テラーノベル
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朝の部屋は
静かだった
六畳一間
カーテンの隙間から入る光が
フローリングに薄く伸びている
○○はキッチンと呼ぶには
少し心許無いスペースで
インスタントの味噌汁を作っていた
鍋は小さい
洗い物を増やしたくないからだ
携帯が震える
画面に表示された名前を見て
一瞬だけ指が止まる
大阪にいる彼からだった
そら┊︎ ごめ、今日も夜電話できない
それだけのLINEだった
○○は軽く目を通し
「わかった」とだけ返した
そう返して携帯を伏せる
既読はすぐについたけど
それ以上のやり取りはなかった
悪くない。
むしろ楽だ
一人暮らしを始めてから
こういう静けさには慣れていた
両親とは仲が悪いわけじゃない
再婚して
弟ができて
それぞれがそれぞれの生活をしてるだけ
__自分がいなくても
家は回る。
その事実に
少しだけ胸が痛むこともあるけど
今は考えない
制服に袖を通し、家を出る
鍵を閉める音がやけに響いた
昼休み
構内はザワついていた
廊下にも中庭にも
色とりどりの部活動勧誘の紙
声を張り上げる先輩もいる
それに立ち止まる新入生達
〇〇は2階の廊下からそんな学校を見つめた
ちとせ
振り返ると同じクラスの濱塚ちとせが居た
ちとせ
○○
そう言って〇〇は財布を見せた
○○
ちとせ
○○
〇〇はちとせの手にある紙に視線を落とした
ちとせ
ちとせ
ちとせ
ちとせ
ちとせ
ちとせ
ちとせ
ちとせは弾んだ声で言った
部活動か…
○○
〇〇小さく頷きながら
視線を動かす
バレー部
白と黒の紙
大きく
力強く書かれた文字
『一球入魂』
それだけで胸の奥が少しだけざわついた
ちとせ
ちとせの声ではっとする
○○
○○
ちとせ
ちとせ
○○
ちとせは不思議そうな顔をしたけれど
深追いはしなかった
〇〇はその紙の前から
しばらく動けずにいた
理由は分からない
ただ、目が離れなかった
放課後
帰り支度をする生徒の流れの中で
〇〇はまた同じ場所を通る
昼間より少し静かになった廊下
紙はそのまま貼られていた
『一球入魂』
文字の角が少しだけ折れている
__まだ、ある。
それを確認して
何故か少し安心した
後ろから
柔らかい声がした
振り返ると
ふんわりとした雰囲気の人が立っていた
上履きの色からして
多分3年生
手には紙コップ
中身は多分、甘いもの
ニコッと笑って言う
3年生の先輩は
〇〇の表情を見てから
少しだけ慌てるように笑った
首を竦める仕草でさえ
どこか柔らかい何かを感じた
白福
白福
〇〇は1拍置いてから
小さく頭を下げた
○○
○○
白福
その呼び方に
少しだけ肩の力が抜けた
白福
白福
白福は廊下に貼られた紙をちらっと見て
また〇〇を見る
白福
○○
○○
正直な答えだった
白福はうんうんと頷く
白福
白福
白福
紙コップの中身を一口飲んで
続ける
白福
白福
白福
白福
〇〇はその言葉を噛み締めるみたいに黙った
白福
白福
白福
白福
そう言って仮登録の紙を差し出す
白福
その言い方が
押し付けがましくなくて
〇〇は紙を受け取った
○○
白福はにっこりと笑った
白福
白福
そのとき
少し低くて
よく通る声
振り返るとすらっとした
1つ結びをした先輩が立っていた
腕を組み
時計を1度だけ確認する
白福
白福は気の抜けた声で返事をする
白福
「かおりちゃん」と呼ばれた人は
一瞬〇〇を見る
評価も詮索もない視線
短く
それだけ
○○
〇〇がそう答えると
それ以上は何も聞かなかった
白福
2人は並んで歩き出す
白福が最後に振り返って
手を小さく振った
白福
〇〇は軽く会釈をした
廊下に残り
手の中の紙を見る
仮登録
まだ外側
でも_
さっきより、少しだけ近い
コメント
2件
お久しぶりです‼️リクエストしたやつですよね⁉️ありがとございます🫶💕続き楽しみです❤️🔥
happy Valentine!!❤️ と言いたいところだけど2日遅れちゃったね笑 お久しぶりですきんにくまんです! 今回リクエストに応えて赤葦くんを始めたのですが、まだ全然物語が書けていません😢 不定期of不定期なのでそこはよろしくお願いします🙇🙇