てて言葉を足す。
のあ
自分の声が、遠い。
笑ったつもりなのに、喉が乾いて、うまく音が出ない。
なおきり
なおきりは、私の顔を見ない。
夕日の方を見たまま、淡々とそう言った。
("そっか" って…なに。もっと何か言ってよ)
(…私、何を期待してるの?)
歩幅が、微妙にずれた。
いつもなら自然に揃うのに、今日は揃わない。
(…当たり前が、崩れた)
コメント
3件
久しぶりの更新嬉しすぎる!!