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第1話 - あ

2023年08月21日

#スカッと

田中俊樹

サエコ

あなた、生活費1万円じゃどうやっても足りないわ。

サエコ

こんな金額で1カ月も過ごすなんて、どう考えても無理よ…。

ユウ

お前はまた、すぐそうやって音を上げるんだな。

ユウ

俺が家賃と光熱費を出すのが当然だと思ってるんだろ？

ユウ

税金とか、必要な物は俺が全部出してやってるんだから

ユウ

専業主婦のお前は残りの分できちんと生活しろよな！

サエコ

家賃とかを払ってもらってるのは感謝してるよ。

サエコ

でも、子供に必要なお金や食費を削れっていうのはおかしいでしょう？

サエコ

しかも、家の中で一番ご飯を食べてるのはユウよ？

ユウ

俺は外で働いてるから、腹が減るんだよ。

ユウ

自分で稼いだ金でたらふく食べて、何が悪い？

ユウ

お前は養われの身なんだから、

ユウ

大人しく言う事を聞いてればいいんだよ。

サエコ

そんなのおかしいよ。

サエコ

私、ユウが仕事を辞めろって言うから退職したのに。

サエコ

食費を切り詰めなきゃいけないほど苦しいなら

サエコ

なんで私に仕事を辞めろなんて言ったのよ。

ユウ

人のせいにするのも、お前の悪い所だな。

ユウ

別に強要したつもりはないぜ？

ユウ

ただ、娘のナオの為に家に居たほうが良いんじゃないかって

ユウ

そう言っただけじゃん。

サエコ

私が働いてる時は、私のほうが給料が良いからって

サエコ

生意気だの、妻らしくふるまえだのと

サエコ

イヤミばっかり言ってたくせに。

サエコ

こんなに節約節約って言われるくらいなら、仕事は辞めなかったわ。

ユウ

ああ、ほんとお前はウゼぇなぁ！

ユウ

自分が生活費をやりくりできないからって

ユウ

俺に文句ばかりいうな！

サエコ

もう、そうやって感情的になるのはやめてよ…。

サエコ

大体、生活費を1万円しか渡さないで

サエコ

残った他のお金は一体何に使ってるの？」

サエコ

せめて、ちゃんと貯金はしててほしいんだけど。

ユウ

ああ？俺の金の使い道に口出しすんのか？

サエコ

だって、夫婦なんだからお金の管理はきちんとしないといけないでしょ。

サエコ

私、1万円じゃ足りないから、自分の貯金を切り崩してるんだよ？

サエコ

私の貯金が無くなったら、色々心配じゃないの。

ユウ

何言ってんだ？お前は実家が病院で、金持ちなんだから

ユウ

実家から援助してもらえよ！

サエコ

何を言ってるの？結婚しているんだから、

サエコ

親にそんな心配はかけられないわよ。

ユウ

フン、そんな事をいったってお前、小遣いでも貰ってるんだろう？

ユウ

それに黙っていたって遺産が手に入るんだから

ユウ

貯金なんかしなくても平気だよ

サエコ

最低。

サエコ

私、親からお金なんて一度も受け取ってないわよ。

ユウ

嘘つけ。正月に金を貰ってただろう。

サエコ

何言ってるの！あれはナオのお年玉よ。

サエコ

これでナオのお洋服でも買ってあげてって、お母さんがくれたのよ。

サエコ

ナオのお洋服が、古着やおさがりばかりで可哀そうだからって。

ユウ

子供の洋服代？そんなのムダだろ。

サエコ

ムダ？ムダってどういう事よ！

ユウ

チビにお洒落させても意味ないだろ。

ユウ

どうせ何着たって分かんないんだし、すぐサイズが合わなくなるんだからさ。

サエコ

酷いわ。それでもナオのパパなの？

サエコ

子供にかける最低限のお金も、ムダなんて言って

サエコ

ユウはどれだけ節約してるのよ。

サエコ

まさか、あればあるだけ使っちゃってるんじゃないでしょうね？

ユウ

俺の給料をどう使おうと、俺の勝手だろ。

ユウ

文句があるなら出ていけよ！

ユウ

俺は、いつ離婚したって良いんだぜ？

サエコ

二言目にはいつもそう言うのね。

サエコ

離婚するって言えば、私がいう事を聞くと思って…。

サエコ

だんだん、毒を盛られていくような気がしてきたわ。

ユウ

うるさいな。

ユウ

あまりガタガタ言うなら、本当に家から追い出すぞ！

サエコ

もう。ほんとにイヤ。

サエコ

マトモに話し合いも出来ないんだから…。

ユウ

お前との話し合いも時間のムダだ。

ユウ

わかったら、もう切るぞ。

サエコ

もう、分かったわよ…。

ユウ

じゃあな！

～2日後～

セイコ

奥様、初めまして。私、セイコっていいます♪

サエコ

あの、どなた？

サエコ

いきなり私にメッセージを寄越すなんて、恐怖なんですけど。

セイコ

そんな警戒しないで下さい。

セイコ

私、ユウさんのお友達なんです。

セイコ

奥様のLINEも、ユウさんのスマホから電話番号を覗いて、

セイコ

私のスマホに登録したってわけです♪

サエコ

ええ？人のスマホを勝手に見て、私の個人情報を盗んだの？

サエコ

なんだかアナタ、ヤバそうな人ね。

セイコ

ヤバいなんて、照れちゃいます～。

サエコ

はい？

セイコ

だって私、ユウさんの事が好きすぎて、

セイコ

全部奪いたくなっちゃったんだもの。

サエコ

え？って事はつまり貴女は…。

セイコ

そう。タダのお友達じゃありませんww

サエコ

ユウの不倫相手って事？

セイコ

まあ、そういう事になりますね。

サエコ

自分から不倫してますって名乗り出るなんて

サエコ

余程の〇カなのか自信家なのか…。

セイコ

えへ。私、ユウさんとすごく相性がいいんです。

セイコ

性格もそうだし、あっちの方もね♡

サエコ

そういう関係もあるのね…。

セイコ

そうですよ～。私のカラダは最高なんだって。

セイコ

彼、夢中なんですよ。

サエコ

それが何なの？

サエコ

わざわざ私に連絡をするっていう事は、何か目的があるのよね。

サエコ

まさかユウと離婚しろって言うの？

セイコ

ええ、もちろん。

セイコ

離婚するだけじゃなくて、慰謝料も払って下さいね♪

サエコ

は？

サエコ

逆でしょ。慰謝料を払うのはあなた達のほうよね？

サエコ

サレたほうが慰謝料を払うなんて聞いた事ないんだけど！

セイコ

やだ～ユウの言った通り！

セイコ

頭の固いオバサンね。自分が慰謝料を貰えて当然だと思ってるんだぁ。

サエコ

もちろんよ。なにが悲しくて、ヤった側に慰謝料を払わなきゃいけないのよ！

セイコ

だって、オバサンのクセに何年もユウを独占したじゃん。

セイコ

おかげで女の子と遊べなかったって

セイコ

ユウが嘆いていたんだよ。

サエコ

はあ？そんなの結婚しているんだから

サエコ

女遊びしないのなんて当然でしょう！

サエコ

それを言うなら、結婚以来私は殆ど遊んでいなかったわよ。

セイコ

そりゃ、奥さんはオバサンだし男なんて寄ってこないでしょう。

サエコ

そういう意味じゃないわ。

サエコ

浮気しないのなんて当たり前の事なの！

セイコ

ふーん。

サエコ

私が言いたいのは、友達と食事に行ったり、

サエコ

自分が買いたい物も我慢したり、そういう事よ！

セイコ

へえ。奥さんは真面目にダンナさんに尽くしてましたって事を言いたいの？

サエコ

イヤミな言い方をしてくれるわね。でも、そういう事よ。

サエコ

つまり妻としてちゃんとやってきたのに、

サエコ

慰謝料を払う理由なんか無いって事よ。

セイコ

オバサンのクセに世間知らずだよね～。

サエコ

は？

セイコ

私とユウは、これから結婚して家庭を築くんだよ。

セイコ

お金が沢山いるんだからね。

サエコ

だから何よ。

セイコ

奥さんは実家がお医者さんで、お金も沢山持ってるんでしょ？

セイコ

何年も待ってた私達の為に、餞別がわりに慰謝料をくれても良いと思うわ。

サエコ

理解不能よ。

サエコ

まるで宇宙人と喋ってるみたいだわ。

セイコ

オバさんには刺激の強い話だったかしら。

セイコ

今日はこの辺にしといてあげるわ。

サエコ

ちょっと！話はまだ終わってないわ。

セイコ

あ、慰謝料の件は考えておいてね♪

サエコ

ちょっと、待ちなさいよ。

サエコ

絶対に許さないんだから。

セイコ

はいはい、じゃあサヨウナラ。

～1週間後～

ユウ

おい、サエコ。

ユウ

俺が送った内容証明は呼んだのか？

サエコ

読んだわよ。一体これはなに？

サエコ

一週間前に不倫相手からLINEが来たと思ったら

サエコ

急に家を出て行ったきりだし

サエコ

何も連絡がつかないから、どうしたのかと思ってたわよ。

ユウ

サエコから連絡が言った通りだよ。

ユウ

離婚するから慰謝料よこせ！

サエコ

はあ？払うのはアナタの方でしょ！

サエコ

だって不倫してたってはっきりLINEに書いてあったんだから！

ユウ

不倫なんて別に大したことじゃねぇだろ。

ユウ

それより、お前みたいな冴えない女と何年も一緒にすんでやったんだ。

ユウ

その時間の対価として、慰謝料を払えっていってんだよ。

サエコ

バカを言わないで。

サエコ

言ってる事も無茶だけど、この内容証明も何一つマトモな事が書いてないわ。

サエコ

なんで私が、やってもいない〇Vでアナタに訴えられなきゃいけないのよ！

ユウ

ふん。なんとでもいえ。

ユウ

俺の言い分がデタラメだって証明出来ないだろ？

ユウ

何しろ、画像を準備したり、日記を書いたりして、色々工夫したんだからな。

サエコ

つまり偽〇したって事？

サエコ

そこまでしてお金が欲しいの？

ユウ

そうさ。お前と結婚したのだって、金目当てだよ。

ユウ

実家が病院だって言うから結婚してやったのに。

サエコ

なんですって！酷いわ。

ユウ

いつか、お前も性悪女の本性を出すだろうと思って

ユウ

網を張って待っていたのに、いつまで経っても真面目なままだからさ

ユウ

俺とセイコが協力して、お前には悪者になってもらったって訳さ。

サエコ

恐ろしい人ね。

サエコ

子供まで作ったのに、妻の私を陥れるなんて…。

ユウ

まあ、この程度で住んでラッキーだったと思えよ。

ユウ

俺は、根が優しい男だから、女には危害を与えないよ。

サエコ

よくも抜け抜けと言えたわね。

サエコ

私をこんな目に遭わせて、ナオにまで苦労をさせて…。

サエコ

少しは心が痛まないの？

ユウ

さあな？お前との結婚生活は心の痛む事の連続だったからなぁ。

サエコ

はぁ？

ユウ

だって好きでもない女と一緒に暮らすのは、苦痛でしかなかったからな！

ユウ

それで生まれた子供なんて、可愛いと思える訳がないだろ。

サエコ

信じられない。クズだと思っていたけど、そこまで悪い人だなんて思わなかった。

ユウ

まあ、金を払ってくれたら、全部チャラにしてやるよ。

ユウ

俺はこれから、セイコと一緒に人生をやりなおすんだ。

サエコ

そう。自分だけ幸せになろうって事ね。

サエコ

あなたには相応の償いをしてもらうわ。

サエコ

あの女にも思い知らせてやるわよ。

ユウ

ふん。世間知らずのお前に何が出来る？

ユウ

せいぜい吠えてろよ、負け犬が。

サエコ

吠え面をかくのはアナタよ！覚えてなさい！

～2日後～

トクロウ

ユウ君。貴様は随分舐めた真似をしてくれたな？

トクロウ

私の娘に、ありもしない〇Vの証拠をつきつけて

トクロウ

慰謝料を請求したそうだな？

ユウ

え、いやぁそのことですけど。

ユウ

サエコが何て言ってたか知りませんけど、全部本当の事ですよ。

ユウ

俺、サエコに散々〇められてきたんですよ。

ユウ

だから慰謝料はらってもらおうかな～って。

トクロウ

ふざけるんじゃない！真面目で大人しいサエコが〇Vなんてするわけなかろうが！

ユウ

でも、画像があるでしょう。

ユウ

サエコに見せられませんでしたか？

トクロウ

貴様は私の事も舐めているのか？

トクロウ

これが偽造だと見抜けないとでも？

ユウ

へ？

サエコ

ああ、この画像のトリックはすぐ分かったわ。

ユウ

サエコ！おまえ、これは一体どういう事だ。

ユウ

なんで俺達の問題に、お義父さんが首を突っ込んでくるんだよ。

サエコ

あなたが、私の実家のお金まで狙うからよ。

サエコ

あなたが送って来た写真だって、インチキだってすぐ分かったわ。

サエコ

だって、私が手を上げてアナタを〇ってる時の写真、

サエコ

良く見たら、首から下が私の身体じゃないんだもの。

サエコ

おまけに背景も、明らかにウチじゃないし。

ユウ

へ？そんなばかな…。

サエコ

これ、首から下はセイコって女の身体でしょう。

サエコ

上から私の首をくっつけて、合成したんでしょ？

サエコ

しかも、女の部屋で撮った写真ww

ユウ

しまった、合成に時間がかかり過ぎてそこまで処理出来てなかった…。

サエコ

まあ、お陰様で私は証拠品をゲットしたって所ね。

サエコ

こちらはちゃんとした弁護士に依頼して、キッチリ慰謝料を請求しますから。

トクロウ

サエコには優秀な弁護士がついているからな。

トクロウ

娘に苦労をさせたって事だけでも許せんのに

トクロウ

我が家の財産まで狙っていたとはな。

サエコ

不倫に加えて、詐欺罪ってところかな？

サエコ

色んな意味で制裁を与えてやらないと気が済まないわね！

トクロウ

そうじゃなきゃ、真面目に生きてるこちらが報われないからな。

トクロウ

サエコとナオは、私がしっかり守る。

サエコ

お父さん、ありがとう。

サエコ

こんなクズに人生をメチャクチャにされる所だったわ。

トクロウ

サエコ、お前はもっと幸せになるべき子なんだ。

トクロウ

ユウ君。貴様はサエコをこんなに傷付けたんだ。

トクロウ

これからどうなるか、覚悟は出来ているんだろうな？

ユウ

か、覚悟って…？

トクロウ

地獄に堕ちる覚悟だよ。

サエコ

あなた達がやった事は、立派な犯罪よ。

サエコ

どういう責任を取らされるかは、想像つくと思うけど？

ユウ

え？まさか警察に？

サエコ

もちろん。もう通報したからね♪

ユウ

つ、通報って！やばい、逃げなきゃ。

サエコ

やめとけば？

ユウ

え？

サエコ

逃げたら余計に罪が重くなるわよ？

ユウ

う、うるさい！捕まらなければなんとかなる！

サエコ

あーあ、忠告してあげてるのに、無視したらどうなるかな。

サエコ

まあ、もうそろそろ警察の人が到着する頃だと思うけど…。

ユウ

到着って…ここに呼んだのか？

サエコ

そうよ。女の所にいるんでしょ？

サエコ

女の住所も、あなたの居場所も調べたの。探偵を使ってね。

サエコ

実家に助けてもらえるって心強いわね。

サエコ

実家に援助してもらえとか言ってた誰かさんの助言を聞いたのよ♪

サエコ

って、既読がつかなくなったけど…。

トクロウ

もう警察の方が来たんじゃないのか？

サエコ

そっか。それならもうLINEは返せないよね。

トクロウ

あとは警察に任せて、ナオのご飯でも用意しようか。

サエコ

そうだね！お父さん！

サエコ

あ、ユウ。今日はもう読めないだろうけど

サエコ

アナタとセイコさんには、ちゃんと慰謝料も請求しますからね～。

～後日談～

サエコ

あの直後、父と私の読みどおり、

サエコ

ユウは警察の方々に連れて行かれたそうです。

サエコ

詐欺を共謀したという事で、セイコのほうも警察にお世話になったという事です。

サエコ

また、慰謝料については弁護士を通じて二人に請求しました。

サエコ

父に費用を出してもらったのかって？

サエコ

いえいえ、実は私も元医師で、退職前に結構貯金していたので

サエコ

探偵費用も弁護士費用も、自分で出していますよ。

サエコ

実家に助けてもらった、というのは

サエコ

知り合いの探偵と弁護士を紹介してもらった、という意味です♪

サエコ

本当に、頼れる家族がいるのっていいですね。

サエコ

ユウには散々傷付けられたけど、嫌な事はサッサと忘れて

サエコ

娘の為にも頑張ってやっていこうと思います。

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田中俊樹

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