テラーノベル
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玄関の壁に掛けた小さな鏡を見て呟いた。
髪型、ネクタイ、笑顔。すべて完璧だ。
母親
母親
母さんは朝に弱く、よくおはようが腑抜けた感じになる。
今日は特に早い時間だし、いつもよりかなりひどい。
けれど、僕にはそれがおはようだとわかった。もう二十五年も聞き続けているのだから当然か。
母親
母親
僕は扉を開けて飛び出した。
てっきり母さんは「大きくなったね」だとかいう、少し特別な言葉をくれると思っていた。
けど……うん……
いつも通りだったのが、なんだかすごくうれしかった!!
ニュースキャスター
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西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともりが目を覚まし、肩にまでかかっていた布団を折り返す。
「おはよう」を言うかのように雷が鳴った。
普段であればここは悲鳴代わりの小さな奇声を上げるところだが、西空ともりはまだ夢と現実の境にいる。
寝る前にストレッチをしてホットミルクを飲むような人間であれば、
この雷鳴が製図用シャープペンシルの先みたいに鋭く刺さったのだろう。
だが、あいにく西空ともりはその大切な時間にブルーライトを浴びる人間だった。
目覚めは悪い。水中にいるより音が分散して聞こえた。
西空ともり
何度かノックがあってから声がする。これはよく聞こえた。
西空ともり
西空ともり
反芻する。西空ともりはなんとなく、何が起こっているのかが理解できた。
しかし、まだ寝ぼけたところがあるのか、昨日の記憶が見つからない。
疲れ方からしてスマホは見たのだろうが、そのもっと前からすでに無い。
あの眠りの毛利の授業で、紅里夢に「たすけて」と言ったことだけが、昨日の記憶として、ただ残っている。
何を見たか……何を考えてその言葉を言ったのか……。
おそらく思い出さなければならないのだろうということは、不思議なことに確信できていた。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
思いだそうとまぶたを下ろす。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
心の中で自らにツッコミをかました。
くだらないことではあるが、少し考えることをしたおかげで頭が冴えてきた。
西空ともりは一つのことに気づく。
西空ともり
寝ぼけていたのだから当然ではあるのかもしれないが、浴室の電気をつけ忘れていた。
なぜこれまで気づかなかったのか不思議なくらいに暗い。
どれくらい暗いのかと言うと――…
西空ともり
……真冬の十八時と思えるくらいには暗い。
雷が鳴って、今度は叫んでしまった。
考え事のせいで、咄嗟に出たのが『冬』という語だったのが恥ずかしい。
西空ともり
と、少し足を引いたところ、なにかがかかとに触れた。
石鹸……ではないだろう。"ぬめり"としたなにかがそこにある。
西空ともり
窓から強い光が差し込んできて、そのすぐ後に断末魔のような雷鳴がする。
かなり近くに落ちたようだ。しかし、西空ともりは動揺しなかった。
西空ともりの意識は、そのかかとに触れたものにあった。
これもまた不思議なのだが、西空ともりは本能的な危機を覚えていた。
シャワーの温度設定が急に狂ったか、はたまたその恐怖からか、
肌を伝う水滴が鳥肌による凹凸を分け流れているのを感じた。中には冷えた汗もあるだろう。
恐る恐ると振り返る――
西空ともり
とその直前に、西空ともりにある光景が思い出される。
西空ともりはそれを"知らなかった"が、それは忘れていたから――思い出されたのだということは知っていた。
「間もなく、三番線に列車が到着いたします。」
「黄色い線の後ろに下がってお待ちください。」
西空ともり
西空ともりの正面で桜が咲いた。
鉄と焦げたような匂いに混じり、死んだ女の柔らかな香水がぷかぷかと漂っている。
この手の商品には疎い西空ともりではあったが、柔軟剤ではないことはわかった。
そうでなければ、こうも宙に香りが残ってくれるはずはないからだ。
一人の女の声――遠くから聞こえたようにも思えたが、すぐに正面の女が叫んだとわかった――
があたりに響いた。他には誰も、声を上げてはいなかった。
通勤途中の会社員らは揃いも揃って、まるでヒステリックを起こした高齢女教師の説教を眺める中坊のような様子をしていた。
その目の奥の、面白いものを見た時特有の輝きなんかがそっくりだった。
少しして、近くのお友達にひそひそ話すみたいに、会社へ連絡の電話をし始める。これもそっくりだった。
死体を見るのは初めてだった。
死体を目にした人間を見るのも、これも初めてだった。
西空ともり
西空ともり
振り返ってみると、かかとに触れていたのは石鹸だった。
きっと寝ぼけていた間に自分が落としたのだろう。
四回ノックした。
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
唾を飲み込む。
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
???
???
???
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
???
山本紅里夢
???
???
???
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
???
山本紅里夢
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
山本紅里夢
???
???
???
???
???
???
山本紅里夢
扉の下の一センチの隙間から、一枚の封筒が顔を出した。
???
???
その言葉にはっとし、紅里夢は急いでその封筒を開く。
中には厚く束まった万札と、いくつかの千円札に小銭たちがあった。
山本紅里夢
???
???
???
???
山本紅里夢
???
???
???
山本紅里夢
紅里夢はある一点に目を止めた。
札束に紛れて一枚、新幹線のチケットが紛れてあったのだ。
???
山本紅里夢
???
???
???
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
???
???
???
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
新幹線のチケットだけを抜き取り、封筒をジャージのポケットにしまった。
しゃがみこみ、そのチケットを扉の向こうに返す。
紅里夢の目は強く輝いていた。
山本紅里夢
山本紅里夢
???
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
???
???
山本紅里夢
???
山本紅里夢
山本紅里夢
???
山本紅里夢
山本紅里夢
わざとらしく、つい今思い浮かんだかのように足を止める。
山本紅里夢
紅里夢は再び歩き始めた。
二〇四六年、七月九日。
台風の中、一人の少女を救うため。
自らの想いを確かめるため。
コメント
1件
はる。だわ。第26話読了したわ。 まず久美子さんすごすぎるでしょ。「死に方ぐらいは選ばせろ」じゃなくて「飛び立て」って言い切る84歳、かっこよすぎて雷鳴の中でも目が離せなかったわ。放送事故だけどそりゃなるわな……でも電波に乗せられないだけで、あの思想はめちゃくちゃ刺さった。 そして紅里夢パート。父さんとの会話が沁みる……「伝わらないんだろうけど、それ以外に説明することがあるか?」ってセリフ、親子の信頼関係が凝縮されててぐっときた。チケット返して「たすけて」をくれたともりを救うっていう決断、ちゃんと自分の意志で選んだところが紅里夢らしい。連載26話、ここからどう転ぶか楽しみすぎる🔥