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第三章
馬鹿と写真とドッペルゲンガー
日本全国に配置された監視カメラの台数は
数百万台にのぼるらしい
犯罪抑止や逮捕の決めてとなる神の目の如き装置である
だが
馬鹿の目も中々捨てたものではない
大学生が血眼で美少年を捜索する超アナグロの監視カメラは
僅か一日で数十件の目撃情報を提供する高精度のシステムと化した
黄
黄
赤
赤
黄
グループに投稿される目撃情報は
概ねこんな調子である
大学生は
とにかく暇なようだ
そんな敬愛すべき馬鹿共の頑張りの甲斐もあり
俺たちは情報の精査で忙殺されていた
河原町にあるハンバーガーショップのボックス席は
作戦本部さながらの熱気を放っている
黄
赤
赤
黄
赤
黄
黄
どっぺちゃの目撃情報と大学生の妄想が入り交じる地獄のグループトークは
洪水の如き速さで流れていく
今日は土曜日なので俺たちは休みだが
大学は土曜日も講義が行われているはずである
お前ら勉強しろと言いたくなるくらい
どっぺちゃにべったりである
桃
桃
桃は俺の頭上に浮かびながら
湿度の高い視線を向けてくる
紫
紫
紫
桃
桃
俺たちのやり取りをよそに
翠がポテトを口に放り込みながら
情報を一つずつコピーしてメモ帳アプリにペーストしている
高速で流れるグループトークの全てを肉眼で把握するのは不可能なので
こうして翠が有益な情報のみをピックアップしているわけだ
ストーキングを効率化したところで将来の役には立たないが
俺達は本気だった
翠
翠
翠のスマホから送られた情報を元に
桃と答え合わせをしていく
紫
桃
桃
紫
桃
紫
桃
翠がケラケラと笑うが
桃は不動明王が憑依したような形相で俺を睨みつけている
経験と本能で死を察した俺は
慌てて目線を逸らして情報を精査する機械と化した
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