-一生忘れないと誓ったはずだった- その日は突然きた 俺の前に現れた 一人、いや一匹のなにか と表した方がいいだろう 最初は一匹だった 今は一人だが …… 最初はほんの好奇心だった 雨の中くたびれたダンボールに 一匹の猫 そいつは酷く震えていた だから拾ってやった 都合の良いことに今 俺はなにも家で飼っていなかった 最愛の子猫を亡くし 一人の時間をしみじみと 感じていた頃だった そいつはなかなかご飯を食べなかった 病院に行こうとも思ったが よくよく考えれば この近くに病院はない 少なくとも明日になってしまう 弱っているのだろうと思った 可哀想にと思って 震えていたそいつを 暖かいお風呂に入れてやろうと思った お風呂に入れるとそいつは とても喜んだように鳴いた 初めて聞く鳴き声に ふと 可愛いなと思った そのあとはすぐにご飯を食べた 何事もなかったかのように 美味しそうに食べていた 元気そうでよかったと思い 明日行こうと思っていた病院は 行かないことにした 次の日 そいつに名前でもつけようと思った なにがいいかと悩んだけど 変わった名前がよかった たまたま家に「コロン」があったからか 可愛い声とよく似ていると思い 「ころん」と名付けた ペットショップにも行った ころんが喜びそうなおもちゃを買おうと思った 「ころん、どれがいい?」 俺がころんに最初に発した言葉はこれだった でも、ころんが喋るわけでもない だけど、どこが俺たちは繋がっている気がした たった一瞬だったが ころんには小さな苺のおもちゃを買った とても喜んだみたいでよかった その夜ころんと一緒に寝た 最初は一人だったものの ころんがドアの前で鳴くものだから ドアを開けて寝室に入れた そしたらなんの躊躇もなく ベットの中に入り 眠りだした そんなころんを 抱きしめながら 昨日は寝た はずだった 朝起きたらころんはいなかった いや、いたのだが 猫のころんじゃなかった 人間化しているのだ びっくりしてベットから出ると 「んんっっ…」 と声がした 「おい、お前誰だ」 恐怖と驚きそしてどこか懐かしい気持ちで言った 「あぁ、さとみくん?だよね」 その声になぜか安心した 初めて聞いたはずなのに 「そうだけど…」 「僕はころんだよ。」 「は?」 「さとみくんが助けてくれたころんだよ。」 「なに言ってる…」 「ありがとうね、僕を助けてくれて」 「え?」 「僕はね、人間になれて嬉しいよ」 「さっきからなに言ってだよ?」 「お前は猫だっただろ?」 「そうだね、でもそれはもう一つの僕だよ」 「僕には姿が3つあるの」 「一つは猫の姿」 「二つは人間の姿」 「三つは未来の姿」 「話がわからないんだよ」 「気持ち悪いな」 とっさに出た言葉だった 嫌いだとか、怖いとか そういう気持ちを言いたかったわけじゃない でも、ただ「気持ち悪い」と 言ってしまった 「そっか…君も僕の事気持ち悪いと思うんだね」 そんなつもりはなかった 「ごめんね、気持ち悪い人間で」 違う、そんな事言わせようと思ったんじゃない 「ごめん、僕は君の前から消えるよ」 違う、違うはずなのに言葉が出てこない 「短い間だったけどありがとう」 「幸せだったよ」 「ありがとう、さとみくん!」 「僕、すっごい幸せだよ!」 「待って!」 何かのいつかの記憶が蘇った 気がした 「ごめん、気持ち悪いなんて思ってない」 「本当にごめん」 「そしたらそれを証明してくれない?」 「え?どうやって?」 「"キス"してよ」 「え?」 「嫌でしょ?嫌だったら僕は消えるよ」 チュッ 「これでいいの?」 「…うん」 相手は男か女かも分からない そんなやつとキスするなんて 俺はどこかおかしいんじゃないかと思った けどころんを見ていると 不思議とそんな気持ちは消えた 少し経ったがころんが猫に戻る事はなかった ただあることをすると必ず 猫に戻るという特徴を知ったのは それから何ヶ月か経った頃だった 「ねぇ、ころんはお風呂入らないの?」 「入るよ、人間のうちは入らなきゃ」 「いつもはいってないじゃん」 「入ってるよ」 「さとみくんが出て部屋にこもっちゃうときにね」 「知らなかった…」 「勝手に入ってたの、ごめんね」 「いいよ、お風呂ぐらい」 「ありがとう」 「いや、別に良いけど…」 「さとみくんは本当に優しいね」 「そんなことないけど」 「ううん、優しいよ」 すごく笑顔で言うから こっちも恥ずかしくなり ここで会話は途切れた 「お前さぁ、猫に戻る事って出来んの?」 「できない事はないよ」 「そうか…」 「戻ってほしい?」 「いや、別に、そんなわけじゃ…」 「嘘だね」 「え?」 「さとみくん嘘つくの下手すぎ」 初めて言われた いつも逆のことを言われていたから 感情がなさそうで 気持ちが分からないとか クールそうで住んでる世界が違いそうとか たくさんのことを言われてきた 「正直に言うと猫ていてくれた方が助かるけど」 「そうなの?じゃ猫に戻るよ」 「うん。ありがとう」 次の日ころんは猫に戻っていた 「ニャーー」 この声で目覚めた 下にいたはずのころんが 手の中にいるもんだから それはまたびっくりした 眠たいなと思いながら朝ごはんを作った 朝ごはんを食べたら バイトに行こうと思ったが 今日はバイトがなくなったことを思い出す 仕方ないと思い ころんを連れて散歩へ行った 散歩といってもケースに入れているが とても大人しかったから助かった 近くの公園でお昼ご飯を食べ 家に帰った そこから少しだけ寝た うたた寝をしていると 完全に爆睡していた やばいと思い携帯を見るが また何もない事に気がつく 暇だなと思いつつも ころんと遊んでやった 楽しそうで何よりだ それから一年が経とうとしていた 次の日ころんは人間になっていた 「どうしたんだ?」 「話さなければいけない事がある」 「なんだよ、あらたまって」 「聞いてほしいんだ」 「おう、聞くけどさ」 「僕はさとみくんの願い事を叶えにきたんだ」 「え?」 「でもね、願い事を叶えてしまうと」 「僕は君の前から消えないといけないの」 「は?」 「僕はね、遠い国から来た見習いなんだ」 「何言ってんの?」 「願い事を叶えられると」 「僕は見習いからreaiになれるんだ」 「ウィアン?」 「そうだよ、本物って意味」 「なに言ってんだよ、お前は俺のペットだろ?」 「このまま一緒に居ればいいじゃんか」 「そういうわけにはいかないんだよ」 「この世界そう簡単にできてないからね」 「…」 「さとみくんの願い事はなに?」 「…ころん、お前と一緒に居たい」 「分かったよ、その願い事僕が叶えてあげる」 少しした後急に俺の前からころんは消えた 俺は泣き崩れた 何か大切な人だったはずなのに 忘れてはいけないかったはずなのに 手放していけなかったはずなのに どうして… そのあとはよく覚えていない 自分が何故泣いていたか こんなに深い眠りに何故ついたのか でも朝起きたら泣いている 不思議な感覚に包まれた それから何年か経って俺は活動を始めた 一年すればYouTubeグループに誘われた そのグループに入ることにし そこからまた頑張っていこうと思った そこで出会ったのがころんだった 「はじめまして、ころんって言います」 「よろしくお願いします」 どこか懐かしい声と顔に 心揺さぶられるが 誰かは分からなかった 「ありがとう、さとみくん!」 「僕、すっごい幸せだよ!」 「さとみくんと出会えて本当に幸せだよ!」 「さとみくん、遅くなってごめんね」 ころんは確かにそう言った その時に俺は全てを思い出した ころんと出会ったこと 「ころん」という名前をつけたこと 散歩に行ったこと あの日泣き崩れたこと 深い眠りについて忘れようとしたこと そして俺はとてつもなく ころんを愛していたこと 俺はこの物語を絶対に 忘れることはないと思う どれだけ時間が経っても 絶対に忘れない そう誓ったから 最初君と出会った時に ----------------------------------------------- これを読んでくれた方ありがとうございました 以前タイトルにエーデルワイスと付けた作品を出版させていただきました。そちらの方も是非見てください。今回はさところ版と言うことでございますが、いかがでしたでしょうか?楽しんでいただけたら嬉しいです。今回はちょっとだけBLですw 地雷の方はすいません。 今作を見てくださり本当にありがとうございました またどこかでお会いしましょう。
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凄い好きです、、、私の学校のシンボルが、エーデルワイスでチャイムも、エーデルワイスの曲なんですよ、、、なんか親近感が湧いて見たらとても、素晴らしい作品で感動しました。