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私の言葉に、赤くんは一瞬だけ何かを飲み込むように黙り込んだ。
けれど次の瞬間には、またあの穏やかな笑みを浮かべていた。
赤 。
赤 。
声は柔らかい。でも、その奥に何かが揺れていた。
怒りか、哀しみか、それても……もっと深くて暗い何かか。
放課後。私は、生徒会室に向かった。
どうしても、彼のことを少しでも知っておきたかった。
書棚で"彼"の名前を見つけた瞬間、私の中で何かが崩れ始めた。
_田中 赤 _2年前、別の中学校からの転校 _女生徒への"過剰な関与"が問題視された記録
それを読みながら、指先が震えていた。
目を逸らしたかったのに、どうしても読み進めてしまった。
橙 。
私が感じていた違和感は、全部本物だった。
あの優しさも、視線も、言葉も_全部、最初から。
ガタン、と背後で扉が開く音がして、心臓が跳ねた。
赤 。
振り返ると、赤くんが立っていた。
あの、優しい顔で。
赤 。
私は何も言えなかった。
喉が張り付いて、声が出ない。
資料を閉じる指が、微かに震えていた。
赤 。
赤 。
彼は1歩ずつ近づいてくる。
赤 。
赤 。
橙 。
息が詰まって、視界が滲む。
首を振りたいのに、体が動かない。
赤 。
赤 。
赤 。
その声は甘くて優しくて、なのに凍えるほど冷たかった。
私の中で、誰かが叫んだ。
「逃げて」「助けて」
でも、口から出たのはただのかすれた呼吸だけ。
私は、きっともう手遅れなんだ。
壊れ始めた自分の内側が、確かに聞こえた。
ガラスのように、静かに割れる音が_