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相談室から覗く校庭には、クラスメイトや後輩達が、 笑いながら歩いていた。窓に、右肘を置いたままふと思う。
花音
感情を閉じ込めて十二年。
あの日以来自分は、 感情を出す事も表す事も、出来なくなってしまった。
その事を当時のクラスメイトに、話すと…。
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なんて言われ、小学校は卒業するまで、 ずっといじめられ続けた。
中学校に上がった時は、小学校の時よりエスカレートしていた。極楽鳥花と言う花を毎日毎日、置かれ机には彫刻刀で
??
??
??
??
??
と色んな悪口を、彫られた。 その事を知っていた、当時の担任は
当時の担任
と言った。でも、その言葉は
当時の担任
と言ってるみたいで、胸の奥深くに痛みを感じた。 痛苦しかった。
今にも胃酸が、口から溢れてしまいそうなくらい。 そんな事を弟の海に、話すと───。
海
海
海
海
っと海は言った。寂しそうな目の中に、怒りを宿して。 下を向きながら俯く、自分が情けなく思える。
自分も頑張らないと、いけない事なのに…
弱い自分が、嫌い
人に、頼ってばかりの自分も嫌い
迷惑をかけてばっかりの自分も、嫌い
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い…
花音
アヤメ
相談室に、響く明るい声。 ドアの隙間から、顔を出し笑顔でこちらを向く声の主。 二つ下の親友・清水アヤメだった。
窓から離れ、鞄を持って相談室先生に、帰る事を伝える。
花音
相談室の先生
優しく微笑む先生に、頭を下げアヤメが居るドアに向かう。
花音
アヤメ
ドアをそっと閉め、階段を下りる。 静かな廊下で、二人。 無言の数分が、過ぎた後最初に口を開いたのは、アヤメだった。
アヤメ
問いかけられる質問に、自分は迷わず答える。
花音
そう言うと明るく元気なアヤメの笑顔が、 少しづつ無くなっていく。
また自分のせいで人を、傷つけてしまったのだろうか…
その場からすぐに、離れたかった自分は、 立ち止まるアヤメを避け、階段を駆け降りる。
一歩また一歩階段は、少しつづ廊下に降りていく。
最後の一段を、飛び降りようとした時───。
アヤメ
階段の上からアヤメの怒りと悲しみが、 混ざったような声が階段に響いた。
アヤメ
花音
アヤメ
アヤメ
アヤメ
泣き崩れるアヤメの姿に、 十二年前の自分の姿と重なり思い出す。
あの頃の事。 お母さんとお父さんが、亡くなった日から数日過ぎたお葬式で、泣き崩れた六歳の自分の姿と。 似ている…。
何処か似ているんだ…アヤメと自分は───
階段を駆け上りアヤメを、優しく抱きしめる。驚くアヤメは、
アヤメ
と言いたい顔をしているが、今の自分に出来る事は。 ただアヤメを抱きしめる事だけ…。
それだけ それだけだから…
冷たくて寂しい空気に、自分達が、包まれる。 ゆっくりとアヤメから離れ、重たい口をゆっくり開ける。
花音
心無しの言葉。 ちゃんと謝れただろうか
ちゃんと言えただろうか。 胸が、痛苦しい
ギュッと胸に手を当てると、脈が早く打っている。
下を俯く私に、そっと優しい手が、自分の手を包み込む。
目の前を向くと今にも泣きそうな顔で、 アヤメが、私の手を握っていた。
アヤメ
謝られた。わからない…なんで、 私が謝られなちゃいけないのだろう
どっちかと言えば私が、謝って終わりになるはずなのに
けど、わかり合えたから…お互い様って事で、良いのかな
花音
ブレザーのポケットから、ハンカチを取り出し、涙を拭く。
花音
首を横に振り「可愛くない」とジェスチャーをするアヤメ。 ボソッと小声で
花音
っと呟くと
アヤメ
と微笑みかけた。 目を見開き、アヤメの顔を見つめる。
二人目が合うと同士に、アヤメから笑い声が、聞こえた。 口を抑えて笑っているアヤメを、不思議顔で見る自分。
花音
アヤメ
きょとんっとした顔で、私のを見つめる。
アヤメ
柔らかい笑みに、胸の中が暖かくなる。
思い出せた…嗚呼…そっか私。 一つだけ救えたんだ…これが、今の本当の私
暖かい…暖かくて心地の良い感覚
これが『感情』不思議な気持ち…
頭がふわふわする。変な感覚。 だけど何処か、懐かしい…
そう…まるで、お母さんのあの『優しい手』みたいに
花音
?
背後から、女性の声が聞こえた。 耳を疑う、聞き覚えのある暖かい声。
もう二度と聞こえる事も、聞く事も出来ないと思っていた。 その声に胸の奥が、ギュッと締め付けられる。
きっと幻覚…そんなの、わかっているけれど…。 少しだけ、期待してしまう
もう二度とあの頃には、 戻れないとわかっているけれど、少しで良い。 少しだけで良いから、また話をしたい。
花音
返事なんて、返ってくる訳が無い
そんなの自分が、一番わかっているのに……期待してしまう。 またあの時に、戻れるんじゃないかって
強く握る両手に、爪があたり手を刺激する。
諦めよう。ここには、アヤメと私にか居ない。 きっとあの声は、空耳だったんだ
きっと…私の作り出した幻覚。 幻覚だから…
不思議な顔をするアヤメに
花音
と声をかける。
何を期待していたんだろうか…死者の声が、聞こえるなんて そんな呪術師でも、払い屋でもないのに…
手すりを持ちながら、階段を一段一段をまた再び降りる。
古臭い木の階段。 今にも、壊れてしまいそうなほど劣化している。
ギシギシと歩く度に、音を立てる。 怖いのかアヤメは、淡々と階段を降りて行く。
その後に続いて、早足で階段を降りる。 最後の一段を降りた時───。
?
階段の上から、再びお母さんの声が、聞こえた。 ゆっくり後ろを振り向くと、十二年前と変わらない姿で、 こちらに手を振っていた。
花音
微笑むお母さんを見たのは、きっとあの日以来だろう。
お母さんともっと、話したい。 十二年間の事を、いっぱい話したい。 これからの事も、今の事も…
階段を一段また登ろうとした。だけど───。
お母さん
何を言いたいのだろう。 わからない…わからないけど、足が前に進まない
自分の体が拒んで進めない
嗚呼…そっかお母さん。 私わかったよお母さんが、言いたい意味の事
花音
口にした言葉に驚くお母さん。 でもその驚きの顔は、少しづつ 微笑みに変わり私も少しだけ口角を上げて、微笑んでみる
お母さん、私は笑えてるかな? ちゃん微笑んでいるように見えるかな?