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「全部、俺だけのものにしたい」
その言葉が、頭の奥で何度も反響する。
愛してるから? 心配だから?
_そんなの、ただの言い訳だ。
怖い。悔しい。けど、それ以上に_
橙 。
初めて、心の底からそう思った。
これまで私は、ただ怯えているだけだった。
逃げ道を探し、静かにやり過ごそうとしていた。
でも、それじゃ何も変わらない。
きっと、彼はどこまでも追ってくる。
私が壊れるその瞬間まで。
なら、変えなきゃ。自分を。状況を。
そして_彼を。
その夜、私はカーテンを閉め切って、スマホの電源を完全に落とした。
パソコンを立ち上げて、連絡手段をすべて変える準備を始める。
Gmail、新しいSNS、チャットアプリ。
すべてを彼の知らないものに変えていく。
橙 。
小さく呟いたその言葉は、決意そのものだった。
私は彼に支配されるために生きているんじゃない。
誰かの"所有物"になるためにここにいるんじゃない。
優しさに偽装された鎖は、もういらない。
火がついたのは、心の奥。
ずっと燻っていた火種が、ようやく炎になった。
翌日。
赤くんが、私の机の横で、いつも通り微笑んだ。
赤 。
赤 。
橙 。
私がそう言った瞬間、教室の空気がピリッと張り詰めた感じがした。
赤くんの笑顔が、ほんのわずかに揺らぐ。
でも私は、もうその目を逸らさなかった。
橙 。
橙 。
私の声は震えていなかった。
もう、怯えるだけの私じゃない。