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付き合って1年。 玲とはたくさん思い出を作ってきた。 笑い合って、喧嘩して、仲直りして―― そんな日々の積み重ねが、 俺にとって宝物だった。
だから、玲にとっても自分が「特別」 な存在でありたいと思っていた。
だけど、その日―― 玲が不意に口にした言葉に、 胸がざわついた。
玲.
一瞬、頭が真っ白になる。 その「どう」という言葉の意味を 理解した瞬間、過去の記憶がチラついた。
颯斗.
そう自分に言い聞かせるように深呼吸して、 なんとか笑顔を作る。 そして、小さく頷いた。
颯斗.
寝室に入ると、心臓がバクバクと うるさいほど鳴り響いた。 ベッドに横たわるけど、 落ち着くどころか、胸のざわつきが どんどん大きくなる。
颯斗.
必死にそう言い聞かせて、 ぎゅっとシーツを握りしめた。 でも、頭の奥であの日の記憶が蘇ってくる。
――乱暴に押し倒されたこと。 ――何度も「嫌だ」と言ったのに、 無理やりされたこと。 ――泣きながらも、止めてもらえなかったこと。
颯斗.
胸が苦しくなって呼吸が乱れ、 ついに涙が溢れ出した。
颯斗.
玲.
颯斗.
心配そうに俺を覗き込んでくる。 だけど言葉が出てこない。 ただ情けない声を上げて、 涙が止まらなかった。
その時、玲がそっと俺を抱きしめてくれた。
玲.
優しい声が、耳に、胸に、 じんわりと染みていく。 その温もりが少しずつ俺を 落ち着かせてくれた。
どれくらいそうしていたんだろう。 少しずつ呼吸が落ち着き、 涙が収まってきたころ―― 俺は決心して、震える声で口を開いた。
颯斗.
玲.
颯斗.
胸がぎゅっと締め付けられるような感覚の中、 過去にあったことを、一つ一つ言葉にしていく。
前に付き合っていた人に、 無理やりされたこと。 嫌だと言ってもやめてくれなかったこと。 そして、それがずっと トラウマになっていること――。
話しているうちに、また涙がこぼれた。
颯斗.
そう言い終わると、しばらく部屋に 静寂が訪れた。 玲はただ俺をじっと見つめ、 そしてそっと微笑んだ。
玲.
その言葉に、また胸が熱くなる。 嫌われるんじゃないかって怖かったけど ――玲は、俺を拒絶しなかった。
玲.
優しい声とともに、 玲がまた強く抱きしめてくれる。
颯斗.
玲.
その温もりが、俺の心を優しく溶かしていく。 もう過去の恐怖じゃなくて、 玲の愛情だけを感じられるように―― そう願いながら、俺は玲の胸に顔を埋めた。