雨が降っていた。
冷たくて、悲しい雨
その雨は、誰かを濡らし
誰かをゆっくり壊していく。
空っぽの私も、ゆっくり壊されていく。
壊れたくない。
自分を見失いそうになる。
自分を見失いたくない。
無我夢中に走り、
見つけた。
そこは、
私を壊していく場所じゃなくて、
なにかを慰めるような、優しい雨。
心に引っかかったものを、洗い流していく。
空っぽの私を、満たしていく。
本棚があった。
ふと、一冊の本を手にとる。
綺麗な青空が広がる表紙。
「start.」
手書き風の文字。
吸い込まれそうなくらい鮮やかな世界観。
風が吹いていた。
長い髪を揺らした。
雨は止んでいた。








