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悪魔の肖像

第1話 - 悪魔の肖像

2018年12月02日

#ホラー

志賀将治

中川三彦

それじゃあ頼むぞ

黒田文雄

任しとけって

中川三彦

正直、お前に留守を頼むのは気が引けるんだがなぁ

黒田文雄

心配するなよ

黒田文雄

伯父さんの美術品には手出さないから

中川三彦

どうだかな？

中川三彦

一つや二つ、お前なら盗っていきそうな不安があるんだがな

黒田文雄

じゃあ他の奴に頼めよ頑固オヤジ…

中川三彦

なにか言ったか？

黒田文雄

いやいや、なにも

悦子

大丈夫よ

悦子

なんだかんだ言っても主人は文雄くんのことを信じてるから

中川三彦

おっと、もう時間だ

中川三彦

文雄、頼んだぞ

黒田文雄

へいへい

中川三彦

それからさっきの

中川三彦

絶対にあれだけは触るんじゃないぞ

黒田文雄

分かったってば

黒田文雄

気を付けて

1時間後

金子透

すごいコレクションだね

黒田文雄

伯父は昔から美術品の収集に傾倒しててな

黒田文雄

俺たちみたいな人間には到底理解出来ない物を

黒田文雄

こうやたらと集めては飾ってるのさ

金子透

よっぽど好きなんだな

黒田文雄

俺たちからしたら異常な気もするけどね

金子透

ところでさっきの話だけど

黒田文雄

あぁ、例のやつね

黒田文雄

案内するよ

中川の書斎

金子透

勝手に入って大丈夫かい？

黒田文雄

いいさ、口やかましいおっさんは留守だから(笑)

黒田文雄

これがそれだよ

金子透

うわぁ…すごいな…

金子透

こんなどでかい肖像画を見たのは初めてだよ

黒田文雄

小さい頃、たまにここに遊びに入ったけど

黒田文雄

そのときはこれがすごく怖かった思い出があるよ

金子透

誰の肖像画なんだ？

黒田文雄

祖母だよ

黒田文雄

俺の父親と伯父の母親

金子透

これを伯父さんは絶対に触るなって釘を指したのか？

黒田文雄

それが不思議でね

黒田文雄

ま、それだけ大事な物だってことだよ、きっと

金子透

それにしても笑顔が素敵だ

黒田文雄

文学的な金子が言いそうな言葉だな(笑)

それから2時間後

黒田文雄

(結構揺れたな…)

黒田文雄

(でもどうやら美術品は無事らしい)

黒田文雄

(地震とはいえ伯父に怒鳴られるのは嫌だからな)

黒田文雄

金子、怪我は…

黒田文雄

…なにしてるんだ！

金子透

お、俺はなにも…

黒田文雄

じゃあなんだよこれ…

金子透

し、知らないよ

金子透

今見に来たらこうなって…

黒田文雄

(肖像画の祖母の微笑みが)

黒田文雄

(苦しみ悶えてるような表情に変わってる…)

黒田文雄

(…ん？)

黒田文雄

(扉？)

数分前、Rホテル喫茶ルーム

中川三彦

悪魔払いを知っているか？

悦子

いいえ

中川三彦

文字通り人体に憑依した悪魔を

中川三彦

追い払う儀式のことさ

中川三彦

日本じゃ馴染みはないが、外国では今でも行われてる

中川三彦

俺の父親はその祈祷師だったんだよ

中川三彦

いわばエクソシストさ

悦子

あぁ、それなら聞いたことがあるわ

悦子

でもそれがあの肖像画となんの関係があるの？

中川三彦

お前にもこの旅行ついでに話しておこうと思ってね

中川三彦

実は俺がまだ小さい頃

中川三彦

海外に暮らしてた母が現地で悪魔に憑かれて

中川三彦

それを父が追い払った過去があるんだ

悦子

まぁ…

中川三彦

ところが悪魔はしぶとく憑依を続け

中川三彦

結局、母の身体から生気を奪ってしまった

中川三彦

悪魔が憑依したままその宿り主が死亡した場合

中川三彦

悪魔は力を取り戻すまで人体から抜け出せないと言われている

中川三彦

それを知っていた父はあえて母の遺体をそのままにし

中川三彦

ある場所に悪魔を宿したまま保管した

中川三彦

その遺体が保管されてある場所が

中川三彦

あの肖像画で隠された扉の奥なんだよ

悦子

それで文雄くんに絶対に触るなと釘を指したのね

中川三彦

それだけじゃない

悦子

？

中川三彦

悪魔には寿命がない

中川三彦

今でもあの闇の奥で母を殺した悪魔は

中川三彦

外の世界に出ることを待ち焦がれてる

中川三彦

もし事情の知らない誰かがあの扉を開けてしまえば

中川三彦

悪魔は再び外の世界に解き放たれてしまう

中川三彦

既に抜け出すだけの力は持ってるはずだ

悦子

驚いたわ…

悦子

…でもそれじゃあどうして文雄くんにそれを言わなかったの？

中川三彦

あいつはオカルトを真っ向から否定してたからな

中川三彦

俺が今の話をしたところで信じるやつじゃない

中川三彦

逆に、話せばオカルト説をねじ曲げようと

中川三彦

自分から開けてしまう恐れがあったからだ

中川三彦

だから俺はあえて「触るな」とだけ言った

悦子

まぁ、うちの方じゃない

中川三彦

美術品が無事だといいが…

悦子

せめて文雄くんの心配をしましょうよ(笑)

中川三彦

…………

悦子

どうしたの？

中川三彦

…いや

中川三彦

なにか胸騒ぎが…

2018.12.09 作

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志賀将治

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