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期限付きの恋心

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期限付きの恋心

19 - 第19話 ❄️❄️🕊️✍️

♥

352

2025年08月05日

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❄️『好きだよ。ずっと、君が』~告白の夜~

冬の夜。 雪は降らないけど、空気がきゅっと凍り付くような冷たさだった。 病室の中庭ーー枯れかけた木のそばで、えとさんは白いコートの裾を両手で握ってた。

🍫

……寒いね

そう言った彼女の頬が、冷たさじゃなくて、緊張でこわばってる気がした。 僕も、同じだった。

ふたりきりになると、言葉が出てこない。

何度も、何度も、言おうとした。 でも、そのたびに時間だけがすり抜けていって。

でも、もうーー時間は、そんなに残ってない。

🌷

えとさん

声が震えた。自分でも分かった。 でも、今だけは、自分に嘘をつきたくなかった。

🌷

……僕、伝いたいことがある

えとさんが、そっとこちらを見上げる。 街灯の明かりが、彼女の瞳に小さく揺れていた。

僕は、ゆっくりと、彼女の手を取った。

🌷

僕は……えとさんが好きです

その瞬間、彼女の瞳が見開かれた。

🌷

病室で笑う顔も、わがまま言うとこも、悲しいのを隠す声も、全部

🌷

ーー好きだよ

手が震えてるのがバレたくなくて、ぎゅっと握る。 それでも、伝えたかった。もう、嘘つかずに。

🌷

……君と過ごしたこの時間が、僕にとって一番、大事だった

沈黙が降りる。 心臓が痛いくらいに鳴ってる。 返事がないのが怖い。怖いけど、後悔するほうがもっとーー怖かった。

だけど。

🍫

……バカ

えとさんが、涙ぐんだ顔で、僕の胸に飛び込んできた。

🍫

ずるいよ、先に言うなんて……私だって……ずっと、好きだったのに……!

小さくて、震えてて、でも真っ直ぐな声が、僕の胸にしみこんでくる。 その声がすべてを溶かしていく。

🌷

……ありがとう、えとさん

抱きしめた肩が、小さく震えていた。 僕も、泣いていた。嬉しくて、愛しくて、ずっと言えなかった「好き」を ようやく伝えられて。

中庭の静かな夜に、ふたりの影がひとつになった。

❄️『ずっと、伝えたかった』~告白の夜~

夜の病院の中庭は、しんと静まり返ってた。 寒くて、手が冷たくて、でも心の中のほうがもっと凍えてた気がする。

どうしよう。言いたいのに、言えない。 伝えたいのに、怖い。「好き」って言ったら、もし、壊れてしまったらーーって

そんな風に、また今日も何も言えないまま終わるのかな、って思ってた。

……なのに

🌷

えとさん

ふいに呼ばれた名前。 その声は、あの日よりもずっと震えてて、でも真っ直ぐだった。

顔を上げたら、なおきりさんが、まっすぐ 私を見ていた。

🌷

僕、伝いたいことがある

ーーえ?

心臓がドクンってなった。 こんなタイミングで? いや、今、だから?

そして、そのまま、手を取られてーー

🌷

僕は……えとさんが好きです

時間が止まった気がした。 本当に、言ってくれた。 ずっと、私が言えなかった言葉を、先に、 こんなにもまっすぐに。

🍫

……バカ

もう、涙が止まらなかった。 わかんない、嬉しくて、苦しくて、胸がギュッてなって、 苦しくなるほど嬉しくて。

🍫

ずるいよ、先に言うなんて……私だって……ずっと、好きだったのに……!

私の声も、震えてたと思う。 でも、本当のことだった。

ずっとずっと、好きだった。 笑いかけてくれる声も、からかってくる顔も、優しくて、誰よりもあたたかい手も。

🌷

……ありがとう、えとさん

その言葉が、部雪みたいにふわって降って、 私の中の不安や怖さを全部溶かしてくれた。

ぎゅっと抱きしめられて、私はその胸の音を感じながら、目を閉じた。

こんなふうに“好き”って、言い合えるなんて。 この冬の寒さも、時間の少なさも、全部忘れそうなくらいーー

🍫

私も……好き。ほんとに、大好き……

私の言葉は、小さな雪の結晶みたいに、なおきりさんの 心に届いてくれるといいな、って願った。

🕊️『奇跡の始まり、そしてこれから』

検査の朝は、やけに空が高く見えた。 窓の外に秋の陽が差し込んでいて、病室の白いシーツに、そのあたたかさが滲んでいる。

🍫

……なおきりさん、手、冷たい

隣のベッドから、えとさんが笑う。 だけど、僕はそれに返す言葉をすぐには見つけられなかった。 今日の検査の意味を、僕たちは、知ってる。

それは、余命“過去形になるかもしれない”日。

🌷

……行こうか、えとさん

🍫

うん

少しだけ強く手を握って、ふたりで病室をでる。

* * *

結果が出るまでの時間は、やけにゆっくりと流れた。 待合の椅子で肩が触れそうになって、触れない距離で、えとさんはそっと目を閉じてる。

僕は、そんな彼女の横顔を見ていた。

“もし、これが本当に治るってことなら” “もし、ふたりで未来に手を伸ばせるのなら” ……その時こそ、全部、言おう。

三宅

お待たせしました

看護師の三宅さんが、診察室から顔をだした。 僕らは無言で立ち上がる。手は、離さない。

* * *

先生

ーー再検査の結果、なおきりくんの腫瘍、完全に縮小しています

先生

えとさんも、同様に。再発の兆候もなく、ほぼ寛解状態と考えていいでしょう

信じられない、なんて言葉は使いたくなかった。 でも、現実は、ただ静かに胸の中へと染み込んだ。

🍫

なおきりさん……

🌷

……うん

えとさんが僕の手を、強く、強く握る。 それだけで、もう涙がこぼれそうだった。

先生

これからも定期的に通院と検査は必要ですが……

先生

このままいけば、来年の春、退院できる可能性が高いです

春ーー それは、ずっと先にしかなかったはずの、未来。

🌷

……僕、信じてなかったんだ

🍫

え?

🌷

でも今、信じられるよ。

🌷

えとさんと、もっと一緒にいられる未来があるんだって

えとさんは、ただ小さく頷いて、声にならない涙をぽろぽろこぼした。

……これが、“奇跡の始まり”だ。

✍️『ふたりで描く、これからのリスト』

奇跡みたいな検査結果から戻ってきて、僕らは自分たちのベッドに腰を下ろした。

🍫

なおきりさん、ほら……

えとさんがそっと取り出したのは、一冊の小さなノートだった。 表紙の隅には、ふたりで描いた落書きが色あせずに残ってる。

『退院したら、したいことリスト』

僕らの、小さな夢の帳面。

🍫

……もう一度、続きを書ける日が来るなんて、思わなかったね

えとさんはゆっくりページを開いて、懐かしいように眺めていた。 「ふたりでプリクラ撮る」「遊園地デート」「制服で最後の放課後」ーー

どれも退院後、二人で過ごす未来への、願いだった。

🍫

ねぇ、なおきりさん。続き書こ?

🌷

ああ。……今度は、

🌷

ちゃんと“叶えるため”に書くんだ

僕はペンを受け取って、えとさんと見つめ合いながら、そっと書き足す

書き終わって、ふたりで静かに見つめた。 不思議と、どの願いも現実になりそうな気がした。

🌷

……僕さ、思ってたんだ。願いって叶うって知らなかったよ

🍫

うん、わたしも。怖かったけど……叶えてもいいんだね、って
今思える。

えとさんはペンのキャップを閉じながら、柔らかく笑った。 あの頃より少し大人っぽくなった笑顔だった。

🍫

ねぇ、リストに書いてないけど、もうひとつ……叶えたいことある

🌷

ん?なに?

えとさんがちょっとだけもじもじしながら僕をみた。

🍫

ーー将来、一緒に住みたい。

🍫

……おそろいの食器とか買ってさ

🌷

……ふふ、それも追加だな

僕はリストの空白ページに、そっと書き加える。 11.ふたりで暮らす未来をつくる。

その文字を見て、えとさんがくすっと笑っていった。

🍫

ねえ、リスト、100個くらいまで増やしてこうよ

🌷

それ、いいね。ずっとふたりで書いていこう

未来が、少しずつ手の中にあたたかく膨らんでいく気がした。

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