薄暗い中響き渡る声。
嘘だ。こんなもの、信じたくない。
ふざけんな。こんなの夢だ。
あぁ、神様。
こんな展開、誰も望んでいないから。
お願いだから、嘘だと言って。
死んでも見たくない、この光景を。
有川 聡真
俺の悲痛な叫び声が響いた。
冬華が、死んだ。
冬華は、俺のクラスメイトだ。
そして...俺の想い人。
両思いではない、片思いだ。
意気地無しの俺は、1度だって好き って言えていない。
振られるのが、怖かったから。
有川 聡真
もし、告白できていたら...
あの事故は起きなかった。
.....違う。
告白しなくても、あの時──
あの時に、戻りたい。
俺は、思い出すように目を閉じた。
有川 聡真
俺は放課後、冬華を問い詰めた。
中田 冬華
有川 聡真
中田 冬華
有川 聡真
俺はため息をつきながら言った。
中田 冬華
有川 聡真
俺の心は一気に不安に襲われた。
有川 聡真
俺は冷静を必死に演じた。
有川 聡真
中田 冬華
なんで俺に聞くんだ、と言いそうになるのを堪える。
有川 聡真
なんでだ。俺はいつも素っ気なくなる。
好きな人に素直になれない。
中田 冬華
有川 聡真
有川 聡真
嘘つくなよ。不安でしょうがなかったクセに。
一言ぐらい素直になれよ。
中田 冬華
その言葉に俺は目を開いた。
有川 聡真
有川 聡真
中田 冬華
中田 冬華
「山城」確か隣のクラスだ。
中田 冬華
冬華は俺の方を向かずに言い、走って行ってしまった。
有川 聡真
気持ちを伝えずにフラれるとか。
...しかし、冬華の事が気になってしょうがない。
有川 聡真
このままではダメだ。
心の中の自分がそう言う。
絶対に後悔する、と。
有川 聡真
俺は駆け出した。
有川 聡真
辺りは薄暗くなっていた。
俺の荒い息づかいが響く。
有川 聡真
さっきから胸騒ぎがする。
冬華が盗られてしまうという不安だけでは無い。
冬華の身に、何かが起ころうとしている。
すると、冬華の後ろ姿が見えた。
少し落ち込んでいるように、歩道を歩いている。
よかった。間に合った。
有川 聡真
俺が声をかけようとした時。
時間が停止したように見えた。
冬華がスローモーションで倒れていく。
冬華が倒れた所には、黒い男がいた。
俺は...何が起こったのか...分からなかった。
周りからの悲鳴。
冬華が血を流して倒れている。
こんな光景、ありえない。
俺はその日、「絶望」を知った。
有川 聡真
俺の悲痛な叫び声が響き渡った。
有川 聡真
あの光景が脳裏に張り付いて しょうがない。
なぁ...冬華...会いたい...
有川 聡真
すると、俺の部屋のドアがノックされた。
聡真の母
有川 聡真
俺は目をこすり、1階へと向かった。
有川 聡真
リビングには、俺の知らない男がいた。
歳は50代...といったところだろう。
聡真の母
その言葉を聞き、俺は顔を歪めた。
有川 聡真
すると、容疑者の父親が いきなり頭を下げた。
容疑者の父
謝りに来たのかよ。
だったら来んじゃねぇよ。
俺は心の中でつぶやいた。
しかし、その後の父親の言葉で 俺は完全にキレた。
容疑者の父
有川 聡真
俺がそう言うと、容疑者の父親は 俺にすがりついてきた。
容疑者の父
容疑者の父
そう言って土下座をしてきた。
聡真の母
さすがに母さんも怒っているようだ。
容疑者の父
その瞬間、俺の中で何かが切れた。
バンッ!!
容疑者の父
俺はテーブルを叩いた。
ああ、もう止められない。
そう思った時にはもう遅くて。
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
俺の怒鳴り声が部屋中に響く。
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
言い終わった頃には俺は 息が荒くなっていた。
容疑者の父
そう言って逃げていった。
聡真の母
母さんが心配そうな声をする。
有川 聡真
有川 聡真
そう言って俺は、外へと出かけた。
有川 聡真
俺のため息が暗闇に消える。
なんで家を出たのかも分からない。
そう思いながら横断歩道を渡る。
プップー!!
俺の横でクラクションの音が鳴り響く。
一瞬何が起こるのか分からなかったが、俺は理解した。
ここで死ぬんだ、と。
別に怖くない。
嬉しさの方が勝っていた。
これで...冬華に会えるから。
その時、俺に衝撃が加わった。
俺は突き飛ばされたような感覚になる。
体が重い。
俺は死んだのか。
すると、さらに頬に衝撃が来た。
パンッ!!
.....俺はやっと理解した。
俺は誰かと一緒に歩道に逃げたのだ。
その誰かは今、俺を睨みつけている。
谷原 雅人
谷原 雅人(タニハラ マサト)俺の親友だ。
有川 聡真
有川 聡真
文句を言う俺をさらに睨む雅人。
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
谷原 雅人
有川 聡真
有川 聡真
「この気持ちは伝えたい。」
すると雅人がため息をついた。
谷原 雅人
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
有川 聡真
町外れにある古い神社だ。
谷原 雅人
谷原 雅人
谷原 雅人
谷原 雅人
谷原 雅人
谷原 雅人
有川 聡真
谷原 雅人
有川 聡真
俺は走り出した。
真夜中の冷たい風が当たるが、気にならない。
冬華に想いを伝えられる。
嬉しくて。でも緊張していて。
進む足を1度も止めなかった。
そして数十分後、神社に着いた。
そして泉を探す。
泉は社の裏にあった。
俺はそのそばに座り込む。
そしてゆっくりと口を開いた。
有川 聡真
名前を呼ぶだけで震えた。
緊張だけではない。
泣きそうになっているからだ。
...それでも俺は続ける。
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
やはり震えてしまう。
でも、それを必死に抑えた。
そして、何年も言えなかった言葉を
今、言う。
有川 聡真
...1回言っただけじゃ物足りなくなってしまった。
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
有川 聡真
止まらない。
好きって気持ちも。
涙も。
そして───
有川 聡真
1番言えなかった言葉を。
有川 聡真
涙が溢れて止まらない。
泣き崩れた。
本当に伝わっているのかも分からないのに。
有川 聡真
お願いだから。
神様。冬華に届けて。
もう、何も望まないから。
有川 聡真
誰に聞いているのかも分からない。
返事なんて来るわけな───
中田 冬華
思考が停止した。
聞き間違えな訳がない。
...あいつの声だ。
振り向きたいのに、振り向けない。
あいつは後ろにいるのに。
中田 冬華
有川 聡真
振り向いた。
...しかし、彼女はいなかった。
自然と、悲しくはない。
「愛してるよ。」
しその言葉だけ十分だった。
有川 聡真
無理だ。
この涙は...抑えきれない。
有川 聡真
声を出して思いっきり泣いた。
誰もいないから。
この状況甘えて、俺は泣いた。
俺の泣き声が真夜中の街に響いていった...。
5年後──
俺は家を出る。
有川 聡真
行き先は...あの場所だ。
...着いた。
5年前、冬華が殺された場所。
俺はそこに花束を置く。
冬華が好きな...赤・黄色・オレンジの花だ。
有川 聡真
元気いっぱいでいつも明るくて。
そしていつも笑顔で。
俺が大好きなところだ。
今日は冬華の命日。
俺は冬華との思い出にしばらく浸ることにした───。
女の人
女の人
横断歩道を通り過ぎようとする。
女の人
ある男の人が横断歩道を渡っている。
女の人
私はよく見かけていた。
確かこの電柱に花束を置いていたような...。
その電柱は私の隣にある。
確かここは5年前に通り魔殺人があった場所だ。
女の人
するとその時。
プップー!!
女の人
トラックが男の人の方へ突っ込んできた。
それに気づいた男性は目を開く。
しかし───
彼は私の隣の電柱を見る。
そして───
ふわりと笑って──
有川 聡真
意味のわからない言葉を呟いた瞬間。
中田 冬華
私の隣から悲痛な声が聞こえた。
しかし、それは遅くて───
ドンッ!!
道路は一瞬で血の海となった。
中田 冬華
「守れなかった」
女の人
今にも泣きそうな声の主は──
隣にはいなかった。
有川 聡真
「キミのいる世界へ──」
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お互いに守れなかった悔しさ… 感動しました!!