大切な人だから、傷付けない。
大切な人だから、間違ってても同じようにする。
それは、違うと思う。
大切な人の為だから、正面から戦わないといけないんだ。
はぁっ……はぁっ……
息がますます荒くなっていく。
だけどそれは、相手も同じ。
龍樹
だからっ……この国のためにはこっちの方がいいんだよっ……!
だからそれはっ……傷付く人が増えるだけっ……!
数分前
龍樹
…この国はもうすぐ廃墟だらけになってしまう。
龍樹はこの国の一番偉い人の息子である。
おう……そうだな?いきなりどうしたよ
龍樹
だから……この国を壊そうと思うんだ。
……は?
それじゃここに今住んでる人はどうなるんだ!?
龍樹
追い出す……しかない。
そんなんたくさんの人が傷つくに決まってる……!
いくらもうこの国の人口が減っているからと言ってそういう考えに至るのはおかしいんじゃないかっ!?
龍樹
分かってるよ…わかってるけど……!
龍樹
壊れるまでにできる手段は、これしか無いんだ……!
龍樹がいきなり"能力"を使ってきた。
この国はそれぞれ皆能力を持っていて、 色んな人達に差別されてきた人達の集まりだ。
その為、俺と龍樹の間に国に対する考え方にすれ違いが起こり、 今に至る
そういえば、すれ違いが起こってからもう夜になっている。
だが、俺ら2人は能力を使いつつ闘いを続けている。
だから……それはまた俺らが差別されるに至ってしまうんだよっ!
龍樹
はぁ?一生同じことにビクビクしてないでやってみればいいだろ!
辺りは龍樹の能力「龍」と、 俺の能力「吸収」の2つの残骸が囲んでいる。
でもっ……!また傷つくだけだ!
龍樹も経験しただろ!あの差別のされ様を!
何年経っても変わらなかった!
龍樹
じゃあ俺が……!
龍樹
俺が……!変えてみせるっ!
龍樹は最高難度の使い、「いでよ龍」を使い、俺に当てようとしている。 これは龍が火を吐き荒らすもの。
俺もすかさず「ブラック・ホール」を使い始める。 これは何でも吸収する穴を出すこと。
2つの能力同士が、ぶつかり合った───
はぁっ…はぁっ…!
辺りはもう朝で、太陽が覗いていた。
でもそこに、龍樹の姿は無かった。
倒したんだ…俺がっ…!
涙が溢れてくる。
今考えてみれば争いの理由なんて馬鹿馬鹿しかった。
アホみたいなことをした気分だ。
でも……俺は、自分の考えを貫き通し……国のために争って……良かった……
大切な人は失ったけれど…悔いは無い……
大切な人だからって考えを同じにする必要は無い。
自分を貫き通せ。
俺の大切な人はもう出すことの出来ない穴の中にいるけれど、
俺が戦ったのは、全てお前の為だった。