テラーノベル
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何食わぬ顔をして、待ち合わせ場所に戻った。
仲川陽太
耕崎一也
時間経過をごまかすために買ったりんご飴を齧りつつ、陽太の元へと向かった。
しばらく屋台をぶらついてからクラスと合流する予定だったが、少し時間が押してきている。
耕崎一也
仲川陽太
まだ何の荷物も持っていない陽太が唇をとがらせて文句を言う。
いつもに比べて5割増しくらいで喋っているような印象だったが、一也の耳にはどこかぼんやりとして聞こえた。
仲川陽太
耕崎一也
結局、クラスチャットに連絡を入れ、もう少しだけ屋台を回ることにした。
仲川陽太
耕崎一也
はしゃいで疲れ果てた一也を横目に、陽太は戦利品を片手に扇子で首元を扇いでいた。
仲川陽太
耕崎一也
耕崎一也
原因は分かりきっていた。
公衆トイレの暗闇で聞いてしまった声。
思い出すと背に嫌な汗が伝う。
耕崎一也
脳内にこだまする蝉の声を振り払うように、頭を軽く左右に揺らした。
仲川陽太
仲川陽太
ややボリューム調節をミスったような声に軽く手を振り、離れていくのを見計らってため息をついた。
体力を使い果たしてぼーっとした頭の中で、あの音声がループしている。
断ったときの口の動き。
喉仏が上下する。
きっとその目は困り果てて泳ぎ、
自分に見せたことのない顔をする。
扇子で涼んでいた陽太の姿を思いだす。
制服では見ることのできない首元。
あの首筋が、もし他の人と触れ合っていたら。
やけに生々しい。
耕崎一也
きっと。
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