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❄️『好きだよ。ずっと、君が』~告白の夜~
冬の夜。 雪は降らないけど、空気がきゅっと凍り付くような冷たさだった。 病室の中庭ーー枯れかけた木のそばで、えとさんは白いコートの裾を両手で握ってた。
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そう言った彼女の頬が、冷たさじゃなくて、緊張でこわばってる気がした。 僕も、同じだった。
ふたりきりになると、言葉が出てこない。
何度も、何度も、言おうとした。 でも、そのたびに時間だけがすり抜けていって。
でも、もうーー時間は、そんなに残ってない。
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声が震えた。自分でも分かった。 でも、今だけは、自分に嘘をつきたくなかった。
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えとさんが、そっとこちらを見上げる。 街灯の明かりが、彼女の瞳に小さく揺れていた。
僕は、ゆっくりと、彼女の手を取った。
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その瞬間、彼女の瞳が見開かれた。
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手が震えてるのがバレたくなくて、ぎゅっと握る。 それでも、伝えたかった。もう、嘘つかずに。
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沈黙が降りる。 心臓が痛いくらいに鳴ってる。 返事がないのが怖い。怖いけど、後悔するほうがもっとーー怖かった。
だけど。
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えとさんが、涙ぐんだ顔で、僕の胸に飛び込んできた。
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小さくて、震えてて、でも真っ直ぐな声が、僕の胸にしみこんでくる。 その声がすべてを溶かしていく。
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抱きしめた肩が、小さく震えていた。 僕も、泣いていた。嬉しくて、愛しくて、ずっと言えなかった「好き」を ようやく伝えられて。
中庭の静かな夜に、ふたりの影がひとつになった。
❄️『ずっと、伝えたかった』~告白の夜~
夜の病院の中庭は、しんと静まり返ってた。 寒くて、手が冷たくて、でも心の中のほうがもっと凍えてた気がする。
どうしよう。言いたいのに、言えない。 伝えたいのに、怖い。「好き」って言ったら、もし、壊れてしまったらーーって
そんな風に、また今日も何も言えないまま終わるのかな、って思ってた。
……なのに
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ふいに呼ばれた名前。 その声は、あの日よりもずっと震えてて、でも真っ直ぐだった。
顔を上げたら、なおきりさんが、まっすぐ 私を見ていた。
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ーーえ?
心臓がドクンってなった。 こんなタイミングで? いや、今、だから?
そして、そのまま、手を取られてーー
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時間が止まった気がした。 本当に、言ってくれた。 ずっと、私が言えなかった言葉を、先に、 こんなにもまっすぐに。
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もう、涙が止まらなかった。 わかんない、嬉しくて、苦しくて、胸がギュッてなって、 苦しくなるほど嬉しくて。
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私の声も、震えてたと思う。 でも、本当のことだった。
ずっとずっと、好きだった。 笑いかけてくれる声も、からかってくる顔も、優しくて、誰よりもあたたかい手も。
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その言葉が、部雪みたいにふわって降って、 私の中の不安や怖さを全部溶かしてくれた。
ぎゅっと抱きしめられて、私はその胸の音を感じながら、目を閉じた。
こんなふうに“好き”って、言い合えるなんて。 この冬の寒さも、時間の少なさも、全部忘れそうなくらいーー
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私の言葉は、小さな雪の結晶みたいに、なおきりさんの 心に届いてくれるといいな、って願った。
🕊️『奇跡の始まり、そしてこれから』
検査の朝は、やけに空が高く見えた。 窓の外に秋の陽が差し込んでいて、病室の白いシーツに、そのあたたかさが滲んでいる。
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隣のベッドから、えとさんが笑う。 だけど、僕はそれに返す言葉をすぐには見つけられなかった。 今日の検査の意味を、僕たちは、知ってる。
それは、余命“過去形になるかもしれない”日。
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少しだけ強く手を握って、ふたりで病室をでる。
* * *
結果が出るまでの時間は、やけにゆっくりと流れた。 待合の椅子で肩が触れそうになって、触れない距離で、えとさんはそっと目を閉じてる。
僕は、そんな彼女の横顔を見ていた。
“もし、これが本当に治るってことなら” “もし、ふたりで未来に手を伸ばせるのなら” ……その時こそ、全部、言おう。
三宅
看護師の三宅さんが、診察室から顔をだした。 僕らは無言で立ち上がる。手は、離さない。
* * *
先生
先生
信じられない、なんて言葉は使いたくなかった。 でも、現実は、ただ静かに胸の中へと染み込んだ。
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えとさんが僕の手を、強く、強く握る。 それだけで、もう涙がこぼれそうだった。
先生
先生
春ーー それは、ずっと先にしかなかったはずの、未来。
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🌷
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えとさんは、ただ小さく頷いて、声にならない涙をぽろぽろこぼした。
……これが、“奇跡の始まり”だ。
✍️『ふたりで描く、これからのリスト』
奇跡みたいな検査結果から戻ってきて、僕らは自分たちのベッドに腰を下ろした。
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えとさんがそっと取り出したのは、一冊の小さなノートだった。 表紙の隅には、ふたりで描いた落書きが色あせずに残ってる。
『退院したら、したいことリスト』
僕らの、小さな夢の帳面。
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えとさんはゆっくりページを開いて、懐かしいように眺めていた。 「ふたりでプリクラ撮る」「遊園地デート」「制服で最後の放課後」ーー
どれも退院後、二人で過ごす未来への、願いだった。
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🌷
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僕はペンを受け取って、えとさんと見つめ合いながら、そっと書き足す
書き終わって、ふたりで静かに見つめた。 不思議と、どの願いも現実になりそうな気がした。
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えとさんはペンのキャップを閉じながら、柔らかく笑った。 あの頃より少し大人っぽくなった笑顔だった。
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えとさんがちょっとだけもじもじしながら僕をみた。
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僕はリストの空白ページに、そっと書き加える。 11.ふたりで暮らす未来をつくる。
その文字を見て、えとさんがくすっと笑っていった。
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未来が、少しずつ手の中にあたたかく膨らんでいく気がした。