生徒会総選挙
1年という周期はあまりにも短く、わたしに迫る
月
…会長候補って、誰なの
河本くん
んー知らない
月
えーー、わたしどうしようかなぁ
月
会長が河本くんとかならぜんぜんやるんだけどなー…
陽くん
…2人、近くない?
向き合って座るわたしと河本くんが机にだらーっともたれて話す様子を陽くんが一瞥する
月
え?いや別に…
前に買い出しに行ったときの一件から気が抜ける仲になった河本くんとはずっとこんな感じだ
月
(そんなのも遠い昔…)
河本くん
…なに焦ってるんすか、ダサ
陽くん
…別にそんなことないけどー?
月
(こういうのもいつも通り…)
河本くん
…な
月
ん?
河本くん
さっきの話
河本くん
会長、燐咲がやりゃいいじゃん
月
月
…─────え?
陽くん
あ、いいじゃんそれ
河本くん
燐咲が会長なら副会長やってもいい
小春子ちゃん
…まあ、燐咲先輩がどうしてもっていうなら、わたしだってまた入ってもいいですよ?
茜くん
え?じゃ、じゃあ流れ的におれも!
月
ええっ、ちょっと待って流れが早い
月
まだ会長やるなんて一言も…というか、そんなのわたしにできるわけないじゃん!?
陽くん
できるでしょ
陽くん
正直言って、1番安心だと思うけど
河本くん
最初はアレだったけど最近の素のしっかりした感じなら
月
河本くん一言余計…
そんなこんなでわたしは会長に立候補することになった
"前"会長の、推薦込みで
月
(陽くんがもう、前会長だなんて不思議だなぁ)
選挙管理委員会の子から呼ばれて、台上に向かう
月
(…あ、?)
踏み出した足が少しだけ、震えていた
それを見て理解する
月
(…わたし、緊張してる?)
緊張なんてさしてしたことがなかったのに
そう思いながらまっすぐ前を見据える
月
(陽くん…それから、河本くんや小春子ちゃんたちまで言ってくれたんだもん)
月
(うん、大丈夫)
原稿を読み進めながら、気がつく
月
(…違う)
月
(だから、緊張するんだ)
月
(生徒会の期待に応えたくて、生徒会が大切で…)
月
(…ああ、なんか、いいな)
そしてわたしは息を吸う
月
…ねえ、みんな〜!
月
この学校のいいとこってどこだったか、覚えてる?
体育館の中で、みんなが口々に言う
月
前会長の、演説の言葉です
月
…ふつうじゃないって思ったなぁ
ふふ、と微笑むと顔を上げる
月
でもそういうとこが、この学園のいーとこなんだよね
月
楽しくて、自由で…個性的?笑
月
この学園が、もっとみんなの笑顔で溢れるように!
月
わたしは生徒会を中心に、この学園のすべてをいろんな色で彩っていきたいです!
月
もちろん、みんな協力してくれるよね〜っ?♡
にっと笑うとわたしはぺこりとお礼をした
わたしが、わたしでいられる場所
わたしも、ここから始めるんだ
月
…あ、陽くん!…まだいたんだ
陽くん
うん、待ってた
陽くん
すごい俺っぽかったね〜月ちゃん?
月
うるさいなぁ
月
このわたしにリスペクトしてもらえることを光栄に思いなさい!
陽くん
うーん?俺のありがたみが分かってないようですね
月
にししっごめんなさーい
陽くん
ふふ
陽くん
陽くん
…帰ろっか?
月
ん!
荷物をまとめて、わたしたちは部屋を出ようとする
陽くん
今日家来る?
月
行く、影くんは?
陽くん
今日はいない、桃尾と遊びだって
月
そっか
月
そういえば銀河系の新たな惑星が観測されたって知ってた?
陽くん
ああ、昨日ニュースで見た
陽くん
見つかったの9月14日だよね?
月
うん、そうだよ?
陽くん
俺らの記念日とおんなじだねー
月
何ヶ月?
陽くん
ひどーい月ちゃん、覚えててよ
月
じゃあ陽くん分かるの?
陽くん
さあ
陽くん
だってもうずっと一緒にいるわけだし
月
分かんないんじゃん笑
陽くん
うそうそ、9月は3ヶ月だったよ
月
ふーん?
月
あ、ねえ、生徒会で打ち上げしたいね
陽くん
いいね、それやろ
陽くん
…楽しかった、1年
月
うん、わたしもだよ
月
ありがと
陽くん
俺こそだよ、ありがとね
キィ、と扉が閉まる
生徒会室はもうじき、陽くんの部屋ではなくなってしまう
…でも、その日からは、わたしの生徒会だ






